スクラッチタイルとは

スクラッチタイルは、表面に縦の細い搔き傷を付けたタイルである。平滑なタイルと違って光を柔らかく拡散し、大きな壁面でも単調にならない。

大正末から昭和初期の建築に多い。東京都の学士会館は昭和3年の建築で昭和12年に増築されたもので、「鉄骨鉄筋コンクリート造による関東大震災後の復興建築で、玄関の半円大アーチやスクラッチタイルの外観、窓廻り2・3層の直線基調と4層の曲線基調の対比などに特徴がある。設計は佐野利器と高橋貞太郎」と解説されている。

三重県の旧四日市市立図書館は昭和4年の建築で、「鉄筋コンクリート造2階建、外観はスクラッチタイル張で比較的窓を大きく取る」と解説されている。鉄筋コンクリート造の外装として広く使われた。

木造にも張られる。静岡県の旧二俣町役場は昭和11年の建築で、「木造2階建、寄棟造桟瓦葺の役所庁舎。外観は四隅の柱型と1階の壁面をスクラッチタイル張とし、縦長の上下窓を並べ、正面にやや縦長の車寄せを付ける。地元の大工本島亥三郎の作品」と解説されている。

部分使いと年代の手がかり

全面に張るとは限らない。旧二俣町役場は四隅の柱型と1階の壁面だけに張り、2階は別の仕上げとしている。洗い出し下見板張と組み合わせて、面ごとに材を変える例が多い。

腰に張ることもある。東京都の一橋大学旧門衛所は昭和6年の建築で、「外装はモルタル塗、腰スクラッチタイル矢筈積及び下見板張」と解説されている。タイルの張り方まで記録されている。

使われた時期が限られるため、年代の手がかりになる。関東大震災後の復興建築に多く用いられ、戦後はほとんど使われなくなった。記録にこの語があれば、大正末から昭和戦前期の建築である可能性が高い。

現地では壁面に近寄って見るとよい。タイル一枚ごとに縦方向の細かい筋が入り、指で触れるとざらついていればスクラッチタイルである。離れて見ると筋は見えず、面全体がやわらかい陰影を持つ。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)学士会館/玄関の半円大アーチやスクラッチタイルの外観、関東大震災後の復興建築
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003070
国指定文化財等データベース(文化庁)旧四日市市立図書館/鉄筋コンクリート造2階建、外観はスクラッチタイル張
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003103
国指定文化財等データベース(文化庁)旧二俣町役場/四隅の柱型と1階の壁面をスクラッチタイル張とし、縦長の上下窓を並べる
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003102
国指定文化財等データベース(文化庁)一橋大学旧門衛所/外装はモルタル塗、腰スクラッチタイル矢筈積及び下見板張
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001766

最終更新: 2026.09.11