刈谷城跡に建つ、昭和3年の校舎
刈谷市郷土資料館は、昭和3年(1928年)10月に竣工した亀城尋常高等小学校の本館を活用した施設である。所在地の愛知県刈谷市城町は、かつての刈谷城の城内にあたる。亀城(きじょう)は刈谷城の別称で、学校名も、桜で知られる亀城公園の名も、この城から取られている。読みは「かめしろ」ではなく「きじょう」で、字面よりも土地の記憶に寄り添った呼び方である。
設計者と構造
設計は大中肇(おおなかはじめ、1886年生、1950年没)。熊本県に生まれ、福岡県立工業学校の建築科で学び、八幡製鉄所を経て、明治41年(1908年)から愛知県の営繕に勤めた。この間、現在の県立刈谷高校・刈谷北高校にあたる学校の校舎を担当している。大正13年(1924年)に県を辞して刈谷町に大中建築事務所を開き、以後は西三河から知多半島にかけて学校・医院・住宅を手がけた。本館はその代表作と評価される。大中は「鬼瓦」の俳号をもつ俳人でもあり、昭和8年(1933年)の学校創立60周年には句を寄せている。技術者でありながら文芸にも通じた人物の手による建築である。
構造の記載には幅がある。文化庁の国指定文化財等データベースは「鉄筋コンクリート造」と記す。一方、登録時の解説(西澤泰彦)は、柱・梁・外壁を鉄筋コンクリート造とし、床と屋根を支える小屋組を木造とした混構造と説明する。屋根は瓦葺、建築面積は748平方メートル、2階建てである。地方都市に鉄筋コンクリート造が広まっていく過程を示す一例と位置づけられている。
見どころ
外観は正面玄関を中心とした左右対称で、東西の両翼が中央の玄関より手前へ大きく張り出し、大きな妻を見せる。中央より両端を前に出すこの構成は、西洋建築のバロックの流れを汲むものである。玄関ポーチにはバットレスが付く。外壁の柱形は片仮名の「キ」をかたどっており、亀城の頭文字を映している。細部まで見て歩くと、こうした符牒に気づく。
平面は片廊下式で、南側に教室、北側に廊下を配し、両端の張り出し部分に特別教室を置いた。両翼が前に出る分、両端の部屋が過度に大きくなりかねないが、大中は廊下の両端に階段を設けて幅を調整し、部屋の大きさの偏りを抑えた。意匠と校舎としての機能を両立させた手際が、本館を代表作と呼ばせる根拠の一つになっている。
館内は8つの展示室からなり、農具や民具、刈谷城関係の史料を並べる。昭和30年代の教室や住まいを再現した部屋もあり、当時の暮らしを室内で追体験できる。土曜・日曜・祝日にははた織り体験があり、コースターほどの小品を手で織ることができる。
卒業生が守った建物
昭和49年(1974年)に新校舎、昭和52年(1977年)に特別教室棟が建つと、旧本館は使われなくなった。刈谷市は取り壊しを検討したが、卒業生や文化人らが保存運動を展開し、資料館として残すことが決まった。昭和55年(1980年)に刈谷市郷土資料館として開館し、平成11年(1999年)2月17日には、刈谷市で初めて国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。平成23年(2011年)の改修で、昭和30年代の再現展示が加わった。
入館は無料。専用の駐車場はなく、隣接する亀城公園の駐車場を利用し、城跡を抜けて歩いて向かう。
よくある質問
- 「亀城」はなぜ「きじょう」と読むのですか。
- 亀城(きじょう)は刈谷城の別称です。学校名がこの城に由来するため、読みも城にならって「きじょう」となり、「かめしろ」ではありません。
- 建物は当時のもので、中に入れますか。
- はい。昭和3年竣工の本館を保存活用し、資料館として公開しています。展示室は8室、入館は無料です。
- アクセスはどうすればよいですか。
- JR東海道本線・逢妻駅から徒歩約20分です。刈谷市コミュニティバス「かりまる」逢妻線の司町4丁目バス停からは徒歩5分。駐車は亀城公園の駐車場を使います。
- 建築のほかに見どころはありますか。
- 農具や民具、刈谷城関係の史料に加え、昭和30年代の教室や住まいの再現展示があります。週末・祝日にははた織り体験もできます。
- 誰が設計したのですか。
- 大中肇です。愛知県の営繕を経て刈谷町に建築事務所を構えた建築家で、本館は代表作とされています。
基本情報
| 名称 | 刈谷市郷土資料館(旧亀城小学校本館) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県刈谷市城町1-25-1 |
| 竣工 | 昭和3年(1928年)10月 |
| 設計 | 大中肇 |
| 構造 | 柱・梁・外壁を鉄筋コンクリート造とし、小屋組を木造とする混構造/瓦葺/2階建/建築面積748平方メートル |
| 指定区分 | 国の登録有形文化財(建造物) 登録年月日:平成11年(1999年)2月17日 ※刈谷市初の登録 |
| 登録番号 | 23-0021 |
| 所有者 | 刈谷市 |
| 公開状況 | 公開(入館無料) |
| アクセス | JR逢妻駅から徒歩約20分/コミュニティバス「かりまる」司町4丁目下車徒歩5分 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 刈谷市郷土資料館(旧亀城小学校本館)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001076
- 文化遺産オンライン(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/177296
- 刈谷市公式サイト — 郷土資料館 概要
- https://www.city.kariya.lg.jp/shisetsu/bunka/kyodoshiryokan/1005322.html
- 刈谷市観光協会「いいじゃん刈谷!」
- https://www.kariya-guide.com/sightseeing/000015.html
最終更新日: 2026.07.11