笈形とは

笈形は、大瓶束の両側に添える飾り板である。束の左右へ広がる輪郭をとり、彫刻を施して妻飾を華やかにする。名は背負い箱である笈の形に由来するとされる。

大瓶束と一組で記録される。京都府の仁和寺大玄関は明治23年の建築で、「細部では蟇股や大瓶束の笈形に秀麗な彫刻を施すなど、威厳と華やかさを備えた大型の玄関である」と解説されている。

彫刻の題材が記されることもある。愛知県の徳授寺玄関は昭和9年の建築で、「正面の頭貫と虹梁の間に龍彫刻を飾り、虹梁上の大瓶束には波に菊を表した華やかな笈形を付す。唐破風に吊る鳳凰の兎毛通しとともに見応えがある」と解説されている。波に菊という具体的な図柄が挙げられている。

笈形付大瓶束という語のまとまりで書かれることもある。山形県の鳥海山大物忌神社吹浦口ノ宮本殿は宝永8年の建築で、「妻飾は、虹梁上に巻斗と通肘木を2段積上げ、その上に笈形付大瓶束を立てる、特異な形式をとる」と解説されている。

妻飾のなかでの位置

妻飾は虹梁、大瓶束、笈形、懸魚が組み合わさって構成される。虹梁が横に渡り、その上に大瓶束が立ち、束の左右に笈形が付き、破風の頂部に懸魚が吊られる。玄関や向拝では、これらが一組で正面を飾る。

彫刻が集中するのは、妻面が正面から最もよく見える位置だからである。徳授寺玄関の解説が龍、菊、鳳凰と三つの題材を並べているように、一つの妻面に複数の彫刻が施される。

現地では妻面を正面から見上げるとよい。中央に立つ縦長の束の左右に、翼を広げたような板が付いていれば笈形である。束だけで笈形を持たない例も多く、有無が意匠の格を分ける。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
国指定文化財等データベース(文化庁)仁和寺大玄関/蟇股や大瓶束の笈形に彫刻
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009039
国指定文化財等データベース(文化庁)徳授寺玄関/向唐破風造桟瓦葺、唐破風に吊る鳳凰の兎毛通し
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009294
国指定文化財等データベース(文化庁)鳥海山大物忌神社吹浦口ノ宮本殿/虹梁上に巻斗と通肘木を2段積上げ、その上に笈形付大瓶束を立てる
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009122

最終更新: 2026.09.10