建中寺徳興殿(旧名古屋商業会議所本館)とは
建中寺徳興殿(旧名古屋商業会議所本館)は、名古屋市東区筒井の建中寺境内に建つ明治29年(1896年)建築の木造建築で、平成12年(2000年)に登録有形文化財(建造物)に登録された。木造2階建、瓦葺で、建築面積は454平方メートルある。
建てられた場所も、建てられた目的も、いまとは違う。この建物はもともと名古屋商業会議所(現在の名古屋商工会議所)の本館だった。商人たちが集まって商工業の意見をまとめ、行政に伝えるための建物である。それが昭和9年(1934年)に尾張徳川家の菩提寺である建中寺へ移され、寺の建物として使われるようになった。建中寺の山号は徳興山で、移築後の建物は徳興殿と呼ばれている。
文化庁の国指定文化財等データベースは、建中寺徳興殿の種別を「産業3次」としている。寺の境内にありながら、記録のうえでは商業施設として分類されているわけである。移築から90年あまりを経ても、この建物の出自は台帳のなかに残り続けている。
登録の理由と、この建物が持つ価値
建中寺徳興殿が満たしたのは、登録有形文化財の登録基準のうち「再現することが容易でないもの」である。同じものをもう一度つくることが難しい、という判断が働いた。
理由のひとつは規模にある。国指定文化財等データベースは、建中寺徳興殿を名古屋市街地に建つ木造建築としては最大級のものと記している。建築面積454平方メートルの木造2階建で、2階には柱を減らした大空間が確保されている。この規模の木造建築を、同じ材と同じ技術で新たに建てることは現在では難しい。
もうひとつは、明治の商工団体の建物がそのまま残った例が少ないことによる。建設当初、建中寺徳興殿には洋風の議事堂が附属していたと記録されている。和風の本館と洋風の議事堂を並べる構成は明治期の公共建築にしばしば見られたが、現在の境内に残るのは本館だった部分だけである。
取り壊されずに寺へ移されたことも、この建物が現存する理由になっている。用途を失った建物が別の主体に引き取られ、機能を変えて使われ続ける。建中寺徳興殿はその経路をたどった。
見どころ
外から見て最初に目に入るのは屋根である。建中寺徳興殿は入母屋造の瓦屋根を持つ。四方に流れる屋根の上半分が切妻状に立ち上がる形で、寺社建築で広く使われてきた。商工団体の本館でありながら、この建物が和風の意匠でまとめられていたことがわかる。
内部でもっとも特徴的なのは2階である。名古屋商業会議所の本館だった時代、ここは「集会所」と呼ばれる大空間だった。会員が一堂に会するための部屋であり、床は板張りだったとみられる。建中寺に移築されてからは畳が敷かれ、大広間として使われている。用途に合わせて床の仕上げが変わり、空間の骨格はそのまま引き継がれた。
境内における建中寺徳興殿の位置も見ておきたい。建中寺の境内には本堂や三門など江戸時代の建物が並び、そのなかで徳興殿だけが明治の建築である。時代の異なる建物が同じ敷地に集まっている状態は、この寺が建物を受け入れ続けてきた歴史そのものを示している。
見学方法とアクセス
建中寺の境内は自由に立ち入ることができ、建中寺徳興殿の外観は境内から見学できる。ただし建中寺徳興殿は寺が使用している建物であり、一般向けの公開時間や拝観料は公表されていない。内部を見たい場合や写真を撮りたい場合は、事前に建中寺の寺務所へ問い合わせるのが確実である。法要や行事が営まれている日は、建物が使用中であることも多い。
アクセスは市バスと地下鉄のどちらでも足りる。市バス「東区役所」停留所からは東へ徒歩約5分、地下鉄「車道」駅からは北西へ徒歩約10分である。名古屋の中心部から近く、公共交通機関で無理なく行ける位置にある。総門と三門のあいだは建中寺公園になっており、境内へはそこを抜けて入ることになる。
拝観条件や公開の有無は変わることがある。訪問前に建中寺へ直接確認しておきたい。
Q&A
- 建中寺徳興殿は拝観できますか。拝観時間と拝観料は決まっていますか。
- 建中寺の境内は自由に立ち入ることができ、建中寺徳興殿の外観は見学できます。ただし一般向けの公開時間や拝観料は公表されていません。建中寺徳興殿は寺が使用している建物のため、内部の見学を希望する場合は事前に寺務所へ問い合わせてください。
- 建中寺徳興殿はいつ建てられ、いつ建中寺に移されたのですか。
- 明治29年(1896年)に名古屋商業会議所の本館として建てられ、昭和9年(1934年)に建中寺の境内へ移築されました。建中寺徳興殿という名は、建中寺の山号である徳興山に由来する呼び名です。
- 建中寺徳興殿へのアクセスは。最寄りの駅や停留所からどのくらいかかりますか。
- 市バス「東区役所」停留所から東へ徒歩約5分、地下鉄「車道」駅から北西へ徒歩約10分です。建中寺徳興殿は名古屋市東区筒井の建中寺境内にあり、名古屋の中心部から公共交通機関で行くことができます。
- 建中寺徳興殿の内部はどうなっていますか。撮影はできますか。
- 2階は名古屋商業会議所の本館だった時代に「集会所」と呼ばれた大空間で、建中寺へ移築されてからは畳敷の大広間になっています。撮影の可否は公表されていないため、境内および建物の撮影については寺務所に確認してください。
- 建中寺徳興殿はなぜ登録有形文化財になったのですか。
- 登録基準のうち「再現することが容易でないもの」に該当すると判断されたためです。建中寺徳興殿は建築面積454平方メートルの木造2階建で、名古屋市街地の木造建築としては最大級とされています。平成12年(2000年)に登録されました。
基本情報
| 名称 | 建中寺徳興殿(旧名古屋商業会議所本館) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市東区筒井1-703-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2000年登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積454平方メートル |
| 所有者 | 宗教法人建中寺 |
| 公開状況 | 境内は自由に立ち入り可、外観は見学可、内部は公開時間の定めなし |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 建中寺徳興殿(旧名古屋商業会議所本館)(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001711
- 文化遺産オンライン 建中寺徳興殿(旧名古屋商業会議所本館)(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/138981
- 国登録文化財(名古屋市)
- https://www.city.nagoya.jp/kyoiku/page/0000008473.html
最終更新日: 2026.09.01