重要文化的景観とは
重要文化的景観は、文化的景観のうち特に重要なものとして、都道府県または市町村の申出に基づき文部科学大臣が選定したものである。根拠は文化財保護法第134条で、制度は平成16年(2004年)の法改正で設けられ、平成17年4月1日に施行された。
文化的景観とは、地域における人々の生活または生業と、その地域の風土によって形成された景観地で、国民の生活や生業を理解するために欠くことのできないものをいう(同法第2条第1項第5号)。棚田や段畑、水郷、牧野、漁村や鉱山町の集落などが選定されており、名称は「〜の文化的景観」「〜の農村景観」のように、範囲と景観の性格を示す形をとる。
令和8年10月1日現在で74件が選定されている。選定の対象は、景観法に基づいて都道府県または市町村が定めた景観計画区域または景観地区の中にあり、自治体がすでに保存のための措置を講じている文化的景観に限られる。地元の自治体による保護を前提にし、その上に国の選定が重なる仕組みである。
選定されると何が起きるか、近い制度との区別
重要文化的景観は「指定」ではなく「選定」である。この点は重要伝統的建造物群保存地区と同じで、どちらも自治体の取り組みを国が選び出す形をとる。違いは対象にある。重要伝統的建造物群保存地区が町並みを構成する伝統的な建造物群を対象にするのに対し、重要文化的景観は田畑、水路、山林、集落を含む土地利用の全体を対象にする。
名勝との区別も要る。名勝は芸術上または鑑賞上の価値で指定される名勝地で、現状変更には文化庁長官の許可が必要になる。重要文化的景観の価値は眺めの美しさではなく、そこで続いてきた暮らしと生業が土地に刻んだ形にある。
選定後に現状を変更し、または保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、30日前までに文化庁長官に届け出る(第139条)。許可ではなく届出で、維持の措置、非常災害のための応急措置、影響の軽微な行為は対象外とされる。文化庁は、通常の生産活動に係る行為も届出を要しないと説明している。景観を形づくってきた農林漁業の営みは、選定後もそのまま続けられる。
国は、調査、保存活用計画の策定、整備、普及啓発の事業に経費を補助する。記事では「選定された」と書き、「指定された」とは書かない。
参考文献
- e-Gov法令検索 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)
- https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0100000214
- 文化庁 文化財の紹介 文化的景観
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/keikan/
- 文化庁 文化財指定等の件数(令和8年10月1日現在)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/shitei.html
- 文化庁 文化財保護法の一部改正について(平成16年)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/bunkazai/hogoho_kaisei.html
最終更新: 2026.10.04