屋敷地の西辺を画す84メートル

徳川園塀は、愛知県名古屋市東区徳川町にある明治33年頃(1900年頃)の木造の塀で、平成26年(2014年)に登録有形文化財に登録された。

画しているのは、尾張徳川家の名古屋本邸だった大曽根邸の西辺である。総延長は84メートル。この数字がひとつの塀を指しているわけではない。黒門の両袖に取り付き、門の正面に向かって右側には通用門を設け、左は蘇山荘の西入口まで伸びる。さらに園内西側の傾斜地では、階段状に段を落としながら続く。

敷地の来歴は元禄8年(1695年)、尾張藩2代藩主の徳川光友が隠居所を営んだところに始まる。明治22年(1889年)に尾張徳川家が土地を取り戻し、徳川園塀はその後の邸宅整備で建てられた。昭和6年(1931年)に名古屋市が寄付を受け、翌年に庭園が公開される。昭和20年(1945年)の空襲で建物の大半が失われ、残ったのがこの塀と、塀が挟む黒門、その奥の脇長屋だった。

塀が登録された理由

徳川園塀が国の登録有形文化財となったのは平成26年(2014年)10月7日、登録番号は23-0405である。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。記録上は1棟、木造、瓦葺、総延長84メートル、潜戸付、年代は明治33年頃(1900年頃)で平成16年(2004年)に改修とある。

評価の軸は建物ではなく街路にある。屋敷の中で通行人が実際に目にする部分は塀であり、この塀はいまも園の外周を当初の姿で走っている。文化庁は「街路景観に趣を与える塀」と書き、徳川園の説明は「創建時の姿を示し、周辺建物の歴史的景観を整えている」とする。どちらも構造の希少性を根拠にしていない。もとの位置で、もとの役目を果たし続けていることが根拠である。

登録と指定は別の制度である。重要文化財の指定が限られた建造物に重い保護をかけるのに対し、登録は平成8年(1996年)に設けられた緩やかな仕組みで、記念碑的でなくとも土地の姿をかたちづくるもの、たとえば塀や井戸を対象に含む。

歩くと仕様が変わる

徳川園塀を黒門から辿ると、区間ごとに仕上げが入れ替わる。黒門脇から蘇山荘の西入口へ向かう部分は桟瓦葺で、面は簓子下見板張と漆喰塗を組み合わせる。桟瓦は本瓦より軽く、寺社以外の建物に広く使われた瓦である。これが表向きの仕様で、街路から読まれることを前提としている。

園内西側の傾斜地では扱いが変わる。三間ほどの幅を単位に、斜面を階段状に段を落としながら連なるため、軒の線が一直線ではなく段になる。外面は押縁を打った竪板張とする。内面はさらに別で、スギ皮を張り、割竹で押さえている。

足を運ぶ価値があるのはこの内面である。杉皮を割竹で押さえる手法は茶庭の垣根に使われるもので、大名屋敷の外周に選ぶものではない。それを屋敷の側からしか見えない面に用いたところに、徳川園塀の二つの顔の使い分けが表れている。街路には漆喰と下見板、園内には杉皮と割竹という按配になる。

平成16年(2004年)、庭園として整備し直された際にこの塀も改修を受けた。したがって目にしているのは手の入った材である。線と仕様は当初のものが引き継がれている。

見学方法

徳川園塀は一部を無料で見られる。庭園である徳川園の外周西側に沿って続くため、街路側の姿は通りがかりに眺められる。傾斜地の階段状の部分と、内面の仕上げを見るには入園が必要になる。

開園時間は午前9時30分から午後5時30分まで、入園は午後5時まで。休園日は月曜日で、月曜が休日にあたるときは直後の休日でない日に振り替わる。年末年始は12月29日から1月1日まで。入園料は大人300円、名古屋市内在住の65歳以上は100円、中学生以下は無料である。

個人の範囲で塀を撮るのに申請は要らないが、混雑時の三脚使用は控えるよう求められている。人物を主とした撮影と商業撮影は事前申請が必要になる。

JR中央本線の大曽根駅からは南出口を出て徒歩約10分、地下鉄名城線の大曽根駅からは3番出口から約15分、名鉄瀬戸線の森下駅からは約10分。基幹バスの徳川園新出来停留所からは約3分、観光ルートバスのメーグルは徳川園の前に停まる。金曜・土曜・日曜・祝日には無料のガイドボランティアが園内で案内している。

Q&A

Q徳川園塀は入園しなくても見られますか
A一部は見られます。塀は園の西側外周に沿って続くため、街路側の面は道路から眺められます。傾斜地の階段状の部分や内面を見るには入園料300円が必要です。
Q徳川園塀の長さはどれくらいですか
A総延長84メートルで、これで1棟として登録されています。潜戸のほか、黒門の脇に通用門を備えます。
Q徳川園塀はどこも同じつくりですか
Aいいえ。黒門脇は桟瓦葺で簓子下見板張と漆喰塗、西側傾斜地は外面が押縁の竪板張、内面がスギ皮張の割竹押さえと、仕様を違えています。
Q徳川園塀はいつのもので、改修は受けていますか
A明治33年頃(1900年頃)のもので、平成16年(2004年)に改修されています。庭園として整備し直された時期にあたります。
Q徳川園塀は重要文化財ですか
Aいいえ。平成26年(2014年)に登録番号23-0405で登録された登録有形文化財です。同じ敷地の黒門・脇長屋・釣瓶井戸も同時に登録されています。

基本情報

名称徳川園塀
所在地愛知県名古屋市東区徳川町1001
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成26年(2014年)登録
員数1棟
寸法総延長84メートル、木造、瓦葺、潜戸付
所有者名古屋市
公開状況街路側の外観は園外から見られる。園内側は入園料300円

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 徳川園塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010157
徳川園 徳川園について(登録有形文化財)
https://www.tokugawaen.aichi.jp/about/index.html
徳川園 利用案内
https://www.tokugawaen.aichi.jp/guide/index.html
徳川園 撮影について
https://www.tokugawaen.aichi.jp/photo/index.html
名古屋市 徳川園
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/douro/1014853/1014854/1014865.html

最終更新日: 2026.09.01