水通しとは
水通しは、砂防堰堤などの天端の一部を一段低く切り下げ、上流からの水をそこに集めて下流へ流す部分である。断面は台形になることが多く、切り下げた部分の底の幅を水通し幅、両側の斜面を水通しの肩と呼ぶ。
水通しの第一の役目は、流れを堤体の決まった位置に集めることにある。天端全体から水があふれると、堤体の両端で水が岸を削り、堰堤が側面から壊れるおそれがある。水通しを堤体の中央に設ければ、流れは川の中央に落ち、両岸の侵食を避けられる。落ちた水は下流の水叩きで受け止められ、副堰堤を越えて流れ去る。
水通しの幅と深さは、想定する洪水の流量に合わせて決められる。幅を広くとれば、落ちる水が分散して河床を掘る力が弱まる。記録には、こうした洗掘を抑えるための工夫が書かれていることが多い。
記録と実物で読む手がかり
記録では、水通しの位置、幅、肩の勾配が記される。万内川十一号堰堤の記録は、水通しを堤体中央部に設けてほぼ左右対称の形とし、水叩き部を石張で強固に築くとともに水通し幅を広くとるなど、洗掘を防ぐ工夫が見られると書く。十四号堰堤の記録は、水通し両肩の法勾配を1割、水通し幅を15メートルとしている。
水通しの形は景観にも関わる。万内川六号堰堤の記録は、堤高と同じ高さだけ水通し部を切り込んだ低いつくりと、両肩を1割勾配とした長さ15メートルの水通しによって、上流側への見通しが確保されると評価している。正法寺川南沢第七号石堰堤の記録は、水通しの角に丸みをつけると書き、石積の細部の処理にも目を向けている。
現地では、堰堤を下流から正面に見て、天端の中央が一段下がった部分を探す。平常時の水はここだけを流れていることが多く、両側の天端は乾いている。水通しの底や肩の石の摩耗の具合から、流水の当たり方を読み取ることもできる。
参考文献
- 万内川六号堰堤|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003215
- 万内川十一号堰堤|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003218
- 万内川十四号堰堤|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003221
- 正法寺川南沢第七号石堰堤|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004890
最終更新: 2026.09.26