弁柄とは
弁柄は、酸化鉄を主成分とする赤褐色の顔料である。紅殻とも書き、ベンガラとも表記する。インドのベンガル地方から伝わったことに由来する名とされる。建物の柱や梁、格子、建具などの木部に塗って色を付けるほか、陶磁器や漆器の着色にも用いられてきた。木部に塗ると、色を付けるだけでなく防腐や防虫の効果もあるとされる。
社寺建築では、柱などの軸部を弁柄の赤で塗り、組物や彫刻を極彩色で彩る構成が多い。住宅では、町家の格子や柱を弁柄で塗り、落ち着いた赤褐色の表情とする例が各地に見られる。岡山県高梁市の吹屋は、江戸時代から弁柄の産地として栄えた鉱山町で、弁柄で財をなした商家の町並みが残る。
記録と実物で見分ける手がかり
記録では「弁柄塗」として、塗った部位とともに書かれる。奈良市の登彌神社本殿は、一間社春日造の二棟を連結した特異な形式の社殿で、軸部は弁柄塗を基調に柱を金襴巻とし、組物などを極彩色で彩る。滋賀県長浜市の旧北村医院東病棟は、真壁造に竪板張の外壁をもつ病棟で、木部を弁柄塗とする。岡山県高梁市の旧片山家住宅は、江戸時代後期から吹屋で弁柄の製造と販売を手掛け、当地を代表する商家となった家の住宅で、重要文化財に指定されている。
現地では、木部の赤褐色がくすんだ落ち着いた色か、鮮やかな朱色かを見る。社寺の軸部の赤には、弁柄のほか朱や鉛丹を用いるものもあり、記録の顔料の記述を確かめて書きたい。
参考文献
- 旧片山家住宅(岡山県高梁市成羽町)|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00004159
- 登彌神社本殿|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013300
- 旧北村医院(李軒邸)東病棟|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014033
最終更新: 2026.09.27