長谷寺大仏殿:日本三大長谷観音を祀る秋田唯一の大仏殿

秋田県由利本荘市の静かな赤田地区に佇む長谷寺(ちょうこくじ)には、高さ約9メートル、木造金箔押しの壮大な十一面観世音菩薩立像が安置されています。「赤田の大仏」として親しまれるこの観音像は、奈良・桜井市の長谷寺、鎌倉の長谷寺と並び、日本三大長谷観音の一つに数えられています。その観音像を納める大仏殿は、秋田県唯一の大規模仏殿として2013年に国の登録有形文化財に登録されました。

歴史的背景

長谷寺は、安永4年(1775年)に亀田藩の僧・是山泰覚(ぜさんたいかく)が庵を結んだことに始まります。寺は藩主岩城氏の崇敬を受け、祈願所に定められました。

天明4年(1784年)、是山は奈良・鎌倉の長谷寺にあやかり、十一面観音立像の造立を発願。鎌倉長谷寺の本尊と同木から彫り出されたと伝わる小仏を胎内仏として納め、3年の歳月をかけて天明6年(1786年)に大観音を完成させました。大仏殿は寛政4年(1792年)に着工し、寛政6年(1794年)に竣工しています。

しかし、明治21年(1888年)に客殿からの出火により堂塔伽藍が全焼。地域の篤い信仰に支えられ、本荘大町の呉服商・佐々木藤吉翁の寄進により明治25年(1892年)に大仏が復元されました。土川村(現・大仙市土川)の仏師・一柳齋家慶(松田善造)ら6名が制作にあたり、像高二丈六尺(7.878m)の杉材寄木造・金箔押しの観音像が蘇りました。大仏殿も明治26年(1893年)に当初の様式・規模を忠実に再建され、明治29年(1896年)に大仏開眼落慶法要が盛大に執り行われました。

文化財指定の理由

長谷寺大仏殿は、平成25年(2013年)12月24日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。秋田県下で唯一の大規模仏殿であり、棟札から建立年代が明確に確認できることから、秋田の近代寺院の構造・装飾等の様式を知る上で極めて貴重な遺構と評価されています。明治期の忠実な復元建築であること、著名な建築家や名工による豊富な装飾が残されていることも、その文化的価値を高めています。

建築の見どころ

大仏殿は木造平屋建、宝形造、銅板葺で、建築面積は181平方メートル。外観は上下二層に見え、総高は約21.2メートル(七丈)に達します。上下層の四面には擬宝珠高欄が巡り、上層南面の正面には奈良東大寺大仏殿と同様の観相窓(かんそうまど)が設けられています。外側には切目縁が廻り、18本の八角側柱が建物を支えています。屋根は再建当初は木端葺きでしたが、昭和20年代に銅板に葺き替えられました。

内部は大仏を安置するために吹き抜け構造となっており、大仏周囲の4本の円柱(入側柱)が下層から上層まで貫いて建物を支えます。大仏上部の格天井には本荘藩御用絵師・増田象江による「三十六禽之図」が描かれ、板扉絵には明治の名工と称された松雲洞羽嶽(堀藤兵衛)による「三十六歌仙」が施されています。棟梁・小川松四郎による雲龍や花鳥の立体彫刻も見事で、堂内全体が芸術作品と呼べる空間です。

赤田の大仏の魅力

大仏殿の重い引き戸を開けると、自動で照明が点灯し、金箔に輝く巨大な観音像が闇の中から浮かび上がります。像高7.878メートルの十一面観音は杉材の寄木造りで、全体を金箔が覆い、穏やかな表情で参拝者を見下ろしています。すぐ傍まで近づいて見上げることができ、その圧倒的な存在感は訪れた人に深い感銘を与えます。拝観は無料で、写真撮影も可能です。観音像の周囲を一周することもでき、足元にも多くの仏像が安置されています。

赤田大仏祭り

毎年8月下旬(22日頃を中心に)開催される赤田大仏祭りは、平成9年(1997年)に秋田県指定無形民俗文化財に指定されました。安永9年(1780年)に丈六阿弥陀如来像の遷座にあたり始められたとされる歴史ある祭礼で、神仏習合の形態を色濃く残す全国的にも珍しい祭りです。大仏の胎内仏を神輿に乗せ、約1キロメートル離れた神明社から長谷寺まで華やかな渡御行列(クネリ)が練り歩きます。是山禅師が伝えたとされる獅子舞、獅子踊り、シャギリなどの民俗芸能が奉納され、地域一帯が活気に包まれます。

アクセス・拝観情報

長谷寺は年間を通じて拝観可能で、拝観料は無料です。JR羽後本荘駅からバスで約25分、またはJR羽後岩谷駅からタクシーで約7分。車の場合は由利本荘市街地から約15分で、県道沿いの五峰苑前に駐車場があります。お願いすればご住職から大仏殿や観音像についての説明を受けることもできます。

周辺の見どころ

由利本荘市とその周辺には多くの観光スポットがあります。本荘公園は城跡を活かした桜の名所として知られ、亀田城佐藤八十八美術館では地域の美術品を鑑賞できます。鳥海山の麓に位置する法体の滝は秋田を代表する名瀑の一つです。由利高原鉄道の鳥海山ろく線は、のどかな田園風景の中を走るローカル線として人気があります。道の駅岩城、道の駅東由利、道の駅おおうちなど、地元の特産品が楽しめる施設も充実しています。

Q&A

Q「赤田の大仏」とは何ですか?
A秋田県由利本荘市赤田地区の長谷寺(ちょうこくじ)に安置されている、高さ約9メートルの木造金箔押し十一面観世音菩薩立像の通称です。奈良・鎌倉の長谷寺とともに日本三大長谷観音の一つに数えられています。
Q拝観料はかかりますか?
A拝観料は無料です。大仏殿の扉を自分で開けて自由に拝観でき、写真撮影も可能です。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR羽後本荘駅からバスで約25分、JR羽後岩谷駅からタクシーで約7分です。車の場合は由利本荘市街地から約15分で到着します。
Q赤田大仏祭りはいつ開催されますか?
A毎年8月下旬(22日頃を中心に2〜3日間)開催されます。秋田県指定無形民俗文化財に指定された、神仏習合の伝統を今に伝える華やかな祭礼です。
Q大仏殿はなぜ文化財に登録されたのですか?
A秋田県唯一の大規模仏殿であり、棟札から建立年代が明確に確認できること、明治期の忠実な復元建築であること、著名な名工による豊富な装飾が残されていることから、秋田の近代寺院建築を知る上で貴重な遺構として2013年に国の登録有形文化財に登録されました。

基本情報

名称 長谷寺大仏殿(ちょうこくじだいぶつでん)
寺院名 正法山長谷寺(曹洞宗)
所在地 秋田県由利本荘市赤田字上田表115
所有者 宗教法人長谷寺
当初建立 寛政6年(1794年)
再建 明治26年(1893年)
構造・形式 木造、宝形造、銅板葺、建築面積181㎡
文化財指定 国登録有形文化財(建造物)(平成25年12月24日登録)
本尊 十一面観世音菩薩立像(像高7.878m、杉材寄木造、金箔押し)
拝観料 無料
アクセス JR羽後本荘駅よりバス約25分/JR羽後岩谷駅よりタクシー約7分
お問い合わせ 正法山長谷寺 TEL: 0184-22-1349

参考文献

長谷寺大仏殿(ちょうこくじだいぶつでん) - 由利本荘市公式ウェブサイト
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002098/1002113/1002126/1003559.html
長谷寺大仏殿 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/241145
長谷寺 (由利本荘市) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%AF%BA_(%E7%94%B1%E5%88%A9%E6%9C%AC%E8%8D%98%E5%B8%82)
赤田の大仏 - 由利本荘市観光協会
https://yurihonjo-kanko.jp/yrdb/akatadaibutu/
赤田の大仏 - あきた元気ムラ(秋田県)
https://common3.pref.akita.lg.jp/genkimura/archive/contents-497/
探訪アーカイブ。赤田の大仏 - マスミログ
https://www.akitanomasumi.com/akatanodaibutu

最終更新日: 2026.04.10