尾張徳川家名古屋本邸の表門
徳川園黒門は、愛知県名古屋市東区徳川町にある明治32年(1899年)建設の木造門で、平成26年(2014年)に登録有形文化財に登録された。
建てられた目的は、尾張徳川家の名古屋本邸である大曽根邸の表門である。敷地の来歴はさらに古い。元禄8年(1695年)、尾張藩2代藩主の徳川光友がこの地に隠居所の大曽根屋敷を営んだ。当時の敷地は約13万坪、面積にして約44ヘクタールに及んだという。光友の没後、土地は尾張藩家老職の成瀬・石河・渡邊の三家に譲られ、明治22年(1889年)に尾張徳川家の手へ戻る。徳川園黒門はその後の邸宅整備にともなって建った門である。
昭和6年(1931年)、19代当主の徳川義親が邸宅と庭園を名古屋市に寄付した。翌昭和7年(1932年)に徳川園として公開されたものの、昭和20年(1945年)の空襲で園内の大部分が焼失する。焼け残ったもののひとつが、この門だった。
登録の理由と、その位置づけ
徳川園黒門が国の登録有形文化財となったのは平成26年(2014年)10月7日、登録番号は23-0403である。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。重要文化財の指定とは別の制度で、明治以降の建造物のうち、その土地の姿かたちをつくっているものを対象とする。
名古屋市の説明は、単体ではなく群としての価値に軸を置く。門の脇に接続する脇長屋、そこから続く塀は同じ日に登録されており、三者そろって武家屋敷の表構えの輪郭を保っている。空襲でこの一帯からほぼ消えた景観の、残された断片ということになる。名古屋市は先んじて平成23年(2011年)10月17日、認定地域建造物資産の第18号としてこの門を認定していた。
形式は薬医門。2本の本柱の後ろに控柱を立て、切妻の屋根をかけるが、棟は中央ではなく本柱寄りに置かれる。間口3.6メートルの三間の規模をとり、扉を閉めているときのために潜戸を設ける。薬医門としては大ぶりの部類に入る。
細部を見る
徳川園黒門の正面に立つと、まず材の太さが目に入る。軸部にはケヤキが木太いまま使われており、名古屋市はこの門を総けやき造りと紹介している。彫刻の類はない。梁の端に繰形はなく、絵様も刻まれていない。同じ大きさの寺院の総門なら装飾で埋まるところで、この素っ気なさこそが大名屋敷の門らしさである。
装飾はすべて屋根の瓦に集まっている。屋根は切妻造の本瓦葺、軒は二軒で、垂木は間隔をあけた疎垂木とする。大棟の両端は鬼板獅子口の棟瓦積で納める。破風が合わさる拝みには猪の目懸魚が下がり、ハート形にくり抜かれた輪郭が見える。
降棟をたどり、隅巴と軒巴に目を移すと、三つ葉葵紋が繰り返し現れる。棟の端には亀を象った留蓋がのる。雨仕舞のための瓦だが、造形としても愛嬌がある。
妻側にはもう少し時間をかけたい。男梁の両脇に大瓶束を立て、その上に下端をゆるくたわませた虹梁を渡し、さらに大瓶束を置いて棟木を受ける。寺院建築の手法をそのまま門に持ち込んだ構成で、下から見上げると三段の重なりがはっきり読み取れる。
見学方法
徳川園黒門は、邸宅跡に開かれた庭園である徳川園の西側入口に建ち、改札はこの門に置かれている。開園時間は午前9時30分から午後5時30分まで、入園は午後5時まで。休園日は月曜日で、月曜が休日にあたるときは直後の休日でない日に振り替わる。年末年始は12月29日から1月1日まで閉まる。入園料は大人300円、名古屋市内在住の65歳以上は100円、中学生以下は無料である。
個人の範囲の風景撮影に申請は要らない。ただし混雑時の三脚使用は控えるよう求められている。人物を主とした撮影、婚礼・成人式・七五三などの記念撮影は、営利か否かを問わず事前申請が必要で、広告・テレビ・映画といった商業撮影も同様である。
JR中央本線の大曽根駅からは南出口を出て徒歩約10分、地下鉄名城線の大曽根駅からは3番出口から約15分、名鉄瀬戸線の森下駅からは約10分。基幹バスの徳川園新出来停留所からは約3分で、観光ルートバスのメーグルは徳川園の前で降りられる。門の改札を入ってすぐのところにガイドボランティアの受付があり、金曜・土曜・日曜・祝日は無料で庭園の案内を頼める。
Q&A
- 徳川園黒門は入園料を払わずに見られますか
- 門は徳川園の西側で街路に面しており、外観は園の外からも見上げられます。改札は門に置かれているため、園内に入る場合は大人300円が必要です。
- 徳川園黒門はいつ建てられ、戦災を免れたのですか
- 明治32年(1899年)の建設です。昭和20年(1945年)の空襲で園内の建物の大半が焼けましたが、この門は焼け残った数少ない遺構のひとつです。
- 徳川園黒門はどのような形式の門ですか
- 間口3.6メートルの三間薬医門です。軸部に木太いケヤキを用い、切妻造の瓦屋根をかけ、潜戸を備えています。
- 徳川園黒門は重要文化財ですか
- いいえ。平成26年(2014年)に登録された登録有形文化財です。登録は指定とは別の制度で、その土地の歴史的景観をかたちづくる建造物を対象としています。
- 徳川園黒門と同時に登録されたものはありますか
- 門に接続する脇長屋、総延長84メートルの塀、園内の石造の釣瓶井戸、北西に建つ蘇山荘が、いずれも平成26年(2014年)の同じ日に登録されています。
基本情報
| 名称 | 徳川園黒門 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市東区徳川町1001 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成26年(2014年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 間口3.6メートル、木造、瓦葺、潜戸付 |
| 所有者 | 名古屋市 |
| 公開状況 | 徳川園の入口に建ち、開園日は見学できる。入園料300円 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 徳川園黒門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010155
- 文化遺産オンライン 徳川園黒門
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/232768
- 徳川園 徳川園について(登録有形文化財)
- https://www.tokugawaen.aichi.jp/about/index.html
- 徳川園 利用案内
- https://www.tokugawaen.aichi.jp/guide/index.html
- 徳川園 撮影について
- https://www.tokugawaen.aichi.jp/photo/index.html
- 名古屋市 徳川園
- https://www.city.nagoya.jp/kurashi/douro/1014853/1014854/1014865.html
- 名古屋市 認定地域建造物資産 徳川園黒門
- https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017268/1017271/1017339.html
最終更新日: 2026.09.01