名古屋陶磁器会館 — 輸出陶磁器の栄光を今に伝える昭和モダン建築

名古屋市東区の徳川エリアに佇む名古屋陶磁器会館は、1932年(昭和7年)に竣工した鉄筋コンクリート造の近代建築です。名古屋陶磁器貿易商工同業組合の事務所として建設されたこの建物は、国登録有形文化財および名古屋市景観重要建造物に指定されています。かつて名古屋が日本の陶磁器輸出産業の中心地であった時代を物語る貴重な建造物であり、建築愛好家や陶磁器ファン、産業遺産に関心のある方にとって見逃せないスポットです。

名古屋陶磁器会館の歴史

名古屋陶磁器会館は1932年(昭和7年)11月20日に竣工しました。名古屋陶磁器貿易商工同業組合の事務所として建設され、同年には大日本陶磁器輸出組合をはじめとする同業団体も入居し、陶磁器輸出において全国的な主導権を握っていた名古屋陶業のシンボルとなりました。

設計を手がけたのは名古屋高等工業学校教授の鷹栖一英(たかのすいちえい)で、実施設計と監理は丹羽英二が担当し、志水建築業務店が施工しました。当時、周辺は平屋の木造家屋ばかりの地域であり、鉄筋コンクリート造地下1階・地上2階建ての堂々たる姿は圧倒的な存在感を放っていました。

1946年(昭和21年)には鉄骨造で3階部分が増築されました。1949年(昭和24年)には一般財団法人名古屋陶磁器会館が設立され、組合から建物の管理・運営を引き継ぎました。第二次世界大戦の戦禍をくぐり抜けた建物は、竣工当時の威容を保ちながら現在に至っています。

2008年(平成20年)3月には名古屋市景観重要建造物に指定され、同年10月23日に国の登録有形文化財に登録されました。これにより、建物の建築的価値と名古屋陶業のシンボルとしての歴史的意義が公式に認められています。

登録有形文化財に選ばれた理由

名古屋陶磁器会館が登録有形文化財に登録された背景には、建築と歴史の両面における高い価値があります。建築面では、ドイツ表現主義の影響を感じさせる立体的な装飾と、四面に施された施釉スクラッチタイル貼りの外装が特徴的です。間口24メートル、建築面積389平方メートルの鉄筋コンクリート造で、幾何学的なモチーフが随所にあしらわれた意匠は、昭和初期の近代建築として高い完成度を誇ります。

歴史的には、名古屋が日本の陶磁器輸出産業をリードしていた時代の象徴的存在として評価されています。1930年代の最盛期には、会館周辺の東区一帯に約650社もの陶磁器関連企業が集まり、約14,000人がこの産業に従事していました。その輝かしい時代を今に伝える最後の拠点として、名古屋陶磁器会館は大きな価値を持っています。

建築の見どころ

名古屋陶磁器会館の外観は、建築愛好家にとって大きな見どころです。四面すべてが施釉スクラッチタイルで覆われ、手仕事の温かみを感じさせるテクスチャーが美しい表情を生み出しています。大きな半円窓やテラコッタの装飾がファサードにドラマチックなアクセントを加え、当時のドイツ表現主義建築の影響が見て取れます。

館内に足を踏み入れると、床には伊奈製陶(現LIXIL)製のモザイクタイルが敷かれ、天井にはアールデコ調のレリーフが残されています。建具や意匠にも竣工当時の面影が大切に保存されており、1930年代の優雅な雰囲気を今に伝えています。

1階の展示室では、90年以上の歴史の中で蒐集・寄贈された1,000点を超える所蔵品の一部を無料で鑑賞できます。なかでも注目すべきは、戦後の連合国占領下(1947〜1952年頃)に製造された「Made in Occupied Japan」の裏印が入った手描きのミニチュア碗皿やフィギュアリンの数々です。これらは日本の戦後復興を物語る貴重な資料としても評価されています。

また、ギャラリーショップでは名古屋絵付けの技法で装飾された陶磁器製品を購入でき、絵付け教室では上絵付けの体験も可能です。

名古屋陶業の歴史 — 世界を魅了した「名古屋絵付け」

名古屋陶磁器会館の魅力をより深く味わうためには、名古屋が日本の陶磁器輸出において果たした役割を知ることが大切です。明治後期以降、名古屋は輸出用陶磁器の日本最大の生産地として発展しました。九谷、東京、横浜、京都から名工が集まり、「名古屋絵付け」と呼ばれる絢爛豪華な装飾技法が花開きました。

名古屋絵付けには、デコ盛り、洋風絵付け、ガラス盛り、金盛り、九谷風、薩摩風など多彩な技法が含まれ、まさに百花繚乱の作品群が世界各国に輸出されました。この隆盛の背景には、陶磁器素地の主要産地である瀬戸・美濃が近隣にあったこと、鉄道や堀川の水運による物流の利便性、そして森村組(現ノリタケカンパニー)に代表される先進的な貿易商社の存在がありました。

名古屋陶磁器会館は、こうした名古屋陶業の栄光の歴史を後世に伝える使命を担い、所蔵品の展示や絵付け教室の開催を通じて陶磁器文化の継承に取り組んでいます。

周辺情報

名古屋陶磁器会館が位置する徳川エリアは、文化施設が集まる見どころ豊富なエリアです。会館の訪問と合わせて、以下のスポットもお楽しみいただけます。

  • 徳川園 — 池泉回遊式の日本庭園で、滝や渓流、四季折々の花々が楽しめます。会館から徒歩約10分。
  • 徳川美術館 — 尾張徳川家伝来の大名道具や国宝「源氏物語絵巻」など10,000点以上を収蔵。徳川園に隣接。
  • 蓬左文庫 — 尾張徳川家の旧蔵書を中心とした貴重な古典籍を所蔵する公開文庫。徳川園内に所在。
  • 文化のみち二葉館 — 大正ロマン薫る洋風建築を修復した文化施設。「文化のみち」散策の拠点。
  • 名古屋市市政資料館 — 1922年竣工のネオバロック様式の旧裁判所。赤レンガの外壁とステンドグラスが見事。
  • 横山美術館 — 明治・大正期の輸出陶磁器を専門に展示。名古屋陶磁器会館と併せて訪れると理解がより深まります。

Q&A

Q入館料はかかりますか?
A1階の展示室およびギャラリーショップは無料でご覧いただけます。気軽に立ち寄れるのが魅力です。
Q開館日と開館時間を教えてください。
A開館時間は10時〜17時(最終入館16時30分)です。休館日は土曜日・日曜日・祝日および年末年始(12月29日〜1月4日)です。平日のみの開館となりますのでご注意ください。
Q絵付け体験はできますか?
A上絵付け教室が開催されています。スケジュールや予約の要否は時期によって異なりますので、公式サイトまたはお電話でご確認ください。
Q最寄り駅からのアクセスは?
A地下鉄桜通線「高岳」駅から北東へ徒歩約20分、名鉄瀬戸線「森下」駅から南西へ徒歩約15分です。なごや観光ルートバス「メーグル」で徳川園バス停下車後も徒歩圏内です。見学者用の無料駐車場(2台分)もあります。
Q外国語での案内はありますか?
A館内の案内は主に日本語ですが、陶磁器の展示は視覚的に楽しめる内容が中心です。翻訳アプリなどを活用されると、より深く理解を楽しめます。

基本情報

名称 名古屋陶磁器会館(なごやとうじきかいかん)
文化財指定 国登録有形文化財(2008年10月23日登録)/名古屋市景観重要建造物(2008年3月28日指定)
所在地 〒461-0025 愛知県名古屋市東区徳川1-10-3
設計 鷹栖一英(実施設計・監理:丹羽英二)
施工 志水建築業務店
竣工 1932年(昭和7年)/1946年3階増築
構造 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造3階建(地下1階付)、建築面積389㎡
所有 一般財団法人名古屋陶磁器会館
開館時間 10:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日 土曜日・日曜日・祝日・年末年始(12月29日〜1月4日)
入館料 無料
アクセス 地下鉄桜通線「高岳」駅より徒歩約20分/名鉄瀬戸線「森下」駅より徒歩約15分
公式サイト https://nagoya-toujikikaikan.org/

参考文献

名古屋陶磁器会館について|名古屋陶磁器会館
https://nagoya-toujikikaikan.org/about-us/
名古屋陶業の歴史|名古屋陶磁器会館
https://nagoya-toujikikaikan.org/history/
名古屋陶磁器会館 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/名古屋陶磁器会館
名古屋陶磁器会館|文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/192080
名古屋陶磁器会館|名古屋コンシェルジュ
https://www.nagoya-info.jp/spot/detail/158/
ご利用案内|名古屋陶磁器会館
https://nagoya-toujikikaikan.org/guide/
アクセス|名古屋陶磁器会館
https://nagoya-toujikikaikan.org/access/

最終更新日: 2026.03.22