いつでも、無料で見られる45メートル

西山酒造場塀は、兵庫県丹波市市島町中竹田で街路に沿って総延長45メートルにわたって延びる昭和初期建築の木造瓦葺の塀で、平成19年(2007年)5月15日に国の登録有形文化財となった。

塀が単独で文化財に登録される例は多くない。この塀は登録された。その理由は、正面に立てばすぐに読み取れる。

塀は店舗兼主屋の両側へ延びる。したがって街路側の立面は、建物に柵が付属したものではなく、ひと続きの構成として目に入る。高さは3.3メートル。軒の高さを、隣に建つ店舗兼主屋の1階軒よりも意図的に高く取っている。これが決定的な操作で、いわゆる高塀、格式ある商家の表構えに用いられた形式である。

塀のつくり

構造は木造、屋根は桟瓦葺。壁は真壁造で、柱を壁面の中に塗り込めず、外から見えるまま残している。腰の部分は杉板の縦板張とし、その上は漆喰塗。二つの材料が高さをおおむね暗い腰と明るい上部に分け、頂部を瓦が押さえる。

データベースには搬入口が付くことも記録されている。稼働中の酒蔵には米が入り、樽が出ていく。塀はその往来を、線を途切れさせずに受け止めなければならなかった。

登録番号は28-0272、第54回登録。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁の分類では建築物ではなく「その他工作物」にあたり、種別は産業3次に置かれている。この塀が住宅建築であると同時に産業遺産でもあることを示す扱いである。

高い塀が担っていたもの

高さは複数の役目を同時に果たした。作業場や仕込みの様子、蔵人の動きを通りの視線から隔てる。在庫を守る。そして、家の格を示す。文化庁の解説は、この塀を酒造業の大店の広大な敷地正面を飾る格式あるつくりとし、町並み景観の形成に寄与すると記す。

最後の一点は文字どおりに受け取ってよい。塀を取り払っても店舗兼主屋は明治の優れた建築のままだが、通りは寸法の基準を失う。

撮影のコツと、周辺で見られるもの

ここにある3件のうち、好きなときに見られるのはこの塀だけである。公道に面し、拝観料も予約も要らず、路上からの撮影に制限はない。

長く低い対象なので、正対して撮ると平板になりやすい。塀に沿って移動し、斜めから狙うと、瓦と柱と縦板が繰り返しの垂直線に圧縮されて画面が締まる。東からの朝の光は杉板の質感を拾い、午後遅い光は漆喰を均一な明るい面に落ち着かせる。雨上がりは桟瓦が濃く沈み、漆喰との対比が強く出る。

塀を撮り終えれば、あとは数歩の距離である。明治24年(1891年)頃の店舗兼主屋はおおむね9時から17時まで予約なしで入れ、入口近くの石碑には、大正4年(1915年)に俳人・高浜虚子が蔵の清酒を「小鼓」と命名した際の言葉が刻まれている。昭和16年(1941年)の離れ、現在の三三庵は敷地の奥にあり、予約による見学でのみ見ることができる。案内付きの見学は所要約30分、開始は13時から16時の間、3日前までの予約制で、近畿経済産業局の令和6年(2024年)4月時点の情報では10名までで1回4,950円とされている。

JR福知山線の丹波竹田駅から徒歩約5分。敷地内に駐車場がある。令和6年(2024年)8月に同じ敷地の明治29年(1896年)築の酒蔵を改修して開いた「鼓傳」があり、見学のあとに腰を落ち着ける場所にも困らない。

Q&A

Q西山酒造場塀は予約なしで見学できますか。
Aできます。蔵の店舗兼主屋の両側で公道に面しており、時間を問わず無料で見学・撮影できます。予約も拝観料も不要です。
Q西山酒造場塀の長さと高さはどれくらいですか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは総延長45メートル、高さ3.3メートル、木造・桟瓦葺と記録し、搬入口が付くことも記しています。
Q西山酒造場塀はなぜ文化財に登録されたのですか。
A平成19年(2007年)5月15日、登録番号28-0272として「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準で登録されました。データベースは、酒造業の大店の敷地正面を飾る格式あるつくりであり、町並み景観の形成に寄与すると説明しています。
Q西山酒造場塀はどのような材料でできていますか。
A木造の真壁造で、柱を見せたまま残しています。屋根は桟瓦葺、腰は杉板の縦板張、上部は漆喰塗で仕上げられています。
Q西山酒造場塀の近くには何がありますか。
A同じ敷地に登録有形文化財が2件あります。明治24年(1891年)頃の店舗兼主屋は営業時間内に公開されており、昭和16年(1941年)の離れ(三三庵)は予約制で公開されます。令和6年(2024年)8月には明治29年(1896年)築の酒蔵を活用した「鼓傳」も開業しました。

基本データ

名称西山酒造場塀(にしやましゅぞうじょうへい)
所在地兵庫県丹波市市島町中竹田1171他
指定区分登録有形文化財(その他工作物) 登録番号 28-0272(第54回登録)
指定年平成19年(2007年)5月15日 登録
員数1棟
寸法木造、瓦葺、総延長45メートル、高さ3.3メートル、搬入口付
所有者文化庁データベースに記載なし(西山酒造場が使用・管理)
公開状況公道から常時見学可能。無料

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「西山酒造場塀」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006174
文化庁 国指定文化財等データベース「西山酒造場店舗兼主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006169
西山酒造場 有形文化財の酒蔵
https://kotsuzumi.co.jp/muhonkan/
近畿経済産業局 関西の見学可能な産業施設「株式会社西山酒造場」
https://www.kansai.meti.go.jp/2kokuji/tvlist/kohyo/873.html
ぶらり丹波路(丹波地域公式観光ポータルサイト)「西山酒造場」
https://www.burari-tambaji.com/spot/197

最終更新日: 2026.08.26