村井醸造煙突とは
村井醸造煙突は、茨城県桜川市真壁町真壁にある造り酒屋の敷地に立つ鉄筋コンクリート造の煙突で、昭和初期(1926年以降)に建てられ、平成16年(2004年)11月8日に国の登録有形文化財に登録されました。高さは22メートル、基部の直径は1.45メートルあります。
真壁の市街地には見世蔵や土蔵、門など300棟を超える伝統的建造物が残り、そのうち約100棟が同じ登録を受けています。その大半は木と土でできた建物です。村井醸造煙突はそこから外れます。文化庁の国指定文化財等データベースは、この煙突を「建築物」ではなく「その他工作物」に分類しています。橋や窯、給水塔と同じ枠組みで扱われているということです。
建つ場所は、酒蔵の店舗と土蔵にはさまれた狭い隙間です。通りから見上げると、二つの瓦屋根の棟の間に軸が立ち上がって見えます。この地で商いを始めたのは延宝年間(1673年から1680年)、近江日野の商人であった村井重助が醤油と味噌の出店を構えたのがはじまりと伝わります。酒造はその後のことで、煙突はさらに下って昭和に入ってからのものです。
土と漆喰の町に建った鉄筋コンクリート
酒造りには蒸気がいります。仕込む米は甑(こしき)で蒸し上げるため、寒造りの季節には何か月も釜を焚き続けることになります。釜には通風が必要で、通風には高さが必要です。村井醸造煙突が建てられた理由はここにあり、限られた敷地のなかで細く高く立ち上がる形になった理由でもあります。
登録の理由になったのは、その材料です。文化庁の解説は「当時の最新の技術を用いた鉄筋コンクリート造」と記しています。昭和のはじめ、地方の醸造町にとって鉄筋コンクリートは新しい工法でした。周囲では依然として土蔵造が主流で、天保8年(1837年)の大火のあと、真壁の商家は防火のためこの工法を選び続けていたのです。そこに立ち上がった無装飾のコンクリートの軸は、この家業がどこへ向かおうとしていたかを示しています。
造作の要点は三つです。基部の煙道口はアーチ積とすること。内部に耐火煉瓦を積み、コンクリートだけでは受けきれない熱に備えること。そして頂上付近に櫛形の装飾を回すこと。三つめは構造上は何の役にも立ちません。表通りに面して立つ煙突なら仕上げまできちんとやる、という判断があったということです。
見どころ
頂部の櫛形装飾
村井醸造煙突でいちばん見落とされるのが、頂部近くを一周する櫛形の装飾です。地上20メートルほどの高さにあるうえ、コンクリートの煙突には装飾がないものと目が思い込んでいるためでしょう。午後の低い光が当たると、この帯が軸に水平の影の線を落とします。装飾はここ一箇所きりで、時代の見当をつける手がかりにもなります。素っ気ない鉄筋コンクリートの軸に頭部だけ意匠を回すのは、昭和初期の産業建築が装飾を捨てきる直前の作法です。
逓減する軸と基部
軸は上にいくほど細くなります。地面のところで直径1.45メートルですから、手を触れられる位置にあり、22メートルのコンクリートがどこまで細く造れるものかを実感できます。足元のアーチ積の煙道口は、しゃがんで見る価値があります。コンクリート構造にアーチを用いるのは煉瓦煙突からの持ち越しで、新しい材料を古い勘で扱っている様子がそのまま残っています。
震災を越えて
平成23年(2011年)の東日本大震災で、真壁は全国の重要伝統的建造物群保存地区のなかで最も被害の大きな地区となりました。伝統的建造物の9割以上が損傷し、復旧工事はその後も長く続いています。村井醸造煙突については、所有者である村井醸造が「影響は受けていない」と公表しています。壁を積み直した蔵の隣で無傷のまま立っているという事実が、建てた人たちの材料選びについて多くを語っています。
見学方法とアクセス
村井醸造煙突の所在地は茨城県桜川市真壁町真壁72、上宿通りに面した門から入った酒蔵の敷地内です。外観は公道からいつでも無料で見られます。軸の上三分の二ほどが周囲の屋根を越えて出ているため、枡形の交差点が続く真壁の町割りのなかで、自分の位置を確かめる目印としても使えます。
敷地に入って近くから見る場合は、酒蔵見学を利用します。見学は事前予約制で、電話または公式サイトの問い合わせフォームから申し込みます。仕込み中は電話に出られないことがあるため、蔵はメールでの予約をすすめています。所要時間は30分ほどで、蔵の歴史の説明と、公開できる範囲の蔵内の案内、そして最後に入口付近の試飲コーナーが付きます。試飲は基本的に全商品が無料です。一度に案内できるのは10人程度までで、それを超える場合は班に分けられます。麹室は見学できません。また10月から3月は仕込みのため蔵内の案内を休止していますが、登録された建造物そのものはこの期間も見ることができます。
営業時間は午前9時から午後5時まで、案内は月曜から土曜のみで、日曜と祝日は休みです。見学料はかかりません。公道からの外観撮影に制限はありませんが、敷地内での撮影について蔵は方針を公表していないので、訪問時に確認してください。敷地内の駐車は乗用車3台程度とマイクロバス・小型バスに限られ、中型・大型バスは入れません。大きな車で行く場合は真壁高上町駐車場(真壁町真壁279-1、普通車65台)を利用します。
鉄道ではJR水戸線の岩瀬駅が最寄りで、タクシーで約20分です。つくば駅からはつくば市バスで約50分の筑波山口へ出て、桜川市バス「ヤマザクラGO」に乗り換えて約20分、上宿バス停が蔵の門の近くになります。車では北関東自動車道の桜川筑西インターチェンジから約20分です。日程を選べるなら2月4日から3月3日をすすめます。「真壁のひなまつり」の期間で、地区の100軒を超える家や店に雛人形が並びます。村井醸造も自社の建物で展示や催しを行い、煙突の周りの通りが一年でいちばん賑わう時期です。
Q&A
- 村井醸造煙突はどこにありますか。予約なしで見られますか。
- 茨城県桜川市真壁町真壁72、上宿通りに面した門を入ってすぐの村井醸造の敷地に立っています。外観を見るだけなら予約も入場料も不要です。軸が周囲の屋根より高く出ているため、公道からいつでもはっきり見えます。
- 村井醸造煙突の高さと構造を教えてください。
- 高さ22メートル、基部の直径1.45メートルの鉄筋コンクリート造で、内部には耐火煉瓦が積まれています。足元の煙道口はアーチ積、頂上付近には櫛形の装飾が一周しています。文化財としての員数は1棟です。
- 村井醸造煙突のある酒蔵は見学できますか。
- 事前予約をすれば見学できます。村井醸造へ電話または公式サイトの問い合わせフォームから申し込んでください。仕込み期はメールでの予約が確実です。所要30分程度、一度に10人程度まで、月曜から土曜の午前9時から午後5時に案内され、最後に無料の試飲が付きます。10月から3月は仕込みのため蔵内の案内は休止しています。
- 村井醸造煙突はいつ登録されましたか。登録有形文化財とはどのような制度ですか。
- 平成16年(2004年)11月8日に、登録番号第08-0156号として登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。登録有形文化財は届出と指導・助言を基本とする緩やかな保護の仕組みで、所有者が建物や工作物を仕事や暮らしに使い続けながら守れる点に特徴があります。
- 村井醸造煙突へ公共交通機関で行くにはどうすればよいですか。
- 最寄り駅はJR水戸線の岩瀬駅で、タクシーで約20分です。つくば駅からの場合はつくば市バスで約50分の筑波山口へ行き、桜川市バス「ヤマザクラGO」に乗り換えて約20分、上宿バス停で降ります。車なら桜川筑西インターチェンジから約20分です。
基本情報
| 名称 | 村井醸造煙突(むらいじょうぞうえんとつ) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県桜川市真壁町真壁72 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号第08-0156号 |
| 指定年 | 2004年(平成16年)11月8日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 高さ22メートル、基部直径1.45メートル、鉄筋コンクリート造 |
| 所有者 | 文化庁の国指定文化財等データベースでは非公表。敷地は村井醸造株式会社が使用・管理 |
| 公開状況 | 外観は公道から常時無料で見学可。敷地内は事前予約制、午前9時から午後5時、月曜から土曜 |
参考文献
- 村井醸造煙突/国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004326
- 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区/桜川市
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
- 真壁の町並み/桜川市
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/learn/page000455.html
- 真壁のひなまつり/桜川市
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/play/page002066.html
- 酒蔵見学のご案内/村井醸造株式会社
- https://www.komei.co.jp/brew-factory2.html
最終更新日: 2026.09.08