漆とは
漆は、ウルシの樹液を精製した塗料である。塗り重ねて乾かすと硬く耐久性のある被膜になり、木部を保護するとともに、深い光沢を生む。
堂内の仕上げに用いられる。神奈川県の英勝寺は寛永20年の建立で、重要文化財の解説に「祠堂は方三間宝形造の建物で、内外部ともに漆塗や彩色で飾る」と記されている。
建物全体に及ぶ例もある。岩手県の中尊寺金色堂は天治元年の建立で、国宝の解説に「堂は縁側から軒先に至る内外すべてに黒漆を塗り、金箔を押す」と記されている。漆は金箔の下地としても働く。
仏像でも同じ関係が現れる。東京都の光得寺の厨子入木造大日如来坐像は鎌倉時代の作で、「表面を漆箔で仕上げる」と解説されている。漆箔は漆を塗ってその上に金箔を押す技法を指す。
漆喰との混同を避ける
漆の字を含むが漆喰は別のものである。漆喰は消石灰を主材とする塗り壁材で、樹液である漆とは原料も用途も違う。記録に漆喰塗とあれば壁の仕上げ、漆塗とあれば木部の塗装を指す。
検索でも混同が起きる。漆で検索すると漆喰が大量に混じるため、漆塗、黒漆、漆箔のように語を絞る必要がある。
漆を用いた工芸の技法には、螺鈿、蒔絵、平文などがある。中尊寺金色堂の解説には「内陣の四天柱、長押、組物には豪華な沃懸地螺鈿の宝相華唐草文を飾り、四天柱には蒔絵の菩薩像を描き」と記されており、複数の漆芸技法が併用されている。
現地では表面の光沢を見るとよい。黒く深い艶があり、剥落した部分から木地が見えていれば漆塗である。白く硬い面であれば漆喰にあたる。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)英勝寺/祠堂は方三間宝形造の建物で、内外部ともに漆塗や彩色で飾る
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004634
- 文化遺産オンライン 中尊寺金色堂/堂は縁側から軒先に至る内外すべてに黒漆を塗り、金箔を押す
- https://online.bunka.go.jp/db/heritages/detail/199039
- 文化遺産オンライン 厨子入木造大日如来坐像/光得寺、表面を漆箔で仕上げ、光背は木造で金銅製の紐や花飾を付ける
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/202433
最終更新: 2026.09.10