立坑とは

立坑は、地表から垂直に掘り下げる坑である。水平方向に掘り進む横坑と組み合わせて、水路や隧道の経路をつくる。

愛知県の旧中央線笠石洞暗渠は明治33年の建築で昭和32年に改修されたもので、「線路を盛土して築堤した際に、沢水を抜くために設けられた煉瓦造の暗渠。立坑約9メートルと、庄内川に向けた横坑約11メートルからなる矩形の断面を持つ。当時の技術水準を示す貴重な遺構」と解説されている。

この暗渠では、築堤の上側で集めた水を立坑で約9メートル下ろし、そこから横坑で約11メートル進めて庄内川へ落とす。垂直と水平の二つの区間を継いで一つの水路としている。

断面は矩形である。隧道が馬蹄形断面に標準化されたのに対し、立坑と横坑を組み合わせるこの種の構造では、掘削と築造の都合に応じて断面が決まる。

記録の読み方

記録は立坑と横坑の長さを別々に示す。合算して一つの延長として扱うと、経路の形が失われる。約9メートルの垂直区間と約11メートルの水平区間という書き方をそのまま引くのが確実である。

立坑は上から見れば開口、横から見れば深い縦の空間になる。地表側の開口が小さく、内部の規模が外から分かりにくいため、寸法は記録に頼ることになる。

表記は立坑と竪坑の両方が使われる。文化庁の記録では立坑が用いられている。鉱山や炭鉱の遺構でも同じ語が使われるが、そこでは人や資材の昇降路としての意味が中心になる。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)旧中央線笠石洞暗渠/立坑約9メートルと横坑約11メートルからなる矩形断面
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011317
国指定文化財等データベース(文化庁)旧中央線玉野第四隧道/覆工は側壁を煉瓦の長手積とし、笠石などに切石を用いる
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011316

最終更新: 2026.08.31