飛騨南部の山村に建つ大型民家

花田今井家住宅主屋は、岐阜県下呂市御厩野に建つ大型の民家である。もっとも古い部分は文政12年(1829年)にさかのぼり、江戸時代後期に建てられた農家建築にあたる。

木造2階建、切妻造の桟瓦葺で、桁行は約16メートルにおよぶ。この規模の住まいは、村のなかでも格式ある一家であったことを示す。間取りは古い地域の型を残し、正面右寄りを土間、左側を床上部とする。

時代ごとの改変を重ねた一棟

この主屋の特色は、改変の跡がそのまま見てとれる点にある。近代に入ると土間側が洋風の医院として増改築され、農家らしい簡素な造作と、医院に改めた部分の異なる意匠とが一棟のなかに同居することとなった。

二階は増築部を除いて広い一室とされ、蚕室に用いられたと考えられている。平地の乏しい山間の村では、養蚕が農業を補う生業として営まれた。平成28年(2016年)11月に登録有形文化財となり、国土の歴史的景観への寄与が評価された。

平成8年(1996年)に始まる登録制度は、指定制度より緩やかな保護の仕組みである。価値が認められる前に失われかねない近代の建物を広く守るために設けられたもので、傑出性よりも歴史の連続性で評価される本件のような住まいに向いている。

道から読む主屋

道から眺めると、主屋は近世から近代への移り変わりを一棟のうちに読ませる建物である。農家部分と医院部分との継ぎ目は壁面や窓の並びに現れ、一つの屋根の下で農業・医療・養蚕をこなしてきた一家の歩みがうかがえる。

現在も個人の住宅であるため内部は一般に公開されていない。正面の規模や時代の重なりは公道から確かめられる。訪ねる際は下呂市に公開状況を確認し、暮らしの場である点に配慮したい。

Q&A

Q主屋はいつ建てられましたか?
Aもっとも古い部分は文政12年(1829年)にさかのぼります。昭和24年(1949年)に増築、昭和44年(1969年)に改修されています。
Q重要文化財ですか?
Aいいえ。平成28年(2016年)に登録された登録有形文化財です。指定制度より緩やかな登録制度による保護にあたります。
Qなぜ医院だった部分があるのですか?
A近代に土間側を洋風の医院として増改築したためで、正面には農家と医院の意匠が併存します。
Q二階は何に使われましたか?
A増築部を除いて広い一室とされ、蚕室に用いられたと考えられています。
Q内部は見学できますか?
A個人の住宅のため一般公開はされていません。外観は公道から見ることができます。見学の可否は下呂市にご確認ください。

基本情報

名称花田今井家住宅主屋(はなたいまいけじゅうたくしゅおく)
所在地岐阜県下呂市御厩野字花田垣内149-1
種別・区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日平成28年(2016年)11月29日/登録番号 21-0245
員数・規模1棟。桁行約16メートル、建築面積310平方メートル
構造形式木造2階建、瓦葺、切妻造
年代文政12年(1829年)/昭和24年増築、昭和44年改修
公開状況個人住宅。外観は公道から見学可。詳細は下呂市に要確認。

参考文献

文化遺産オンライン — 花田今井家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/243928
国指定文化財等データベース(文化庁)— 花田今井家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011311
岐阜県 登録有形文化財(建造物)
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/12417.html
文化庁 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html

最終更新日: 2026.07.07