庭を仕切る黒漆喰の門
鷹津家住宅の表門が白漆喰をまとうのに対し、敷地内の庭門は黒漆喰で仕上げる。腕木から屋根を吊る腕木門で、南北に走り、主屋前の地面を二つに分ける。西は玄関側の前庭、東は座敷のための庭である。一つの開けた空間を、迎える側と眺める側という順序へと組み替えている。
住宅は姫路市御国野町深志野の集落に建ち、江戸後期から医師を務めた鷹津家の住まいであった。庭門と塀は登録五棟のうち最も新しく、明治40年(1907年)頃の建築で、敷地の他の棟とともに令和3年(2021年)に登録された。
登録された理由
庭門及び塀は令和3年10月14日、登録番号28-0776で登録された。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。その価値は、敷地の内部をどう秩序づけるかにある。この種の旧家は一続きの空地ではなく、意図をもって構成された空間であり、庭門はその構成を担う仕掛けとして、日常の動線から切り離された座敷の庭を生み出している。
門は切妻造桟瓦葺の腕木門で、開き戸を建て、上部に横格子の欄間を設ける。両脇の塀も瓦葺とし、真壁に黒漆喰を塗って柱を見せ、腰を竪板張とする。塀には一間ごとに格子窓を開き、その材には名栗、すなわち手斧で削って波状の跡を残した木を用いる。間口は約1.6メートルと控えめだが、塀は総延長で11メートルほど続く。
見どころ
まず色に気づきたい。黒漆喰は、街路に向く白い表門よりも静かで内向きの調子を庭門に与え、道に開く公の顔ではなく、座敷の庭という私的な世界にふさわしい。次に塀の格子窓を見たい。名栗の仕上げは、手斧の通った跡をわずかな波として各材に残す。茶室の趣味で好まれた肌合いを、住宅の塀に取り入れている。一間ごとに繰り返す窓の律動が、歩くにつれて塀の長さを測っていく。
二つの門をあわせて読むと、一家が自らの敷地をどう考えたかが見えてくる。白い門が外からの入りを受け、黒い門が内からの眺めを整える。住宅は個人のものと見られ一般公開はされていないが、庭門は離れて見てもなお、在村の医師の住まいの内部にどれほどの心づかいが注がれたかを示している。
Q&A
- 庭門はどのような働きをしますか。
- 主屋前の地面を、西の玄関側前庭と東の座敷庭に分けます。空間を用途ごとに仕切る役割をもちます。
- なぜ白ではなく黒なのですか。
- 黒漆喰は静かで私的な調子を与え、内側の庭に合います。街路に面する白い表門との対比になっています。
- 名栗材とは何ですか。
- 手斧で削り、表面に波状の跡を残した木材です。茶室建築で好まれる仕上げで、ここでは塀の格子窓に用いられています。
- いつ建てられましたか。
- 明治40年(1907年)頃で、住宅内の登録五棟のなかで最も新しい建物です。
- 見学はできますか。
- 住宅は個人のものと見られ一般公開はされていません。門と塀は敷地の外から眺めることができます。
基本情報
| 名称 | 鷹津家住宅庭門及び塀(たかつけじゅうたくにわもんおよびへい) |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県姫路市御国野町深志野字北宅地586 |
| 区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 令和3年(2021年)10月14日/登録番号28-0776 |
| 員数 | 1棟 |
| 年代 | 明治40年(1907年)頃 |
| 構造 | 庭門:木造、瓦葺、間口約1.6メートル/塀:木造、瓦葺、総延長約11メートル |
| 公開状況 | 個人住宅につき一般公開なし |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) — 鷹津家住宅庭門及び塀
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014071
- 文化遺産オンライン — 鷹津家住宅主屋(住宅主屋の記録)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/520417
- 神戸新聞 — 鷹津家住宅ほかの国文化財登録に関する報道
- https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202107/0014508963.shtml
最終更新日: 2026.07.04