七宝形の海鼠壁をまとう蔵

鷹津家住宅の道具蔵は、正面の腰に海鼠壁をめぐらす。平瓦を張り、目地に漆喰を盛り上げたこの仕上げは、海鼠の背に似た形からその名がある。ここでは瓦を七宝形、すなわち円を連ねる文様に組んでおり、七宝は琺瑯の意匠にも通じる。実用の蔵に、近づいて見たくなる装飾の顔を与えている。蔵は姫路市御国野町深志野の敷地西辺に建ち、江戸後期から医師を務めた鷹津家の構えの一部をなす。

この土蔵は、敷地に残る登録五棟のうち最も古い。明治前期、およそ1868年から1882年の建築で、現在の主屋より十年あまり先行する。一家が住まいを建て替える前から、堅牢で防火に優れた蔵の普請に手を入れていたことがわかる。

登録された理由

道具蔵は令和3年(2021年)10月14日、登録番号28-0774の登録有形文化財として登録された。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、主屋・厨及び井戸場・二つの門とともに一括して登録され、五棟が在村医家の屋敷構えを保っている。

土蔵は火から家財を守ることが役目であり、この蔵もそれにかなう造りをもつ。木造二階建で、外壁は軒先まで漆喰を塗り込め、軒下に鉢巻を付す。屋根は切妻造の本瓦葺である。単なる実用に留まらないのは街路に向く正面の扱いで、漆喰と文様のある腰壁は、道から眺められることを前提に整えられている。

見どころ

東を向く正面が見せ場である。まず腰の七宝形海鼠壁を、次に戸口を見たい。縁取りを木瓜形、すなわち瓜の断面のような柔らかな輪郭にととのえ、一枚引きの塗戸を建てる。蔵にまで意匠を及ぼそうとした家の心づかいがうかがえる。漆喰は軒先まで塗り上げられ、防火のための仕上げが同時に、なめらかで白い量塊感を壁に与えている。

道具蔵は北側で厨及び井戸場に接続し、二棟が西辺に沿って一続きに読める。敷地は個人の住宅と見られ一般公開はされていないが、装飾を施した蔵の正面は、こうした道からの鑑賞をこそ想定して整えられている。背の高い主屋と並べて見れば、住まいから付属屋へと意匠の感覚を広げた一家のありようが立ち上がってくる。

Q&A

Q海鼠壁とは何ですか。
A平瓦を張り、目地に漆喰をかまぼこ状に盛り上げた壁の仕上げです。盛り上がりが海鼠の背に似ることからこの名で呼ばれます。
Q道具蔵はどのくらい古いのですか。
A明治前期、およそ1868年から1882年の建築で、住宅内の登録五棟のなかで最も古い建物です。
Q七宝形とはどのような文様ですか。
A円を重ね連ねた文様で、琺瑯の七宝細工にも見られます。この蔵では正面腰壁の瓦張りに用いられています。
Qなぜ軒先まで漆喰を塗るのですか。
A軒先まで厚く塗り込めることで蔵は防火性を高めます。家財や道具を守るという蔵本来の役目に応じた造りです。
Q見学はできますか。
A敷地は個人の住宅と見られ一般公開はされていません。蔵の正面は集落の道から眺めることができます。

基本情報

名称鷹津家住宅道具蔵(たかつけじゅうたくどうぐくら)
所在地兵庫県姫路市御国野町深志野字北宅地586
区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日令和3年(2021年)10月14日/登録番号28-0774
員数1棟
年代明治前期(1868〜1882年頃)
構造木造2階建、瓦葺、建築面積約24平方メートル
公開状況個人住宅につき一般公開なし

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 鷹津家住宅道具蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014069
文化遺産オンライン — 鷹津家住宅主屋(住宅主屋の記録)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/520417
神戸新聞 — 鷹津家住宅ほかの国文化財登録に関する報道
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202107/0014508963.shtml

最終更新日: 2026.07.04