擬洋風建築とは

擬洋風建築は、明治前期に日本の大工が洋風の外観を模して建てた建築である。西洋建築の技術を学んだ建築家ではなく、在来の工匠が見よう見まねで洋風を表現したものを指す。

山形県の旧鶴岡警察署庁舎は明治17年の建築で、重要文化財の解説に「桁行18.2m、梁間12.9m、木造2階建、宝形造桟瓦葺で、正面1階には玄関ポーチ、2階にはベランダを突出して設ける。旧鶴岡警察署庁舎は、欧化政策が積極的に進められた山形地方の擬洋風建築を代表する建物の一つである。和風と洋風の要素を巧みに融合させており、明治前期に各地の工匠によって建設された擬洋風建築の一つの到達点を示す」と記される。

この解説は擬洋風建築の性格を三つの点で示している。明治前期のものであること、各地の工匠が建てたこと、和風と洋風の要素を融合していることである。

愛知県の旧加茂郡銀行羽黒支店は明治40年頃の建築で、二階和室の欄間に銀行にふさわしい彫刻を施すなど細部に装飾を持ち、「銀行から診療所、公民館と変遷を遂げ、地域住民の生活拠点としての役割を担う明治期の擬洋風建築」と解説されている。

擬洋風的意匠

明治後期以降の建物には、擬洋風的という書き方が現れる。愛媛県の大西内科医院診療棟は大正初期の建築で、「木造平屋建、下見板張の医院建築で、外壁は洋風につくるが、屋根は伝統的な入母屋造、桟瓦葺、玄関ポーチも入母屋造の伝統的な車寄とする。道路側の東面に盲のファンライトつけるなど擬洋風的意匠にも特色がある」と解説されている。

外壁は下見板張で洋風、屋根は入母屋造で和風という組み合わせは、擬洋風建築の典型である。記録が擬洋風建築と擬洋風的意匠を書き分けるのは、様式としての擬洋風が明治前期に限られ、その意匠だけが後まで続いたためである。

現地では屋根と壁を別々に見るとよい。壁に下見板やペンキ塗、上げ下げ窓、ベランダなどの洋風要素があり、屋根が瓦葺の和風であれば擬洋風の系統にあたる。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)旧鶴岡警察署庁舎/擬洋風建築の一つの到達点を示すものとして価値が高い
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004369
国指定文化財等データベース(文化庁)旧加茂郡銀行羽黒支店/明治期の擬洋風建築
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009473
国指定文化財等データベース(文化庁)大西内科医院診療棟/外壁は洋風につくるが屋根は伝統的な入母屋造、擬洋風的意匠
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002184

最終更新: 2026.09.02