徳川美術館心空庵及び餘芳軒とは

徳川美術館心空庵及び餘芳軒は、名古屋市東区徳川町の徳川美術館敷地内に建つ近代和風の茶席で、平成26年(2014年)に登録有形文化財(建造物)へ登録された。名称は2つに分かれるが、登録上は1棟として扱われる。

西側が心空庵、その東に続くのが餘芳軒である。心空庵は四畳半本勝手の茶室を中心に、三畳の水屋と、直角に折れた腰掛待合を備える。餘芳軒は十畳の広間を中心とする。全体は木造平屋建、瓦葺で、建築面積は97平方メートル。

建築年は2つで異なる。心空庵は大正3年(1914年)、餘芳軒は昭和中期にあたる1946年から1965年ごろの建築である。文化庁の記録によれば、心空庵は大正3年(1914年)、昭和6年(1931年)、昭和37年(1962年)と3度にわたって移築され、餘芳軒は昭和48年(1973年)に移築された。現在の位置に並んで建つのは、いずれもよそから運ばれてきた結果である。

徳川美術館心空庵及び餘芳軒が登録された理由

徳川美術館心空庵及び餘芳軒の登録基準は「造形の規範となっているもの」である。登録番号は23-0410、平成26年(2014年)10月7日の登録で、敷地内の山の茶屋と餘芳軒東屋も同じ日に登録有形文化財となった。

評価の柱は材にある。文化庁の解説は、この建物が材木商を営んだ大寶正鑑の設計になり、霧島スギや神代材といった銘木や奇木を多く使うと記す。木材を商う者が自分の茶席を設計したという成り立ちが、そのまま意匠の方針になっている。

神代材は、長く土中や水中に埋もれたのち掘り出された木を指す。埋もれていたあいだに色が変わり、通常の材では出ない灰緑や褐色を帯びる。霧島スギは産地の名を冠した銘木である。こうした材を一室のなかに並べて見せる構えは、数寄屋の趣向を突きつめた近代和風建築の例として捉えられている。

心空庵と餘芳軒が別々の年代の建物でありながら1棟として登録されているのも、この物件の性格をよく示している。四畳半の茶室と十畳の広間、その双方があってひと続きの茶席として機能する。

徳川美術館心空庵及び餘芳軒の見どころ

心空庵の茶室は四畳半、本勝手である。本勝手は茶室の間取りの基本形を指す呼び方で、亭主と客の位置関係を左右反転させたものは逆勝手と呼び分けられる。四畳半は広間と小間の境目にあたる大きさで、狭さを強いず、かといって広間の開放感も持たない。

その脇に三畳の水屋が付く。茶道具を洗い、整える場所で、客の目には入らない。表に見える部屋の倍近い面積が裏方に割かれているところに、この茶席が実際に使われる前提で建てられたことがあらわれている。

腰掛待合は直角に折れる。まっすぐな待合と違い、折れた先が見通せないため、席入りを待つあいだの視界が二段構えになる。露地の設計として意図された折れ方である。

徳川美術館心空庵及び餘芳軒で目を留めたいのは、やはり木そのものだろう。柱や床まわりに使われた材の木目、色、節の出方をひとつずつ見ていくと、同じ杉でも表情が揃っていないことに気づく。銘木を集めて構成するとは、木の個体差を意匠に読み替える作業でもある。餘芳軒の十畳広間に移れば、心空庵の小ささとの対比で、同じ木づかいが別の寸法でどう見えるかを確かめられる。

徳川美術館心空庵及び餘芳軒の見学方法

徳川美術館心空庵及び餘芳軒は通常非公開である。美術館の展示室をめぐる順路には含まれておらず、入館料を払っても内部を見ることはできない。

見学の道はある。美術館の案内によれば、茶室を使用する催しに参加する人は見学と利用ができる。中心となるのは毎年10月から11月にかけて開かれる徳川茶会で、餘芳軒はその会場のひとつに使われている。茶室の貸出も受け付けており、施設利用の手続きを経れば使うことができる。日程も申込方法も年ごとに変わるので、訪問前に美術館の公式サイトで確かめてほしい。

美術館の開館時間は午前10時から午後5時まで、入館は午後4時30分まで。休館日は月曜日で、祝日や振替休日にあたるときは直後の平日が休みになる。入館料は徳川美術館と名古屋市蓬左文庫の共通で、一般2,000円、高校生と大学生は1,200円、小学生と中学生は無料である。展示室内はスマートフォンやコンパクトカメラで撮影できるが、茶室での撮影可否は催しごとの案内による。

最寄り駅はJR中央線の大曽根駅で、南出口から徒歩約10分。地下鉄名城線の大曽根駅からはE5番出口を使って徒歩約15分。市営バスと名鉄バスは「徳川園新出来」停留所から徒歩約3分である。

Q&A

Q徳川美術館心空庵及び餘芳軒は見学できますか?
A通常は非公開です。美術館の案内によれば、徳川茶会など茶室を使用する催しに参加する場合に見学と利用ができます。茶室の貸出も受け付けています。
Q徳川美術館心空庵及び餘芳軒はなぜ2つの名前が付いているのですか?
A西側の心空庵と東側の餘芳軒という2つの建物が続いており、登録上は1棟として扱われるためです。心空庵は四畳半の茶室と三畳の水屋、腰掛待合からなり、餘芳軒は十畳の広間を中心とします。
Q徳川美術館心空庵及び餘芳軒はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A心空庵は大正3年(1914年)、餘芳軒は昭和中期にあたる1946年から1965年ごろの建築です。登録有形文化財への登録は平成26年(2014年)10月7日で、登録番号は23-0410です。
Q徳川美術館心空庵及び餘芳軒にはどのような木材が使われていますか?
A文化庁の解説によれば、霧島スギや神代材といった銘木や奇木が多く使われています。設計は材木商を営んだ人物によるもので、材の選び方がそのまま意匠になっています。
Q徳川美術館心空庵及び餘芳軒へはどう行けばよいですか。最寄り駅からの所要時間は?
AJR中央線の大曽根駅南出口から徒歩約10分です。地下鉄名城線の大曽根駅E5番出口からは徒歩約15分、市営バスまたは名鉄バスの「徳川園新出来」停留所からは徒歩約3分です。

基本情報

名称徳川美術館心空庵及び餘芳軒
所在地愛知県名古屋市東区徳川町1017
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成26年(2014年)登録
員数1棟
寸法建築面積97平方メートル、木造平屋建、瓦葺
所有者公益財団法人徳川黎明会
公開状況通常非公開(茶室を使用する催しの参加者は見学可)

参考文献

国指定文化財等データベース 徳川美術館心空庵及び餘芳軒(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010162
よくあるご質問(徳川美術館)
https://www.tokugawa-art-museum.jp/faq/
来館のご案内(徳川美術館)
https://www.tokugawa-art-museum.jp/visitor-information/
イベント・講座(徳川美術館)
https://www.tokugawa-art-museum.jp/experiences/
国登録文化財(名古屋市)
https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017268/1034462/1017208.html

最終更新日: 2026.09.02