札幌の雪に合わせて建てられた宣教師の住まい
北星学園創立百周年記念館(旧北星女学校宣教師館)は、札幌市中央区南4条西17丁目にある大正15年(1926年)竣工の木造3階建洋風建築で、平成10年(1998年)に国の登録有形文化財に登録された。
建物は小さい。建築面積は175平方メートル。3階建としては控えめな規模で、しかも大通りに面してはおらず、学校の敷地の中に建っている。通りから目に入るのは屋根である。急勾配で1階の窓の高さ近くまで下り、軒先で外へ反り返る。からし色の外壁、緑の窓枠、緑の屋根。学園の生徒たちは古くからこの建物を「かぼちゃ館」と呼んできた。
屋根の勾配は装飾ではない。この角度なら雪は積もらずに滑り落ちる。札幌の年間降雪量は平年で5メートル前後に達する。南面に大きく取られた窓のほうは、北国のもう一つの条件、つまり冬の日照時間の短さに対する答えである。
二人の外国人建築家と一軒の家
文化庁の記録は、基本設計を米国人建築家ヴォーリズ、実施設計を札幌在住のスイス人建築家ヒンデルとしている。ただし北星学園自身の説明はヒンデルの設計として記述し、ヴォーリズの名を挙げていない。設計の分担については確定した話とせず、幅を持たせて受け取るのが適当だろう。
ヴォーリズは近江八幡を拠点に、プロテスタント系ミッションの建築を全国で数多く手がけた人物である。この土地により深く関わったのはヒンデルのほうだ。札幌に滞在した3年半ほどの間に20棟ほどを設計し、ヨーロッパ山岳部の構法を北海道の積雪条件に読み替えていった。反りのある急勾配屋根、深い軒、防寒のために木部の外に張った鉄板。その仕事の大半は現存しない。この建物を除けば、札幌市内で残るヒンデル設計の建築は北海道大学が所有する山小屋2棟だけである。
竣工は大正15年12月。米国のミッションから派遣された女性宣教師の住居として建てられた。北星学園の出発点は明治20年(1887年)、サラ・C・スミスが札幌に女学校を開いたことにさかのぼる。ただしスミス自身はここに住んでいない。この頃すでに学校運営をA・M・モンク校長に委ねており、最初の居住者はモンク校長であったといわれる。
その後の歩みは、そのまま近代日本の百年に重なる。太平洋戦争開戦の年、宣教師たちが帰国したあと、建物は音楽室になった。終戦とともに宣教師が戻り、再び住居として使われた。昭和35年(1960年)には女子中高の校舎建築にともなって敷地内を北へ移され、以後は短期大学の研究室、図書室、クラブ室として使われた。この時点で、住居とするには老朽化が進みすぎていた。
百周年の修復と、館内で見られるもの
昭和62年(1987年)、学園は創立百周年記念事業としてこの建物を移転・改修することを決め、平成元年(1989年)に修復工事が行われた。建物は中庭の中央に据えられ、色も創建時のものに戻された。からし色の壁と緑の建具は、大正15年当時の配色を根拠に再現されたものである。現在の館名はこの事業に由来する。
評価は段階的に重なっていった。昭和63年(1988年)に札幌市の「ふるさと文化百選」、平成10年(1998年)に国の登録有形文化財、平成17年(2005年)3月に都市景観重要建築物等の指定、同年10月に第12回札幌市都市景観賞。
館内は当時の間取りを残しており、宣教師が暮らしていた時代の調度品と、学園史の資料が展示されている。日本のプロテスタント系女子教育に関心のある人にとっては、この建物の住宅としての寸法そのものが資料になる。施設然とした校舎ではなく、あくまで一軒の家である。入居した当時、札幌という街自体がまだ開府50年ほどの若い都市だった。
公開は季節と曜日が限られる。開館期間は4月から10月まで、開館日は月・水・金曜日(祝祭日は休館)、時間は12時から17時まで。11月から3月は休館で、この間の問い合わせは北星学園総務課が受け付けている。アクセスは地下鉄東西線西18丁目駅2番出口から南へ徒歩約7分。女子中学高等学校の敷地内にあるため、撮影は建物に限り、校内の様子は写さないよう配慮したい。館内撮影の可否は入口で確認を。
Q&A
- 北星学園創立百周年記念館は見学できますか。開館日はいつですか。
- 見学できます。開館期間は4月から10月、開館日は月・水・金曜日で、時間は12時から17時まで。祝祭日は休館です。11月から3月は休館となります。過去に閉館していた時期もあるため、訪問前に北星学園へ開館状況をご確認ください。
- 北星学園創立百周年記念館へのアクセスを教えてください。
- 地下鉄東西線の西18丁目駅で下車し、2番出口から南へ徒歩約7分です。市電の西線6条停留場も近くにあります。札幌市中央区、北星学園女子中学高等学校の敷地内に建っています。
- 北星学園創立百周年記念館を設計したのは誰ですか。
- 文化庁の記録では基本設計がウィリアム・メレル・ヴォーリズ、実施設計がスイス人建築家マックス・ヒンデルとされています。北星学園の公式説明はヒンデルの設計としています。いずれの記述でも、大正15年(1926年)の竣工までを担ったのはヒンデルです。
- 北星学園創立百周年記念館はなぜ「かぼちゃ館」と呼ばれるのですか。
- からし色の外壁に緑の屋根という配色に由来する通称です。この色は平成元年(1989年)の修復で創建時の配色として再現されました。学園の生徒の間で長く使われてきた呼び名です。
- 北星学園創立百周年記念館の館内には何が展示されていますか。
- 当時の間取りを活かした展示室に、宣教師が住んでいた時代の調度品と学園史の資料が並びます。建物は小規模で、見学は1時間かからない程度です。
- 北星学園創立百周年記念館の見学に料金はかかりますか。
- 学園の歴史と建学の精神を学ぶ場として市民に開放されている、と学園は説明しています。料金の有無や団体見学の扱いなど、現行の取り扱いについては北星学園総務課へ直接お問い合わせください。
基本データ
| 名称 | 北星学園創立百周年記念館(旧北星女学校宣教師館) |
|---|---|
| 所在地 | 北海道札幌市中央区南4条西17-1319-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 01-0007 |
| 指定年 | 平成10年(1998年)9月2日登録・同年9月25日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造3階建、鋼板葺、建築面積175平方メートル |
| 所有者 | 学校法人北星学園 |
| 公開状況 | 4月〜10月の月・水・金曜日12時〜17時(祝祭日休館)。11月〜3月は休館 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/北星学園創立百周年記念館(旧北星女学校宣教師館)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000719
- 文化遺産オンライン/北星学園創立百周年記念館(旧北星女学校宣教師館)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/191719
- 学校法人北星学園/創立百周年記念館について
- https://houjin.hokusei.ac.jp/hall/
- 札幌市/文化財詳細
- https://www.city.sapporo.jp/ncms/shimin/bunkazai/bunkazai/syousai/38s_hokusei.html
最終更新日: 2026.08.27