アイヌの村に立つ学者の家

平取町二風谷の集落、樹々の間に三階建の洋館が立つ。アイヌの診療と研究で記憶される医師にして人類学者、ニール・ゴードン・マンローの旧自邸である。設計はマンロー自身と伝わる。ここに暮らし、働いた本人が形づくった住まいという点で、この建物は異色だ。

木造三階建、下見板を張り、マンサード屋根を戴く。正面は大きな屋根窓によって強調され、妻面の屋根裏部には小さな出窓が加わって、意匠にさらなる彩りを添える。マンローが故郷スコットランドに似ていることも移住先に選んだ理由の一つと伝わる田園の風景のなかで、この家は静かで、どこか異国めいた佇立を見せる。

登録の理由

マンローはアイヌ研究に身を捧げるため二風谷に移り住み、医師として地域に尽くしながら調査を進めた。没後、住居兼診療所であったこの建物は保存され、のちに北海道大学へ引き継がれ、北方文化研究の拠点として活用されている。平成12年(2000年)4月28日に登録有形文化財として登録され、告示は同年5月17日。登録基準は「造形の規範となっているもの」である。

建物の価値は、マンローの生涯と、二風谷という土地に分かちがたく結びついている。二風谷は古くから多くのアイヌの人々が暮らす村であり、マンローはここで長く続く信頼関係を築いた。家はその歴史と、この地で営まれた人類学の仕事を示す標として立っている。

見どころ

道からは、マンサード屋根と背の高い三階建の姿がまず目に入る。当時の田園の住宅としては珍しい。正面を強調する大きな屋根窓を探し、次に妻面の屋根裏部に収まる小さな出窓を見つけてほしい。複数の角度から建物の顔を考えた設計者の意図を示す、添えられた一筆である。

なお、旧マンロー邸は一般公開していない。二風谷の地域とともに調査研究を進める研究者が用いる研究施設であり、一般の来訪を受け入れる態勢にはない。この地域のアイヌ文化に関心のある旅行者は、近くの二風谷アイヌ文化博物館をはじめとする平取町の公開施設を訪ねるとよい。この家が結びつく文化と歴史に触れられる。

Q&A

Qマンローとは誰ですか。
Aニール・ゴードン・マンローは医師にして人類学者で、アイヌの診療と研究で知られます。ここはその住居兼診療所でした。
Q見学できますか。
Aいいえ。研究施設のため一般公開していません。平取町の公開施設で地域のアイヌ文化に触れられます。
Q誰が設計したのですか。
Aマンロー自身の設計と伝わります。住む人自身が形づくった珍しい住宅です。
Q現在の所有者は誰ですか。
A北海道大学で、北方文化研究の拠点として活用しています。

基本情報

名称北海道大学文学部二風谷研究室(旧マンロー邸)
所在地北海道沙流郡平取町字二風谷54-1
指定区分登録有形文化財(登録 平成12年4月28日/告示 平成12年5月17日)
建築年昭和6年(1931年)
構造木造3階建、鉄板葺、建築面積130㎡、1棟
設計ニール・ゴードン・マンロー(本人と伝わる)
所有者国立大学法人北海道大学
公開一般非公開(研究施設)

References

国指定文化財等データベース(文化庁)— 北海道大学文学部二風谷研究室(旧マンロー邸)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001545
文化遺産オンライン — 北海道大学文学部二風谷研究室(旧マンロー邸)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/148155
平取町 — 旧マンロー邸
https://www.town.biratori.hokkaido.jp/soshikikarasagasu/kankoshokoka/kankoshokokakari/1/3/3/409.html

最終更新日: 2026.07.02