企業の別邸から道民の公館へ
北海道知事公館(旧三井クラブ)は、札幌市中央区北1条西16丁目の緑地に建つ昭和11年(1936年)建築のハーフティンバー様式の洋館で、平成11年(1999年)10月14日に国の登録有形文化財に登録された。
三井とこの土地の関わりは大正4年(1915年)にさかのぼる。三井合名会社が桑園だった土地と、元開拓使の森源三の私邸を購入し、増改築して「三井札幌別邸」とした。以後、北海道における三井関係8社の共同倶楽部として貸与され、賓客の応接に使われる。「旧三井クラブ」という別称はここから来ている。現在登録されている建物は、この別邸に昭和11年12月に建てられた新館にあたる。
昭和28年(1953年)に北海道が取得し、以来、知事公館として使われてきた。現在も会議や行事の場であり続けており、公開の条件がやや変則的なのはそのためである。
外観をどう見るか
登録番号は01-0014、登録基準は「造形の規範となっているもの」。構造は鉄筋コンクリート・木造2階建、銅板葺、建築面積392平方メートル。敷地は約5.6ヘクタールに及ぶ。
ハーフティンバーが最も目につく特徴だろう。白い壁面に濃い色の木材を露出させる北欧由来の手法で、大正から昭和初期の日本の郊外住宅や別邸建築で広く採り入れられた。積雪と長い冬に建て方を規定される札幌では、この様式は「北の建物らしさ」としても受け止められたと思われる。
南北の切妻部を見比べてほしい。二つの妻面には異なる意匠が施され、どちらも左右対称ではない。それでいて全体はまとまって見える。正面入口の上部では2階が1階より手前に張り出し、その張り出しに大きな出窓が据えられ、上部を四葉の飾りが締めている。最も多く撮影される細部で、歩きながら構えるより、いったん立ち止まって見上げたほうがよい。
色の効き方も大きい。白壁に対する赤茶の木部、その上の銅板。夏には濃い緑が、冬には雪の白が、まわり全体を占める。
館内と、建物を囲む土地
館内は無料で公開されている。天井が高く、部屋の寸法にゆとりがあり、シャンデリアをはじめとする照明器具は当時のものが残る。1階と2階にそれぞれ趣の異なる応接室があり、現在最も頻繁に使われている1階の応接室は広い二重窓が特徴で、窓から庭園が見渡せる。この眺めを楽しんでもらうため、公館では入口に近い側の席を上座として来客を案内している。
庭園は訪問のもう半分であり、札幌の住民にとってはこちらが主役かもしれない。敷地の一部は環境緑地保護地区として保護されている。地面は緩やかに起伏し、札幌扇状地の原地形面がほぼそのまま残されたものと考えられている。古地図によれば、かつて敷地内には湧き水(メム)があり、その水は小川となって北へ流れ出していた。都市開発でメムは枯れたが、現在は人工的に水を流して往時の流路が再現されている。構内には1000年以上前の竪穴住居跡も残る。
春は桜、秋は紅葉、そして通年でエゾリスが樹上に暮らす。野外彫刻もある。安田侃の白大理石『意心帰』、流政之の『サキモリ2000』『サキモリ2002』、そして開拓使として麦酒醸造所を興した村橋久成の胸像『残響』。この胸像が置かれている前庭は、村橋が製糸業のために桑を植えさせた土地の跡にあたる。
実用情報はここでは普段以上に重要になる。現役の公館だからである。公館の開館時間は9時から17時、閉館日は土曜・日曜・祝日と年末年始(12月29日〜1月3日)。入館は無料で、個人の見学に申込は不要だが、おおむね10名以上の団体は事前に公館へ連絡する必要がある。行事や公務で見学できない日もあるため、出向く前に一報を入れておくのが確実だ。
庭園は別の暦で動く。開放期間は4月下旬から11月30日まで、土日・祝日を含む。時間は4月下旬から9月30日が8時45分〜17時30分、10月1日から10月31日が8時45分〜17時、11月1日から11月30日が8時45分〜16時。12月1日から4月下旬までは閉園となる。積雪で園路が使えないためである。
駐車場はない。最寄りは地下鉄東西線・西18丁目駅で、4番出口から徒歩約5分。バスなら「道立近代美術館」下車で徒歩1分。北海道立近代美術館と北海道立三岸好太郎美術館がすぐ隣接しているので、半日の散策コースが組みやすい一角である。
Q&A
- 北海道知事公館の館内は見学できますか。料金はかかりますか。
- 見学できます。入館は無料で、開館時間は9時から17時。閉館日は土曜・日曜・祝日および12月29日から1月3日です。個人は申込不要ですが、おおむね10名以上の団体は事前に公館へ連絡してください。行事や公務で見学できない場合があります。
- 北海道知事公館の庭園はいつ開放されていますか。
- 4月下旬から11月30日まで、土日・祝日を含めて開放されます。時間は4月下旬〜9月30日が8時45分〜17時30分、10月中が8時45分〜17時、11月中が8時45分〜16時。12月1日から4月下旬までは閉園です。
- 北海道知事公館はなぜ「旧三井クラブ」とも呼ばれるのですか。
- 大正4年に三井合名会社がこの土地を購入して「三井札幌別邸」とし、道内の三井関係8社の共同倶楽部として使わせたためです。現在の建物は昭和11年に別邸の新館として建てられたもので、昭和28年に北海道が取得しました。
- 北海道知事公館へのアクセスと駐車場について教えてください。
- 地下鉄東西線・西18丁目駅の4番出口から徒歩約5分、またはバス「道立近代美術館」から徒歩1分です。敷地内に駐車場はないため、車で訪れる場合は周辺の有料駐車場を利用してください。
- 北海道知事公館の敷地では何を見ておくとよいですか。
- 正面入口上部の四葉飾りのある出窓、意匠の異なる南北の切妻部、そして庭園では野外彫刻、1000年以上前の竪穴住居跡、かつての湧き水の流路を再現した水路、樹上に暮らすエゾリスです。
基本情報
| 名称 | 北海道知事公館(旧三井クラブ) |
|---|---|
| 所在地 | 北海道札幌市中央区北1条西16丁目 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 01-0014 |
| 指定年 | 平成11年(1999年)10月14日登録/同年10月28日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート・木造2階建、銅板葺、建築面積392平方メートル(敷地約5.6ヘクタール) |
| 所有者 | 北海道 |
| 公開状況 | 公館は9時〜17時、無料。土日祝と12月29日〜1月3日は閉館。庭園は4月下旬〜11月30日開放(時期により時間が異なる) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「北海道知事公館(旧三井クラブ)」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001323
- 文化遺産オンライン「北海道知事公館(旧三井クラブ)」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/181233
- 北海道 総合政策部知事室秘書課「北海道知事公館のページ」
- https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tsh/koukan/72978.html
- 北海道 総合政策部知事室秘書課「映像・写真で見る知事公館」
- https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tsh/koukan/pic.html
- 札幌観光協会 ようこそさっぽろ「北海道知事公館」
- https://www.sapporo.travel/spot/facility/governors_official_residence/
最終更新日: 2026.08.27