鈴善とは

鈴善は、福島県会津若松市中央一丁目にある、天保3年(1832年)創業の会津漆器の問屋「鈴善漆器店」の屋敷で、江戸末期から昭和初期にかけて建てられた店舗・座敷・蔵の7棟が令和3年(2021年)に国の登録有形文化財に登録された。読みは「すずぜん」。

会社の沿革によると、鈴善は会津藩主松平家の御用商人として漆器業を始め、のちに暖簾を拝領して鈴木屋漆器店を名乗った。明治以降は漆器の海外輸出、漆塗りの衣桁(着物を掛ける家具)の量産、合成樹脂を素地に使う研究へと事業を広げている。卸の商いは平成30年(2018年)に離れ、翌年、屋敷と蔵を「会津塗伝承館」として開いた。

城下町の通りに北面して店舗が建ち、その背後に座敷と蔵が連なる。問屋の商いと鈴木家の暮らしが一つの敷地に収まっていた構えが、7件の登録有形文化財としてまとまって残っている。

鈴善の7棟と登録

鈴善の7棟は令和3年(2021年)10月14日付で登録有形文化財となり、登録番号は07-0248から07-0254まで続く。登録の基準は7棟とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁のデータベースに載る年代・構造・元の用途は次のとおり。

  • 店舗:昭和初期。木造2階建、瓦葺、建築面積116㎡。店舗兼事務所
  • 蔵座敷:昭和4年(1929年)。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積147㎡。1階に作業場と座敷
  • 中座敷:昭和4年(1929年)。木造平屋建、瓦葺、建築面積116㎡。中庭を囲む座敷と玄関
  • 貯蔵蔵:大正8年(1919年)。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積55㎡。元は家財蔵
  • 米炭蔵:大正11年(1922年)。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積40㎡。元は米と炭の貯蔵庫
  • 物置蔵:江戸末期、昭和13年(1938年)頃に移築。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積55㎡。元は商品陳列蔵
  • 荷造り蔵:昭和初期。土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積49㎡。元は商品の荷造り蔵

いちばん古いのは物置蔵で、江戸末期の土蔵を昭和13年(1938年)頃にこの地へ移したものとされる。大正8年(1919年)に貯蔵蔵、大正11年(1922年)に米炭蔵が建ち、昭和4年(1929年)に蔵座敷と中座敷が加わった。店舗と荷造り蔵は昭和初期(1926〜1945年)の建築である。文化庁の解説は、米炭蔵と物置蔵を屋敷構えの拡張部と位置づけ、昭和前期に家業が盛んだったことを示す建物としている。

会津若松市は平成13年度(2001年度)に、鈴善漆器店を市の歴史的景観指定建造物の第21号とした。市の説明では、明治・大正期の漆蔵などの土蔵と、昭和5年(1930年)に建ったモダンな店舗からなる建物群で、中央通り界隈で赤瓦と白壁の町並みが残る一角とされる。

なお鈴善の公式サイトは、敷地内の蔵の多くは大正時代に市内で建てられ、曳家で移されたものと説明している。文化庁の解説で移築が記されているのは物置蔵だけで、ほかの蔵がどこで建てられたかは一次資料では確かめられない。

鈴善の屋敷構え

鈴善店舗は通りに面して北向きに建つ。その西に蔵座敷が接し、店舗の南と蔵座敷の東に接して中座敷がある。中座敷は二つの座敷を廊下でつないで中庭を囲み、玄関と店舗2階への階段もここに納まる。店・座敷・蔵の三つが、この一画で互いに接している。

敷地の北東の隅、通りに沿っては荷造り蔵が東西に長く建つ。東の端には物置蔵、南西の隅の庭の東には貯蔵蔵、南東の隅には米炭蔵があり、米炭蔵だけは地番が141番と別になっている。蔵座敷と物置蔵・貯蔵蔵・米炭蔵は南北に棟を通し、荷造り蔵だけが通りと平行に東西に棟を向ける。

鈴善の蔵はどれも切妻造の桟瓦葺で、壁の漆喰を軒下の鉢巻まで塗り込める。蔵座敷・貯蔵蔵・荷造り蔵の屋根は地元産の赤瓦である。貯蔵蔵・米炭蔵・荷造り蔵の小屋組は西洋式のトラスで、土蔵の外観の内側に近代の構造を組み込んでいる。各棟の造りと見どころは、それぞれのページにまとめた。

鈴善の見学とアクセス

鈴善の屋敷は、株式会社鈴善が運営する「会津塗伝承館 鈴善」として公開されている。公式サイトの案内では、入館時間は午前9時30分から午後5時まで、休みは元日のみである(2026年10月確認)。会社概要の欄には定休日を「不定休」とする記載もあるので、遠方から訪れるなら電話で確かめておきたい。会津若松観光ビューローの案内では入場は無料である。

敷地は、会津塗の歴史や技法、職人の道具を展示する「会津塗伝承蔵」、会津ゆかりの作家の作品を並べる「美術蔵」、蒔絵を体験できる「体験蔵」、漆器や地酒を売る「漆器蔵」「地酒蔵」に分かれている。伝承蔵の2階では、昭和初期に株主総会などの会議に使った和室と来賓室を見ることができる。蒔絵体験は2名以上・要予約で、料金は銘々皿3,500円などである(公式サイト、2026年4月更新)。公式サイトは施設名で案内しており、登録された7棟とどう対応するかは示していない。撮影の可否についての案内も見当たらないので、館内では係の人にひとこと確かめたい。

鈴善へは、JR会津若松駅から歩いて約10分、車で約6分である。七日町駅からは歩いて約15分、磐越自動車道の会津若松インターチェンジからは車で約10分。路線バスなら「郵便局前」で降りて歩いて1分ほどである。敷地には無料駐車場があり、大型バス4台・普通車約25台が停められる。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善店舗
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013923
国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善蔵座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013924
国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善中座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013925
国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善貯蔵蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013926
国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善米炭蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013927
国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善物置蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013928
国指定文化財等データベース(文化庁)鈴善荷造り蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013929
文化遺産オンライン 鈴善店舗
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/587103
会津若松市 会津若松市歴史的景観指定建造物詳細
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2009020200238/
会津若松市 会津若松市の文化財件数(令和7年11月20日現在)
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2012100500043/file_contents/bunkazai2025.pdf
会津塗伝承館 鈴善 施設のご紹介
https://suzuzen.com/facility/
会津塗伝承館 鈴善 伝承蔵
https://suzuzen.com/facility/densyo/
会津塗伝承館 鈴善 体験蔵
https://suzuzen.com/facility/taiken/
会津塗伝承館 鈴善 鈴善の歴史
https://suzuzen.com/pride/
会津塗伝承館 鈴善 アクセス&観光
https://suzuzen.com/access/
会津塗伝承館 鈴善 会社概要
https://suzuzen.com/company/
会津若松観光ナビ(会津若松観光ビューロー)会津塗伝承館 鈴善
https://www.aizukanko.com/souvenir/223

最終更新日: 2026.10.02

基本情報

名称鈴善
所在地福島県会津若松市中央一丁目138他
指定登録有形文化財 7件
座標37.49946, 139.92962