条丁目の角に残る石造の銀行

旧北陸銀行江別支店(きゅうほくりくぎんこうえべつしてん)は、北海道江別市二条二丁目にある大正8年(1919年)建設の石造2階建の建築で、平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。JR江別駅から数百メートル、条丁目地区の角地に建つ。

建物より先に、銀行のほうが江別に来ていた。北陸銀行が自行の江別支店について記すところでは、営業の始まりは大正2年(1913年)4月、富山の十二銀行が札幌支店の派出所をこの地に置いたときにさかのぼる。それから6年後、会社は仮住まいをやめて石の建物を建てた。角に残っているのがそれである。

その後の経緯は江別市の資料に整理されている。昭和9年(1934年)に支店へ昇格して十二銀行江別支店と改称。昭和18年(1943年)、富山の銀行合併に伴って北陸銀行江別支店となった。銀行としての営業は昭和41年(1966年)の支店移転まで続いた。金勘定をしていた期間は、およそ半世紀にわたる。

この半世紀がどこで過ぎたかが重要になる。鉄道網が密になる前の江別は石狩川の舟運の結節点で、この一帯の条丁目地区が町の商業の中心だった。江別に初めて置かれた金融機関がここに構えられたのは、川の荷、煉瓦、農地から生まれる金が、置き場所を必要としはじめた時期にあたる。

登録理由は「造形の規範」

文化庁がこの建物に適用した登録基準は「造形の規範となっているもの」である。希少性でも由緒でもなく、かたちが評価された。その理由は歩道からでも読み取れる。

外観が真似ているのは土蔵である。地方の支店銀行が全国で土蔵造風の意匠を採ったのは、説明を要せずに必要なことを伝えられたからだった。火は入らない、盗人も入らない、預けた金は無事である。切妻造で平入とし、正面に下屋庇とポーチを設ける構えも、蔵の手法をカウンターと客の列のほうへ向け直したものといえる。

和の外皮に洋の骨組み

視線を屋根へ移すと様子が変わる。国のデータベースは小屋組をキングポストトラスと記録している。明治期に日本の大工が取り入れたヨーロッパ由来の架構である。江別市によれば内部には鉄製の建具が使われている。輪郭は和風、骨格は洋風。大正8年の地方銀行そのものの姿でもある。外来の制度が、預金者に信用されるために土地の衣をまとっていた。

数字で意外に思われるのは面積のほうだ。建築面積は57平方メートル。集合住宅の一戸より狭い。当時の支店銀行に要ったのはカウンターと金庫と事務室くらいで、残りの容積は2階に積み上げて確保している。

見るべきところ

角地なので、敷地に立ち入らずとも三方から外観を確かめられる。二つの通りに面した側を歩き比べると違いがはっきりする。玄関のある面は客に読ませるために設計されており、側面はそうではない。

石であることには立ち止まる価値がある。江別の名は煉瓦で通っている。明治24年(1891年)に粘土の焼成が始まり、以後この街は北海道の窯業の中心となった。江別で組積造といえば普通は煉瓦になる。それがここでは切石で、選択は意図的に見える。重く、静かで、金庫に近い。

博物館ではない。長く飲食店として使われてきた建物で、それが今日まで残った理由でもあり、内部が一般公開されていない理由でもある。中を見たい場合は、記念物ではなく店を訪ねるつもりで考えたほうがよい。その日営業しているかを確かめ、屋内での撮影は先に断りを入れる。外観は時間を問わず通りから眺められ、見るだけなら料金はかからない。

行き方は簡単である。JR函館本線の江別駅は札幌から普通列車でおよそ30分。建物は駅から線路と並行する通りを歩いて数分の距離にある。江別市内には、旧肥田製陶工場を転用したEBRIや北海道林木育種場旧庁舎など登録文化財が他にもあるので、半日の街歩きに組み込みやすい。

Q&A

Q旧北陸銀行江別支店はどこにありますか。行き方は?
A北海道江別市二条2-6です。JR函館本線の普通列車で札幌からおよそ30分の江別駅で下車し、線路と並行する通りを川の方向へ数分歩きます。角地に建つので見つけやすい建物です。
Q旧北陸銀行江別支店の内部を見学できますか。
A見学会や資料展示の設けはありません。内部は飲食店として使われてきたため、その店が営業しているかどうか、客として入るかどうかに左右されます。テナントや営業日は変わりうるので、訪問前に現在の営業状況を確認してください。
Q旧北陸銀行江別支店の見学に料金はかかりますか。
Aかかりません。公道に面した現役の建物で、有料施設ではありません。歩道から外観を眺めたり撮影したりするのに費用も予約も不要です。屋内の撮影は使用者の判断になりますので、必ず先に確認してください。
Q旧北陸銀行江別支店はいつ建てられ、いつまで銀行だったのですか。
A文化庁のデータベースは建築年を大正8年(1919年)としています。銀行としての営業は昭和41年(1966年)まで。その間に十二銀行の営業所、昭和9年から十二銀行江別支店、昭和18年から北陸銀行江別支店と、三つの名を経ています。
Q旧北陸銀行江別支店は北海道の他の近代建築と比べて何が特徴ですか。
A二点あります。江別に初めて置かれた金融機関の建物であり、街が石狩川の舟運で栄えた時期に直結していること。もう一点は建築面積57平方メートルという小ささで、1910年代の地方支店銀行の実寸がよくわかります。後の銀行建築が失った尺度です。

基本情報

名称旧北陸銀行江別支店(きゅうほくりくぎんこうえべつしてん)
所在地北海道江別市二条2-6
指定区分国登録有形文化財(建造物)/登録番号 01-0048/登録基準「造形の規範となっているもの」
指定年登録年月日 平成14年(2002年)2月14日/登録告示 同年3月12日
員数1棟
寸法石造2階建、鉄板葺、建築面積約57平方メートル、小屋組はキングポストトラス
所有者国のデータベースに記載なし(民間所有)
公開状況外観は通りから随時無料で見学可。内部は飲食店として使用されており、立ち入りは営業状況による

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 旧北陸銀行江別支店
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002576
文化遺産オンライン — 旧北陸銀行江別支店
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/178796
江別市 — 国登録有形文化財
https://www.city.ebetsu.hokkaido.jp/site/kyouiku/2923.html
江別市 — 江別市内の指定文化財・登録文化財
https://www.city.ebetsu.hokkaido.jp/site/kyouiku/2920.html
北陸銀行 — 江別支店
https://www.hokugin.co.jp/branch/detail/156/

最終更新日: 2026.08.27