コンベアのために築かれたコンクリートの口 ベルト隧道西坑門
夕張・高松ズリ捨線の現存遺構のなかで、これは構造物全体ではなく、その一部にあたる。残されて保護を受けているのはベルト隧道の西坑門、すなわちかつて移動するコンベアベルトを収めていた隧道の西端のコンクリート製の枠である。坑門は幅八・九メートル、高さ三・三メートルで、その奥の隧道そのものは直径約二・五メートルの半円アーチ断面で掘られていた。
名がその働きを言い表している。東方のスキップ隧道が転動する鉄製の車を通したのに対し、この隧道はベルトコンベアを収めていた。連続して動く帯が、一台ずつの車のような発進と停止を伴わずに、丘を貫いて廃石を運んだのである。ある区間はコンベア、別の区間はスキップ車という使い分けは、地形に合わせて方式を組み合わせた仕組みを示している。残された坑門は、ベルトが地中へ入っていく目に見える敷居である。
保護に値する一つの坑門
ベルト隧道西坑門は平成十八年(二〇〇六年)十月十八日、登録番号01-0076として国の登録有形文化財に加わった。ズリ捨線の拱橋やスキップ隧道を保護したのと同じ登録に含まれる。築造は昭和二十六年(一九五一年)で、産業二次の土木構造物として登録され、保護の理由は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」とされる。完成した橋や建物ではなく一つの坑門が保護に値すると判断された点は、この遺産がどのように評価されているかをよく示す一例である。現存する各部分は働く仕組みの一部として読まれ、敷居一つでも全体を代表しうるのである。
この構造物は社光地区に位置し、仲間の遺構からやや離れて、七連の拱橋から西へ約五百メートルの場所にある。高松ズリ捨線は総延長およそ八百メートルにわたり、ベルトコンベアとスキップ車の双方を用いて、夕張市内最大のズリ山へ廃石を運び出した。路線は昭和五十二年(一九七七年)の閉山まで稼働し、その頃には積み上がったズリ山が地元の景観を圧していた。
見ておきたい点
規模の対比に注目したい。坑門の正面は幅八・九メートルと広く堅固だが、そこに枠取られる開口は直径約二・五メートルの控えめな半円である。この差は、坑門が単に隧道の口を縁取るためでなく、斜面を受け止めて隧道の口を固定するために築かれたことを教えてくれる。コンクリートは装飾を排して角ばっており、装飾的なものというより二十世紀半ばの工業的な仕事の質感を備えている。
坑門が拱橋やスキップ隧道からやや離れて立つため、そこへ足を運ぶことで、ズリ捨線が一点ではなく地形を貫く一筋の経路であった姿が完成する。他の二つの現存遺構と合わせれば、三つで廃石の運ばれ方が読みとれる。地表ではアーチの上を渡り、丘の中ではここでコンベア、あちらでスキップ車に乗り、最後に今も高松の地平線を刻むズリ山の上へと積み上げられたのである。
Q&A
- なぜ隧道全体ではなく坑門だけが保護されているのですか。
- 西坑門が現存する登録対象です。ズリ捨線という働く仕組みの一部として評価されており、残る各部分は、坑門一つであっても全体の操業を代表するものとして読まれます。
- ベルト隧道には何が通っていたのですか。
- ベルトコンベアです。連続して動く帯が丘を貫いて廃石を運び、これが名の由来です。近くのスキップ隧道は鉄製の車を通しました。
- 坑門の規模はどれくらいですか。
- コンクリート造の坑門は幅八・九メートル、高さ三・三メートルです。枠取る隧道の開口は直径約二・五メートルの半円断面です。
- 他のズリ捨線の遺構との位置関係は。
- 社光地区にあり、七連の拱橋から西へ約五百メートルの位置です。拱橋やスキップ隧道からはやや離れて立っています。
- いつ築かれ、いつ登録されたのですか。
- 昭和二十六年(一九五一年)の築造で、平成十八年十月十八日に登録番号01-0076として国の登録有形文化財に登録されました。
基本情報
| 名称 | 旧北炭夕張炭鉱高松ズリ捨線ベルト隧道西坑門 |
|---|---|
| 所在地 | 北海道夕張市社光 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録年月日 平成十八年十月十八日 登録番号 01-0076 |
| 年代 | 昭和二十六年(一九五一年) |
| 構造 | 隧道西端のコンクリート造坑門 幅八・九メートル、高さ三・三メートル 隧道は直径約二・五メートルの半円アーチ断面 |
| 員数 | 一基 |
| 公開状況 | 社光地区の屋外遺構。現地の最新情報を確認のこと |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005716
- 夕張市の国指定登録有形文化財(夕張市)
- https://www.city.yubari.lg.jp/soshiki/14/1706.html
- 夕張市石炭博物館
- https://coal-yubari.jp/
最終更新日: 2026.06.25