坂の途中に建つ煉瓦造の聖堂
函館ハリストス正教会復活聖堂は、北海道函館市元町にある煉瓦造の正教会聖堂で、大正5年(1916年)に竣工し、昭和58年(1983年)6月2日に国の重要文化財に指定された。正式には主の復活聖堂と呼ばれ、市民には鐘の音から「ガンガン寺」の愛称で親しまれている。
この場所に聖堂が建ったのは万延元年(1860年)である。前年、初代ロシア領事ゴシケヴィッチが敷地を確保し、翌年に領事館付属聖堂が建てられた。文久元年(1861年)に来函した青年司祭ニコライはこの聖堂を拠点に日本で最初の正教伝道を始めている。初代聖堂は明治40年(1907年)の函館大火で焼失し、9年後に再建されたのが現在の建物である。
規模は大きくない。国指定文化財等データベースは建築面積150.9平方メートル、一階建、正面八角塔屋付、銅板葺と記録する。港側から坂を上って近づくと、まず感じるのは威圧感ではなく密度の高さだろう。小さな床面積の上に六つのクーポルと鐘塔が集まっているため、数歩あるくだけで輪郭の見え方が変わる。
指定の理由と建築的な位置づけ
文化庁の解説は三点を挙げている。日本ハリストス正教会発祥の地に建つ教会堂であること。小規模ながら正教会聖堂の標準的な構成をとる、数少ない煉瓦造の本格建築であること。そしてロシア、ビザンチン様式を基本とした変化に富む外観が意匠的に優れていること。
設計は河村伊蔵。正教会の輔祭であり、各地の教会堂を手がけた人物である。世俗の建築家ではなく信仰の実践者が図面を引いた点はこの建物の性格を決めている。祈りの手順が内部の配置に直接反映されており、文化庁も正教会聖堂の代表的建築として価値が高いと評価している。
指定範囲には附(つけたり)として二件が含まれる。ひとつは聖障1基。至聖所と聖堂内部を隔てるイコンの壁である。もうひとつは正門1棟。門をくぐる人の多くは気づかないが、この門も聖堂本体と同じ保護を受けている。
訪れたときに見ておきたいところ
まず屋根を見上げたい。上部には六つのクーポルが載り、それぞれに十字架が据えられている。横木が二本と斜めの一本を持つロシア十字で、西方教会の十字架を見慣れた目には形が違って映る。正面玄関の上にそびえるのが八角形の鐘塔で、現在掛かっている鐘は5代目にあたる。平成8年(1996年)には環境庁の「日本の音風景100選」に認定された。
この鐘は時報ではない。祈りの初めと終わりに鳴らされる。実際には土曜夕方5時からの徹夜祷、日曜午前の聖体礼儀などがその機会にあたり、1回あたり3分から5分ほど、函館山の麓一帯に響く。
色の対比も大きな見どころだ。煉瓦の壁を白い漆喰で仕上げ、その上に緑青銅板の屋根が載る。この二つの面は2021年初めから2022年末にかけての大規模な保存修理工事で全面的に手が入った。長年の雨風で剥落していた漆喰は塗り直され、退色していた屋根は緑青銅板に葺き替えられている。工事直後の屋根は以前より鮮やかな青緑で、年月とともに落ち着いていく。前回の保存修理は1986年から1989年にかけて行われた。
聖堂内の一般公開は2023年春に再開した。拝観時間は月曜から金曜が午前10時から午後5時まで、ただし11月・12月・3月は午後4時まで。土曜は午前10時から午後4時、日曜は午後1時から午後4時である。拝観献金は大人200円、中学生100円で、小学生以下は無料。文化財である聖堂の維持に充てられる。祈りの時間には信仰の有無を問わず誰でも参祷・見学ができる。
戸惑いやすい点が二つある。冬期は祈り以外の聖堂拝観が休止されること。そして教会の許可なく聖堂内部を撮影することはできず、敷地内での取材・撮影も同様に控えるよう求められていることである。外観を公道から撮る分には差し支えない。
行き方は市電の十字街電停から徒歩約10分。坂道が続く。駐車場は用意されていないため、車の場合は周辺の有料駐車場から歩くことになる。坂を上りきればカトリック元町教会や函館聖ヨハネ教会も徒歩圏内で、急坂のチャチャ登りからは屋根越しに港を見下ろす構図が開ける。
Q&A
- 函館ハリストス正教会復活聖堂は拝観できますか。時間と献金額は?
- 拝観できます。月曜から金曜は午前10時から午後5時まで(11月・12月・3月は午後4時まで)、土曜は午前10時から午後4時、日曜は午後1時から午後4時です。拝観献金は大人200円、中学生100円、小学生以下は無料で、聖堂の維持に用いられます。
- 函館ハリストス正教会復活聖堂に拝観できない時期はありますか?
- 冬期は祈り以外の聖堂拝観が休止されます。教会公式サイトは12月25日から2月末までとしていますが、観光情報サイトには再開日をより遅く記載するものもあるため、冬に訪れる場合は事前に教会へ確認するのが確実です。教会行事や葬儀の都合で予告なく中止となることもあります。
- 函館ハリストス正教会復活聖堂の写真撮影はできますか?
- 聖堂内部の撮影は教会の許可が必要で、敷地内での取材・撮影も同様です。テレビ・新聞・雑誌などの取材は、企画書を添えて教会宛にメールで依頼する手順になっています。周囲の道路からの外観撮影は通常どおり行われています。
- 函館ハリストス正教会復活聖堂へのアクセスは?
- 函館市電の十字街電停で下車し、元町方面へ坂を上って徒歩約10分です。教会に来訪者用の駐車場はないため、車の場合は周辺の有料駐車場を利用して歩くことになります。
- 函館ハリストス正教会復活聖堂のお祈りには誰でも参加できますか?
- 参祷できます。土曜午後5時からの主日前晩祷、日曜午前10時からの主日聖体礼儀はどなたでも参祷・見学が可能です。ただし拝観のための時間ではなく祈りの場ですので、静かに出入りしてください。
- 函館ハリストス正教会復活聖堂の指定範囲には何が含まれますか?
- 聖堂本体に加え、内部の聖障1基と正門1棟が附(つけたり)として同じ重要文化財指定に含まれます。門をくぐる際に見上げると、簡素ながら聖堂と一体で設計された造りが分かります。
基本データ
| 名称 | 函館ハリストス正教会復活聖堂(はこだてはりすとすせいきょうかいふっかつせいどう) |
|---|---|
| 所在地 | 北海道函館市元町3番13号 |
| 指定区分 | 重要文化財(近代/宗教) |
| 指定年 | 昭和58年(1983年)6月2日 |
| 員数 | 1棟(附:聖障1基、正門1棟) |
| 寸法 | 煉瓦造、建築面積150.9平方メートル、一階建、正面八角塔屋付、銅板葺/大正5年(1916年) |
| 所有者 | 函館ハリストス正教会 |
| 公開状況 | 冬期休止を除き聖堂内拝観可。月~金10:00~17:00(11・12・3月は16:00まで)、土10:00~16:00、日13:00~16:00。拝観献金 大人200円、中学生100円 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/函館ハリストス正教会復活聖堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/21
- 文化遺産オンライン/函館ハリストス正教会復活聖堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/145221
- 函館ハリストス正教会 公式サイト/祈祷・拝観案内
- https://www.orthodox-hakodate.jp/services
- はこぶら(函館市公式観光情報サイト)/函館ハリストス正教会
- https://www.hakobura.jp/spots/524
最終更新日: 2026.08.27