不要な石を運び出すための七連アーチ 高松ズリ捨線拱橋

多くの橋は、人や物をどこか役に立つ場所へ運ぶために架けられる。この橋は逆に、炭鉱が必要としなかった部分を運び去るために築かれた。夕張の天龍坑坑口から南東へ約四百三十メートルの地点を横切る高松ズリ捨線の拱橋は、かつて掘り出された不要な岩石を市内最大のズリ山へと運ぶ軌道を支えていた。半円形のコンクリート製アーチが七つ、一定の律動で地表をまたいでいく。各アーチのスパンは六メートル、橋全体の長さは五十九メートル、幅員は八・六メートルと広い。

この橋が扱った不要物には、鉱業の現場で「ズリ」という呼び名がある。石炭を切り出した後、また鉱石を洗い選り分けた後に残る、砕けた岩石や使えない物のことだ。稼働中の炭鉱はこれを膨大な量で生み出すため、その処理そのものが一つの大きな課題だった。北海道炭礦汽船(北炭)は高松に総延長およそ八百メートルの専用のズリ捨線を設け、ズリを坑から遠ざけて運んだ。この拱橋は、その路線の一つの区間だった。

働く構造物が景観のなかで認められた経緯

この橋は平成十八年(二〇〇六年)十月十八日、登録番号01-0074として登録有形文化財に登録された。近隣の坑口や隧道とともにまとめて登録された一群の一つである。築造は昭和二十六年(一九五一年)で、夕張の石炭が戦後の最盛期を迎えていた時期にあたる。当時、炭田は年に百万トンをはるかに超える出炭を続けており、採掘の機構に合わせて処理の機構も歩みをそろえる必要があった。登録上は産業二次の土木構造物に分類され、保護の理由として「国土の歴史的景観に寄与しているもの」が挙げられている。

その景観への寄与は現地に立てば見てとれる。この路線が運んだズリは積み上がって高松のズリ山となった。夕張で最大のズリ山であり、鉱業廃棄物が形をなした人工の丘として、古くから絵画や写真の題材として親しまれてきた。拱橋は、その人工の山に対する人の手の側の対応物として読める。一方の構造物が石を運び、もう一方がその石そのものであり、両者を合わせて見ると、一つの炭田が稼働のうちに捨てていく物量の大きさが立ち上がってくる。

訪ねたときに読み解きたい点

側面から近づいて、アーチの数を数えてみたい。同じ半円が七つ繰り返される姿がこの橋の特徴であり、古い時代の煉瓦造や石造のアーチ列ではなく、鉄筋コンクリートで築かれた高架のような律動を見せる。各開口のスパン六メートルは控えめで、それゆえ全体は低く地に寄り添い、たどるべき地形の起伏に沿っている。

この橋は、ズリ捨線の他の現存遺構からも徒歩圏内にある。スキップ隧道は東へ約百四十メートル、ベルト隧道の坑門は西へ約五百メートルの位置にあり、三つを合わせれば、ズリ山へ向かう廃石の道筋をたどることができる。単独で見れば見ごたえのあるコンクリートのアーチ列だが、路線の一部として見ると、坑を稼働させ続ける地味で不可欠な仕事をめぐる、より長い物語の一章となる。

Q&A

Q「ズリ」とは何で、なぜ専用の軌道が必要だったのですか。
A石炭の採掘や選鉱の後に残る、砕けた岩石や使えない物のことです。炭鉱は大量に生み出すため、北炭は高松に総延長約八百メートルの専用ズリ捨線を設け、ズリ山へ運び出しました。
Q橋の規模はどれくらいですか。
A長さ五十九メートル、幅員八・六メートルで、半円形の鉄筋コンクリート造アーチ七連に支えられています。各アーチのスパンは六メートルです。
Q運び先となったズリ山とは何ですか。
Aこの路線が運んだ廃石が積み上がってできた高松のズリ山で、夕張市内で最大です。地域では古くから絵画や写真の題材として親しまれてきました。
Qいつ築かれ、いつ登録されたのですか。
A昭和二十六年(一九五一年)の築造で、平成十八年十月十八日に登録番号01-0074として国の登録有形文化財に登録されました。
Q近くにズリ捨線の遺構は他にありますか。
A東へ約百四十メートルにスキップ隧道、西へ約五百メートルにベルト隧道西坑門が残り、廃石の通った道筋をたどることができます。

基本情報

名称旧北炭夕張炭鉱高松ズリ捨線拱橋
所在地北海道夕張市高松
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録年月日 平成十八年十月十八日 登録番号 01-0074
年代昭和二十六年(一九五一年)
構造鉄筋コンクリート造七連アーチ橋 橋長五十九メートル、幅員八・六メートル 各アーチは半円形、スパン六メートル
員数一基
公開状況高松地区の屋外遺構。現地の最新情報を確認のこと

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005708
文化遺産オンライン(国立文化財機構)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/181926
夕張市の国指定登録有形文化財(夕張市)
https://www.city.yubari.lg.jp/soshiki/14/1706.html

最終更新日: 2026.06.25