南北朝時代の短刀 ― 1918年に重要文化財
短刀〈銘国弘作〉は、愛媛県松山市堀之内の愛媛県美術館が保管する南北朝時代の短刀で、1918年(大正7年)4月8日に重要文化財に指定された。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は01514。所有は東雲神社である。
文化庁の解説はこう記す。南北朝時代の作で、筑前左一派の名工国弘の作品であり、松山藩主松平家が奉納したものと伝えられている。
「伝えられている」は奉納の経緯にかかる。作者を国弘とすること、筑前左一派に属することは断定されているが、松平家の奉納は伝承として記されている。
姿の記述に「枯れ」「強い」という語が並ぶ
文化庁の品質・形状の記載は次のとおりである。平造、三ツ棟、重ね薄く、平肉少なく、ふくら枯れ、強い姿。
平造は鎬をもたない造り込みで、短刀に多い。三ツ棟は棟の断面が三つの面をもつ形をいう。重ねが薄く、平肉が少ないとは、刀身が厚みを抑えて作られていることを示す。
ふくらは切先の刃の膨らみをさす。「枯れ」はその膨らみが乏しいことをいう。膨らみを削って直線に近づけた切先である。
これらが合わさって「強い姿」と評される。厚みを抑え、膨らみを削ぐことで、鋭さが際立つという関係になる。刃長29.2センチメートル、反り0.5センチメートル。
表と裏で異なる
刃文と帽子の記載には、表裏の違いが明記されている。
刃文は直刃調に足がよく入り、小沸がよくつき、裏には二重刃が交じる。二重刃は刃文の線が二重に見える現象で、表には現れず裏だけに出ている。
帽子は切先の刃文をいう。表が尖りごころ、裏が小丸にかえる。表は尖った感じ、裏は小さく丸く返る形で、左右で形が異なる。
同じ一枚の刀身で、表と裏の見え方が違う。焼き入れの結果として生じる差であり、意図して作り分けたものとは限らない。
鍛えは板目が流れごころに肌立ち、地沸がよくつく。地鉄の肌が流れるように現れる状態である。
彫物と茎
彫物は護摩箸と梵字である。
護摩箸は二本の細長い溝を並べて彫ったもので、密教の護摩を焚く箸に見立てた名である。梵字は仏を表す文字で、いずれも信仰に関わる彫物にあたる。
茎は生ぶ栗尻、鑢目は切、目釘穴は2個。「茎生ぶ」は茎に手が加えられていないことを示す。磨上げで短く詰められていないので、銘が残っている。
銘は「国弘作」の三字である。作者名に「作」を添える形式で、二字銘や在銘のみのものとは異なる。
指定番号01514は、工芸品の中では大きい番号である。重要文化財の番号は上位区分の番号とは別に振られている。
鑑賞
所有は東雲神社、保管は愛媛県美術館である。所有者と保管施設が異なる。神社が所有し、美術館が保管する形になっている。
常設展示とは限らず、展示の有無と時期は美術館の予定による。開館時間と観覧料も展覧会により異なるため、訪問前に確認したい。
刀剣は展示替えの対象になりやすいので、実物を目当てにする場合は出陳の有無を必ず確かめたい。
愛媛県美術館は松山城の南、堀之内にある。交通は伊予鉄道の南堀端電停から徒歩約3分である。
Q&A
- 短刀〈銘国弘作〉はいつ指定されましたか。
- 1918年(大正7年)4月8日に重要文化財に指定されました。員数は1口、種別は工芸品、指定番号は01514。文化庁は時代を南北朝、作者を国弘とします。所有は東雲神社です。
- 誰が作ったものですか。
- 文化庁は「筑前左一派の名工国弘の作品」とします。銘は「国弘作」の三字で、茎が生ぶであるため銘が残っています。松山藩主松平家が奉納したものと伝えられていますが、奉納の経緯は伝承として記されています。
- どのような姿ですか。
- 平造、三ツ棟で、重ね薄く、平肉少なく、ふくら枯れ、強い姿とされます。刃長29.2センチメートル、反り0.5センチメートル。厚みを抑え、切先の膨らみを削ぐことで鋭さが際立つ関係になっています。
- 表と裏で違いがありますか。
- あります。刃文は直刃調ですが、裏にだけ二重刃が交じります。帽子も表が尖りごころ、裏が小丸にかえる形で異なります。同じ一枚の刀身で、表と裏の見え方が違います。
- どこで見られますか。
- 所有は東雲神社ですが、愛媛県美術館が保管しています。常設展示とは限らず、展示の有無と時期は美術館の予定によります。刀剣は展示替えの対象になりやすいため、出陳の有無を確かめてください。
基本情報
| 名称 | 短刀〈銘国弘作〉(たんとう めいくにひろ) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県松山市堀之内 愛媛県美術館 |
| 指定区分 | 重要文化財(工芸品)/指定番号01514 |
| 指定年 | 1918年(大正7年)4月8日 重要文化財 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 刃長29.2センチメートル、反り0.5センチメートル。平造、三ツ棟、重ね薄く、平肉少なく、ふくら枯れ、強い姿。刃文は直刃調で裏に二重刃が交じり、帽子は表が尖りごころ、裏が小丸にかえる。彫物は護摩箸と梵字。茎は生ぶ栗尻、目釘穴2個。南北朝時代 |
| 所有者 | 東雲神社(愛媛県美術館が保管) |
| 公開状況 | 常設展示とは限らず、展示の有無と時期は美術館の予定による |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 短刀〈銘国弘作〉
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/6376
- 文化遺産オンライン 短刀〈銘国弘作〉
- https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/183972
- 松山市 短刀〈銘国弘作〉
- https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kanko/kankoguide/rekishibunka/bunkazai/kuni/sinonome_tantou.html
- 愛媛県美術館 公式サイト
- https://www.ehime-art.jp/
最終更新日: 2026.09.04