小樽港へ正面を向けて建つ昭和9年の駅舎

JR小樽駅本屋は、北海道小樽市稲穂2-22-15にある昭和9年(1934年)竣工の鉄筋コンクリート造駅舎で、平成18年(2006年)3月27日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

「本屋」という語は、書店の意味で読むと行き違いが起きる。鉄道の用語では駅の中心となる建物、すなわち改札やコンコース、事務室をおさめた部分を指し、プラットホームや上屋、信号扱所などと区別して使う。登録の対象は、この1棟である。

小樽駅の駅舎としては三代目にあたる。開業は明治36年(1903年)で、当初の駅名は「小樽中央停車場」。大正9年(1920年)に「小樽駅」となり、現在の建物は昭和9年に完成した。当時の小樽は鰊と石炭、そしてそれを支えた金融の集まる港町で、駅前の通りには銀行の建物が並んでいた。

正面の中央通りに立つと、この駅の平面計画が読み取れる。建物は海に向かって建ち、背後の地盤は上がっていく。線路は築堤の上、ちょうど2階に相当する高さを走る。乗客は地上階から入って改札を抜け、階段を上ってホームに出る。急な傾斜地を逆手に取った構成で、同時期の駅舎のなかでも例が少ない。

登録の理由と、記録に残された仕様

文化庁の国指定文化財等データベースは、登録番号01-0067、第50回登録として本屋を掲載する。登録基準は「造形の規範となっているもの」。登録年月日は平成18年3月27日、登録告示は同年4月12日である。背後のプラットホームは同じ日付で01-0068として別に登録されており、駅としては2件の登録有形文化財を抱えることになる。

記録された構造は簡潔で、鉄筋コンクリート造2階一部平屋建、建築面積1329平方メートル。この数字が指すのは、ひとつの中心空間を軸にした左右対称の平面である。中央にトップライト付きの吹抜けホールを置き、その左右を2階建部、両端を平屋建部とする。正面から見ればこの三段の構成がそのまま輪郭に現れ、90年近い日々の通行を経てなお崩れていない。

価値の一端は希少性にある。昭和初期の鉄筋コンクリート造駅舎で現役のまま残る例は国内に多くない。岡山、横浜、両国、上野と続く戦前の一連の鉄筋コンクリート造駅舎のなかに位置づけられることが多く、昭和7年(1932年)竣工の上野駅を外観の手本としたと市や観光協会の資料は説明する。上野駅と小樽駅は平成元年(1989年)に姉妹駅提携を結んでいる。

構造の表記には注意が要る。国のデータベースは鉄筋コンクリート造と記す一方、地元の刊行物やウェブ資料には鉄骨鉄筋コンクリート造とし、道内初の例と述べるものがある。両者が食い違う場合は一次資料である国の記録に従うのが妥当だろう。

訪れたときに見ておきたいところ

まず上を見てほしい。中央ホールの高窓には、ガラスのランプが幾列も吊り下げられている。竣工当初のものではない。昭和62年(1987年)、当時の駅長が小樽らしい特色をと地元の北一硝子に持ちかけ、同社が108灯を寄贈したのが始まりで、平成11年(1999年)の追加寄贈によって改札上とホームを含めた総数が333灯となった。この照明の演出は後に小樽市都市景観賞を受けている。

傘の形はホーム側と入口側で少しだけ違う。言われなければ気づかない差である。

入口の脇には「むかい鐘」が据えられている。昭和40年頃まで列車の到着を鐘で知らせていた慣習にちなむもので、同じ鐘は1番・2番ホームにも置かれている。観光客が鳴らしていく姿をよく見かける。

外壁は茶褐色のタイル張りで、装飾を抑えた落ち着いた面をつくる。雪の季節にはこの色が背景から浮き上がる。撮影は午後遅い時間が扱いやすく、海側から中央通りを上ってくる光が正面を照らす。

見学にあたっての実用情報

ここは博物館ではなく、現役の駅である。駅前広場、入口ホール、コンコースはいつでも無料で立ち入ることができ、ランプの下がる吹抜けホールは改札の外側にある。ホームに出るには乗車券か入場券が必要となる。窓口の営業時間は改定されることがあるため、入場券を求めるならJR北海道の公式サイトで事前に確認しておきたい。

個人利用の撮影は公共部分で差し支えない。ホーム端に寄りすぎないこと、乗務員に向けてフラッシュを使わないこと、混雑時に三脚を広げないことは守りたい。

札幌からは函館本線でおよそ40分。新千歳空港からは快速エアポートが乗り換えなしで入り、所要はおよそ1時間半である。小樽運河までは正面口を出て中央通りをまっすぐ下り、徒歩10分ほど。その途中で遊歩道となった旧手宮線の跡地が通りを横切り、さらに数分歩けば「北のウォール街」と呼ばれた界隈の銀行建築が並ぶ。

Q&A

QJR小樽駅本屋の中に入ることはできますか。見学料はかかりますか。
A入れます。料金もかかりません。駅は毎日営業しており、入口ホールとコンコースは誰でも通行できます。改札の内側、ホームに出る場合のみ乗車券または入場券が必要です。
QJR小樽駅本屋はいつ建てられ、どのような構造ですか。
A昭和9年(1934年)の竣工で、この地の三代目の駅舎です。国の登録では鉄筋コンクリート造2階一部平屋建、建築面積1329平方メートルと記録されています。
QJR小樽駅本屋の「本屋」とは書店のことですか。
A別の語義です。鉄道では「本屋」で駅の主たる建物、つまり改札やコンコースを含む部分を指します。書店を意味する一般的な用法とは関係がありません。
QJR小樽駅本屋のランプは何灯あり、誰が寄贈したものですか。
A駅全体で333灯です。地元の北一硝子が昭和62年(1987年)に108灯を寄贈し、平成11年(1999年)の追加寄贈で現在の数になりました。吹抜けの高窓、改札上、ホームに分かれて設置されています。
QJR小樽駅本屋はどの区分の文化財ですか。
A登録有形文化財(建造物)で、登録番号は01-0067、登録年月日は平成18年3月27日です。登録基準は「造形の規範となっているもの」。重要文化財の指定より緩やかな枠組みで、日常の使用を続けながら保存できます。
Q札幌や新千歳空港からJR小樽駅本屋へはどう行きますか。
A札幌からは函館本線でおよそ40分です。新千歳空港からは快速エアポートが直通し、所要はおよそ1時間半となります。

基本データ

名称JR小樽駅本屋(じぇいあーるおたるえきほんや)
所在地北海道小樽市稲穂2-22-15
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 01-0067
指定年平成18年(2006年)3月27日登録/同年4月12日告示
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造2階一部平屋建、建築面積1329平方メートル
所有者北海道旅客鉄道株式会社
公開状況現役の駅。駅前広場・入口ホール・コンコースは常時無料で見学可。ホームへの立入は乗車券または入場券が必要

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — JR小樽駅本屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005397
文化遺産オンライン — JR小樽駅本屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/152005
小樽市 — JR小樽駅(本屋/プラットホーム)
https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2022030300071/
文化庁 日本遺産ポータルサイト — JR小樽駅本屋及びプラットホーム
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/7074/
小樽観光協会 おたるぽーたる — クローズアップ 小樽駅のすべてを徹底解説
https://otaru.gr.jp/project/otarujishin-202203-otaruekicloseup

最終更新日: 2026.08.27