仁王門へ続く43段
明石寺石段及び石垣は、愛媛県西予市宇和町明石の明石寺で仁王門へ至る花崗岩の石段と、境内中段を造成した石垣で、大正5年(1916年)を中心に築かれ、平成19年(2007年)10月2日に登録有形文化財に登録された。
参拝者が明石寺で最初に足を置く場所がここである。駐車場から参道が木立の間で細くなり、地面がそのまま階段に変わる。段数は43。途中に踊場があり、登り切ると正面が仁王門になる。幅について、文化庁の国指定文化財等データベースは構造欄で3.7メートル、解説文で3.6メートルとしており、西予市も3.6メートルと記す。西予市はあわせて全長20.75メートルという数値も挙げている。
最下部の脇に立つ石柱には、大正5年(1916年)3月の文字が刻まれている。この年紀が石段の基準になる。両側と上方に連なる石垣は、一部が同じ大正期のもの、一部が昭和初期の増設である。
一段が一枚の石
踏石は御影石の切石で、自然石を拾い集めたものではない。明石寺石段及び石垣が珍しいのは、その石取りの大きさにある。下方の数段を除き、一段が幅3.6メートルをまたぐ一本の石でできている。継ぎ目がない。石工がこの原則を崩したのは階段が曲がる部分だけで、そこは3石を継いで弧に沿わせている。
寸法も細かく記録されている。蹴上げ250ミリメートル、踏み幅350ミリメートル。現代の階段は蹴上げを低く踏み幅を深く取るから、これはかなり急な比率になる。登りでは脹脛に、下りでは膝に来る勾配である。同時に、この比率は階段の水平投影を短く抑える。斜面の境内で最も足りないものが水平方向の余地であることを考えれば、理にかなった選択だ。
これだけの寸法の花崗岩は重く、値も張る。費用を出したのは地元の檀信徒と遍路である。西予市の解説はこの石段を、当時の善男善女の篤い信仰が形になったものと読む。登録基準に当てられたのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。訪れる者の歩調をこの石段が決めていることを思えば、その評価は素直に納得できる。
中段をつくった石垣
石段の両側から先へ続くのが、地蔵堂の建つ境内中段を造成した石垣である。文化庁データベースは総延長65メートルと記録する。
この石垣は石段とは造りが違う。加工しない自然石をほぼそのまま積む野面積で、目地筋はそろえない乱積である。面は凹凸が大きく、隙間には間詰石を噛ませて大石を固定している。日本の石積みで最も古く素朴な手法であり、苔や羊歯が早くに取り付く肌合いになる。
西側の一部だけが例外で、そこは石を斜めに向きを違えて積む矢羽根積になっている。矢の羽根に見立てた名のとおり、慣れれば杉綾模様がはっきり読み取れる。明石寺石段及び石垣のなかで、石工が実用よりも見せ方を優先した唯一の箇所である。
石段と石垣によって、木の茂る斜面は三段の使える平地になった。そのうち最上段を支えているのは、昭和5年(1930年)に完成した別の登録建造物、チャートの石垣である。
見学の方法
明石寺石段及び石垣は屋外にあり、時間の制限なく無料で見学できる。手すりは一部の区間にのみ設けられている。雨に濡れた花崗岩はよく滑るので、靴底は選んだほうがよい。石段を登りたくない場合は、上段の境内近くまで車で入れる経路がある。
撮影に制限はない。石段は午前中が撮りやすい。門の側から下ってくる光が段の陰影を出すためで、真上からの光では平坦に写る。
JR予讃線の卯之町駅から約3キロメートル、車で約8分、徒歩で約40分。車なら松山自動車道の西予宇和インターチェンジから約10分である。駐車場は約200台分で乗用車は無料、大型・中型バスは1,000円、マイクロバスは500円。問い合わせは0894-62-0032。
明石寺は四国八十八ヶ所霊場の第43番札所で、境内一帯は伊予遍路道を対象とする国の史跡の範囲に含まれる。毎年2月3日には本堂への石段下と地蔵堂の間の広場で採燈大護摩供が行われ、この日は石段にも人が並ぶ。
Q&A
- 明石寺石段及び石垣の石段は何段ありますか?
- 43段です。途中に踊場があり、登り切ると仁王門の前に出ます。幅3.6メートル、全長20.75メートル、蹴上げ250ミリメートル、踏み幅350ミリメートルです。
- 明石寺石段及び石垣は何でできていますか?
- 石段は御影石の切石で、多くの段が幅いっぱいをまたぐ一本の石です。両側と中段の石垣は自然石の野面積みで、西側の一部だけが斜めに積む矢羽根積みになっています。
- 明石寺石段及び石垣はいつ造られ、いつ登録されましたか?
- 石段脇の石柱に大正5年(1916年)3月の年紀が刻まれています。石垣は同じ大正期のものと昭和初期の増設が混じります。一括して平成19年(2007年)10月2日に登録有形文化財に登録されました。
- 明石寺石段及び石垣の石段は登るのが大変ですか?
- 現代の階段より勾配が急で、濡れると滑りやすい石です。手すりは一部の区間だけにあります。登るのが難しい方は、上段の境内近くまで入れる駐車場を利用できます。
- 明石寺石段及び石垣の見学に拝観料や時間の制限はありますか?
- どちらもありません。開かれた境内の屋外工作物で、いつでも無料で見学でき、撮影の制限もありません。
基本情報
| 名称 | 明石寺石段及び石垣 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県西予市宇和町明石205ほか |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成19年(2007年)10月2日登録 |
| 員数 | 1所 |
| 寸法 | 石段 43段、幅3.6メートル(文化庁データベースの構造欄は3.7メートル)、全長20.75メートル。石垣 総延長65メートル |
| 所有者 | 文化庁の国指定文化財等データベースに記載なし |
| 公開状況 | 境内の屋外工作物。時間の制限なく見学可、拝観料不要 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「明石寺石段及び石垣」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006328
- 西予市「国登録 明石寺石段及び石垣」
- https://www.city.seiyo.ehime.jp/miryoku/seiyoshibunkazai/bunkazai/kuni/kuni_yukei_kenzobutsu/4211.html
- 西予市「「明石寺境内」と「大寶寺道」が国史跡指定へ!」
- https://www.city.seiyo.ehime.jp/miryoku/seiyoshibunkazai/bunkazai/kuni/kshiseki/6592.html
- (一社)四国八十八ヶ所霊場会「第43番札所 源光山 円手院 明石寺」
- https://88shikokuhenro.jp/43meisekiji/
最終更新日: 2026.09.05