稲荷川第三砂防堰堤とは
稲荷川第三砂防堰堤は、栃木県日光市大字日光字中鈴地先の稲荷川に大正10年(1921年)に築かれた重力式コンクリート造の砂防堰堤で、平成14年(2002年)8月21日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。堤長76メートル、堤高5.8メートルで、所有者は国(国土交通省)である。
位置は第二堰堤の84メートル上流で、ここから上流の第十堰堤までは約600メートル離れる。稲荷川砂防堰堤群の下流側にまとまる4基のうち最も上流にあり、堤長は7基の中で最も長い。日光砂防事務所の資料では、完成は大正10年(1921年)7月1日とされる。
3.3メートルの天端
文化庁の解説が稲荷川第三砂防堰堤の特徴として挙げるのは、堤体のいちばん上の面、天端の幅である。第三堰堤の天端は3.3メートルあり、建設の時期が後になる他の堰堤より広く取られている。
稲荷川の土石流は、水だけでなく大きな転石を押し流してくる。堰堤を越える石は天端の縁にぶつかり、その衝撃を受け止めるのは堤体の上部である。文化庁はこの広い天端を、大きな転石の激しい衝撃を受けやすい初期の堰堤の躯体の形を端的に表すものと評価している。事業が始まったばかりの時期、技術者はまず堰堤を厚く造ることで石の打撃に備えた、と読むことができる。
平面は曲がりのない直線で、堤体の面は他の堰堤と同じく石を斜めに積む谷積で仕上げてある。目地はコンクリートで固めた練積である。土木学会の資料によれば、平成18年(2006年)に補修が行われている。
稲荷川第三砂防堰堤が登録された理由
稲荷川第三砂防堰堤の登録番号は09-0057、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。下流の第二・第四堰堤とともに山あいの谷に連なり、岩と緑に囲まれて段を刻む景観をつくっている。文化庁は第四堰堤の解説で、下流側から第二・第三堰堤へと続く眺めを、歴史的な近代河川景観を表すものとしている。
稲荷川第三砂防堰堤の見どころと見学
稲荷川第三砂防堰堤は屋外の砂防施設で、見学料はなく、川沿いの道から外観を見る形になる。堤体に登ったり天端を歩いたりすることはできない。
天端の厚みは、正面よりも斜め横から見るほうがつかみやすい。水が少ない時期には、水通しを越える流れが薄くなり、天端の縁の石の並びと奥行きが読み取れる。76メートルの堤体が谷を一直線に横切る姿は、すぐ下流の堤長40メートルの第二堰堤と比べると長さの違いがよく分かる。堰堤群への行き方は稲荷川砂防堰堤群のページにまとめてある。
Q&A
- 稲荷川第三砂防堰堤はいつ造られましたか?
- 大正10年(1921年)です。日光砂防事務所の資料では、同年7月1日に完成したとされています。
- 稲荷川第三砂防堰堤の大きさは?
- 堤長76メートル、堤高5.8メートルです。稲荷川砂防堰堤群の7基の中で最も堤長が長い堰堤です。土木学会の資料は堤長を75.5メートルとしています。
- 稲荷川第三砂防堰堤の天端が広いのはなぜですか?
- 土石流とともに流れてくる大きな転石の衝撃に備えたためと考えられています。天端の幅は3.3メートルで、文化庁は後の時期の堰堤より広い点を、初期の堰堤の形をよく表す特徴として挙げています。
- 稲荷川第三砂防堰堤はどこにありますか?
- 日光市大字日光字中鈴の稲荷川で、第二堰堤の84メートル上流にあります。ここから上流の第十堰堤までは約600メートルです。
- 稲荷川第三砂防堰堤は見学できますか?見学料はかかりますか?
- 川沿いの道から外観を見学でき、見学料はかかりません。現役の砂防施設のため、堤体や天端には立ち入れません。
基本情報
| 名称 | 稲荷川第三砂防堰堤(いなりがわだいさんさぼうえんてい) |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県日光市大字日光字中鈴地先 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成14年(2002年)登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 堤長76メートル、堤高5.8メートル、天端幅3.3メートル(重力式コンクリート造) |
| 所有者 | 国(国土交通省) |
| 公開状況 | 屋外の砂防施設。川沿いの道から外観を見学できる(見学料なし) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)稲荷川第三砂防堰堤
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002883
- 国指定文化財等データベース(文化庁)稲荷川第四砂防堰堤
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002881
- 文化遺産オンライン 稲荷川第三砂防堰堤
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/182793
- 国土交通省関東地方整備局日光砂防事務所 国登録有形文化財・砂防堰堤の歴史
- https://www.ktr.mlit.go.jp/nikko/nikko00038.html
- 土木学会関東支部 日光稲荷川流域の砂防堰堤群
- https://www.jsce.or.jp/branch/kanto/04_isan/h26/h26_3.html
- とちぎの文化財 稲荷川第三砂防堰堤
- https://bunkazai.pref.tochigi.lg.jp/cultural/%E3%80%90%E7%A8%B2%E8%8D%B7%E5%B7%9D%E7%AC%AC%E4%B8%89%E7%A0%82%E9%98%B2%E5%A0%B0%E5%A0%A4%E3%80%91/
最終更新日: 2026.10.01