駅名が変わっても、トンネルは古い字を掲げている
わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルは、群馬県みどり市東町神戸にある大正元年(1912年)竣工の鉄道隧道で、平成21年(2009年)に登録有形文化財となった。神戸駅の西およそ540メートル、単線の軌道が緩やかに湾曲しながら山腹を抜ける。坑道は延長103メートル、覆工の煉瓦は4枚厚で、側壁と坑門には切石を用いる。
「神土」は、いまは使われていない駅名である。旧足尾鉄道と国鉄足尾線の時代、兵庫県の神戸駅との混同を避けるため、この地の駅は地名の神戸を「神土」と書いて「ごうど」と読ませていた。平成元年(1989年)のわたらせ渓谷鐵道開業にあわせて駅名は地名どおりの神戸駅に改められたが、第一・第二の二本のトンネルは古い表記のままである。読みはどちらも変わらず「ごうど」。
昭和29年(1954年)と昭和33年(1958年)には、西の坑門に続けて鉄筋コンクリート造の落石覆20メートルと擁壁7.3メートルが築かれた。これを加えると全長は123メートルになる。
鉱山鉄道の設備が、まとめて文化財になった
路線の始まりは、足尾銅山の鉱石を渡良瀬渓谷から運び下ろすために敷かれた足尾鉄道である。大正元年(1912年)9月に大間々町と神土の間が開業し、同年12月には足尾まで達した。大正7年(1918年)に国有化されて国鉄足尾線となり、昭和48年(1973年)の閉山で貨物と旅客の輸送量はともに落ち込む。廃止対象となった路線を残したのは沿線の運動で、平成元年(1989年)に第三セクターへ引き継がれた。
平成21年(2009年)11月2日、桐生から間藤までの38施設が登録有形文化財となり、告示は同月19日。全線の鉄道施設が2県にまたがって登録された例は全国初である。わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルもその一基で、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。平成28年(2016年)にはこの施設群が土木学会選奨土木遺産に認定された。開業から百年を超えた隧道が今も使われているのは、転換後も列車が走り続けたからにほかならない。
紅葉のころ、対岸から二つの坑口を見る
わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルは、第一神土トンネルの東およそ180メートルにある。神戸駅から桐生方面へ向かう上り列車では、発車から約1分で坑口が見えはじめ、第二を抜けて第一に入るまでがさらに約1分。二本の隧道が短い間隔で続く。
渡良瀬川の対岸には、第二神土トンネルの小中駅側の坑口と神土沢橋梁とを同時に見わたせる場所があり、運行会社は紅葉の季節の撮影地点として案内している。坑口をよく見ると、切石で組んだ大正の坑門と、後年のコンクリートの落石覆とが直接に接している。年代の違う二つの面が、同じ入口で隣り合っている。
神戸駅そのものも大正元年(1912年)の駅舎を残す登録有形文化財で、4月には花桃まつりでにぎわう。
見学方法
わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルは現役の単線区間にあり、軌道敷への立ち入りはできない。見学は神戸駅と小中駅の間を走る列車の車窓からになる。神戸駅は駅舎に「列車のレストラン清流」が入る有人駅で、この区間を往復する起点にしやすい。トロッコ列車は「トロッコわたらせ渓谷号」「トロッコわっしー号」の二本で、いずれも乗車券とは別にトロッコ整理券が必要(2026年9月1日から大人700円、小児350円)。
一日フリーきっぷは大人1,880円、小児940円。桐生から間藤までは44.1キロメートル、片道およそ1時間半である。車内からの撮影に制限はないが、無人航空機による軌道敷と列車の空撮は全面禁止となっている。運行日は公式サイトで確認できる(料金は2026年9月13日時点)。
Q&A
- 駅名は神戸なのに、なぜわたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルというのですか。
- 兵庫県の神戸駅との混同を避けるため、旧国鉄時代の駅名が「神土」と表記されたためです。読みはどちらも「ごうど」で、トンネルは古い表記を残しています。
- わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルの長さは。
- 隧道本体が延長103メートル、西側に続く落石覆20メートルを加えると全長123メートルになります。単線仕様で緩やかに湾曲します。
- わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルはどこから見えますか。
- 神戸駅から桐生方面の列車に乗ると約1分で見えはじめます。渡良瀬川の対岸には、小中駅側の坑口を望める撮影地点があります。
- わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルに落石覆が付いたのはいつですか。
- 昭和29年(1954年)と昭和33年(1958年)の増設です。鉄筋コンクリート造の落石覆20メートルと擁壁7.3メートルが西の坑門に続きます。
- わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネルの近くに同じ名前のトンネルがありますか。
- 第一神土トンネルが西へ約180メートルの位置にあります。列車では第二を抜けてから約1分で第一に入ります。
基本情報
| 名称 | わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネル |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県みどり市東町神戸 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成21年(2009年)登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 延長103メートル、落石覆を含む全長123メートル |
| 所有者 | 文化庁データベースに記載なし。路線はわたらせ渓谷鐵道株式会社が運行 |
| 公開状況 | 非公開。立ち入り不可、車窓から見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/わたらせ渓谷鐵道第二神土トンネル
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007859
- みどり市/第2神土トンネル
- https://www.city.midori.gunma.jp/kosodate/1001647/1001800/1002430/1002483.html
- わたらせ渓谷鐵道株式会社/沿革・歴史
- https://www.watetsu.com/company/history.php
- わたらせ渓谷鐵道株式会社/登録有形文化財パンフレット「車窓の旅 鉄道文化財めぐり」
- https://www.watetsu.com/assets/pdf/sightseeing/culture_yukei_des03.pdf
最終更新日: 2026.09.13