稲荷川第二砂防堰堤とは
稲荷川第二砂防堰堤は、栃木県日光市大字日光字帰ル沢・中鈴地先の稲荷川に大正9年(1920年)に築かれた重力式コンクリート造の砂防堰堤で、平成14年(2002年)8月21日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。堤長40メートル、堤高7.0メートルで、所有者は国(国土交通省)である。
稲荷川砂防堰堤群として登録された7基のうち、最も古い堰堤である。川の上では第四堰堤の110メートル上流、第三堰堤の84メートル下流にあり、3基が短い間隔で続く区間の真ん中に立つ。登録番号は09-0056、登録基準は「造形の規範となっているもの」である。
流された第一堰堤のあとに
稲荷川の直轄砂防で最初に完成した第一堰堤は、大正8年(1919年)の夏に竣工してまもなく、同じ年の9月15日の暴風雨に伴う土石流で流された。石を積むだけの空積だったためである。日光砂防事務所が公開している当時の写真には、この出水で第二堰堤の付近まで運ばれてきた巨岩が写っている。
稲荷川第二砂防堰堤は、この失敗を受けて造り方を改めた最初の堰堤である。文化庁の解説は、空積の第一堰堤が竣工直後に流失した反省から練積としたと記す。日光砂防事務所によれば、完成は大正9年(1920年)8月2日で、粗石コンクリートを使った初めての砂防堰堤だった。完成した年の大出水を受け止めて効果を示し、その成功が稲荷川の砂防事業を広げるきっかけになった。
番号は「第二」だが、第一堰堤が残っていないため、稲荷川で現存する直轄砂防の堰堤としてはこれが最も古い。
堰堤群の型を示す最古の1基
文化庁は稲荷川第二砂防堰堤を、練積であることと、幅が広く角に丸みを付けた台形の水通しを持つことという、この事業で築かれた堰堤群の特徴を示す最古のものと位置づけ、設計者を蒲孚(かば・まこと)と明記している。土木学会が「蒲式」と呼ぶ水通しの形は、ここが出発点にあたる。
堤体には長方形の水抜きが8か所開けられている。水抜きは、堰堤の背後にたまった水を少しずつ下流へ逃がすための穴で、堤体にかかる水の圧力を和らげる。右岸側には延長40メートルの練積の護岸が残り、堰堤の袖から川岸を守っている。土木学会の資料によれば、下流側の副堰堤は平成6年(1994年)に取り壊して新しく造り直され、平成18年(2006年)には補修が行われた。
稲荷川第二砂防堰堤の見どころと見学
稲荷川第二砂防堰堤は屋外の砂防施設で、見学料はなく、川沿いの道から外観を眺める形になる。堤体に登ることはできない。
見ておきたいのは水通しの輪郭である。下流側から正面に向き合うと、水が落ちる切り欠きの両肩が角張らずに丸く落とされているのが分かる。堤体の面に並ぶ8か所の四角い水抜きと、右岸に続く石積の護岸もこの位置から確かめられる。手前の低い壁は平成6年(1994年)の副堰堤で、大正の堤体とは時代が違う。
下流の第四堰堤、上流の第三堰堤とは歩いて数分の距離で、大正9年(1920年)と大正10年(1921年)の3基を続けて見比べられる。堰堤群への行き方は稲荷川砂防堰堤群のページにまとめてある。
Q&A
- 稲荷川第二砂防堰堤はいつ造られましたか?
- 大正9年(1920年)です。日光砂防事務所の資料では同年8月2日の完成とされ、稲荷川砂防堰堤群の7基の中で最も古い堰堤です。
- 稲荷川第二砂防堰堤は「第二」なのに、なぜ最も古いのですか?
- 先に完成した第一堰堤が、大正8年(1919年)9月15日の土石流で流されて残っていないためです。稲荷川第二砂防堰堤は、その反省から練積に改めて築かれた最初の堰堤です。
- 稲荷川第二砂防堰堤を設計したのは誰ですか?
- 文化庁の解説は、内務技師の蒲孚(かば・まこと)を設計者としています。幅の広い丸みを帯びた台形の水通しは、のちに「蒲式」と呼ばれるようになりました。
- 稲荷川第二砂防堰堤の水抜きや護岸とは何ですか?
- 堤体に開けられた長方形の8か所の穴が水抜きで、背後にたまった水を下流へ逃がします。右岸には延長40メートルの練積の護岸が残り、川岸を守っています。
- 稲荷川第二砂防堰堤は見学できますか?見学料はかかりますか?
- 川沿いの道から外観を見学でき、見学料はかかりません。現役の砂防施設のため、堤体には登れません。雨の後は増水するので川岸に近づかないでください。
基本情報
| 名称 | 稲荷川第二砂防堰堤(いなりがわだいにさぼうえんてい) |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県日光市大字日光字帰ル沢・中鈴地先 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成14年(2002年)登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 堤長40メートル、堤高7.0メートル(重力式コンクリート造、右岸護岸付) |
| 所有者 | 国(国土交通省) |
| 公開状況 | 屋外の砂防施設。川沿いの道から外観を見学できる(見学料なし) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)稲荷川第二砂防堰堤
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002882
- 文化遺産オンライン 稲荷川第二砂防堰堤
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/168192
- 国土交通省関東地方整備局日光砂防事務所 国登録有形文化財・砂防堰堤の歴史
- https://www.ktr.mlit.go.jp/nikko/nikko00038.html
- 土木学会関東支部 日光稲荷川流域の砂防堰堤群
- https://www.jsce.or.jp/branch/kanto/04_isan/h26/h26_3.html
- とちぎの文化財 稲荷川第二砂防堰堤
- https://bunkazai.pref.tochigi.lg.jp/cultural/%E3%80%90%E7%A8%B2%E8%8D%B7%E5%B7%9D%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E7%A0%82%E9%98%B2%E5%A0%B0%E5%A0%A4%E3%80%91/
最終更新日: 2026.10.01