兎毛通しとは

兎毛通しは、唐破風の拝みに吊る懸魚である。直線の破風に吊る通常の懸魚と違い、曲線を描く唐破風の輪郭に合わせた形をとる。

彫刻の場になる。愛知県の徳授寺玄関は昭和9年の建築で、「本堂東側の庫裏に渡る廊下南面に構える玄関。間口3.8メートル奥行2.7メートル、向唐破風造桟瓦葺である。正面の頭貫と虹梁の間に龍彫刻を飾り、虹梁上の大瓶束には波に菊を表した華やかな笈形を付す。唐破風に吊る鳳凰の兎毛通しとともに見応えがある」と解説されている。

東京都の上宮寺本堂は大正3年の建築で、「入母屋造妻入で、照り起り屋根の向拝を突出させる。妻飾の二重虹梁大瓶束や兎毛通しの彫刻で正面を飾る」と解説されている。

いずれも建物の正面を飾る要素として、虹梁の彫刻や大瓶束の笈形と並べて挙げられている。唐破風を構える玄関や向拝では、これらが一組で意匠をなす。

懸魚との関係と表記

兎毛通しは懸魚の一種である。切妻造や入母屋造の直線的な破風には梅鉢懸魚や鰭付懸魚が吊られ、軒唐破風や向唐破風には兎毛通しが吊られる。破風の形に応じて名が変わる。

現地では破風の頂部を見上げるとよい。破風の輪郭が弓なりに曲がり、その中央下に彫刻板が吊られていれば兎毛通しである。鳳凰、龍、波などが彫られることが多い。

表記は複数ある。文化庁の記録では兎毛通しが用いられ、兎ノ毛通し、兎の毛通しとも書かれる。記事に書くときは引用する記録の表記に合わせるのが確実である。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
国指定文化財等データベース(文化庁)徳授寺玄関/向唐破風造桟瓦葺、唐破風に吊る鳳凰の兎毛通し
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009294
国指定文化財等データベース(文化庁)上宮寺本堂/妻飾の二重虹梁大瓶束や兎毛通しの彫刻で正面を飾る
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011892
国指定文化財等データベース(文化庁)高龍寺金毘羅堂/大間の正面には軒唐破風付の向拝を付し、千鳥破風を重ねる
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009105

最終更新: 2026.09.10