村井醸造店舗とは
村井醸造店舗は、茨城県桜川市真壁町真壁72にある土蔵造2階建の店舗建築で、明治初期(1868年以降)の建築で、平成16年(2004年)11月8日付で国の登録有形文化財となりました。建築面積は231平方メートル、上宿通りから入る門の正面に構えています。
文化庁の解説は、この建物を「旧市街に残る造り酒屋の中心的な施設」と記しています。言葉のとおりです。同じ敷地にある4件の登録物件のうち、商いが実際に行われてきたのは村井醸造店舗で、今も酒を買う客が立つのはここです。文化庁データベースの種別欄を見ると、この店舗だけが商業を指す「産業3次」に分類され、隣に立つ煙突と脇蔵は製造を指す「産業2次」に分けられています。台帳の分類が、そのまま建物の役割分担になっています。
村井醸造がこの土地に店を構えたのは延宝年間(1673年から1680年)と伝わります。近江国日野から下ってきた商人、村井重助が醤油と味噌を扱う出店を開いたのが始まりでした。酒造に移ったのはその後で、この店舗が建った明治初期には、家業はすでに二世紀を数えていました。
真壁の商家が土で店を建てた理由
天保8年(1837年)、真壁は大火に見舞われました。それまで町の屋根は萱葺きや板葺きでしたが、火事のあと商家は瓦葺きで建て直し、見世蔵と土蔵が守るべき在庫を持つ者の標準になります。現在この地区に残る最も古い建物は、この大火の直後に建てられたものです。そして大火が生んだ習慣は、それを覚えた世代よりも長く残りました。
明治に入ると第二の波が来ます。真壁銀行などの資本が整い、製糸業が興り、旧陣屋の前を走る御陣屋前通りには呉服太物商が軒を連ねました。藩の規制が外れたことで商家が次々と薬医門を建てたのもこの時期で、商人町でありながら門と板塀が目立つという真壁の姿はここに始まります。見世蔵と土蔵の建設が最も盛んだったのがこの数十年で、村井醸造店舗もその流れのなかにあります。
工法は土蔵造です。木の軸組に竹小舞を掻き、土を何層も塗り重ねてから漆喰で仕上げます。手間も重量もかかりますが、火にはめっぽう強い。一季分の酒を抱える蔵元にとっては当然の選択でした。真壁には現在およそ100棟が同じ国の登録を受けており、平成22年(2010年)にはこの地区が茨城県で初めて重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
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途中で落ちる屋根
村井醸造店舗の大棟は東西に走り、切妻造の屋根を桟瓦葺で葺いています。その東西棟の東半分が一段低く下げられており、これを落屋根といいます。結果として、棟線が端から端まで一直線に通らず、途中で段を作って下がる。門をくぐって最初に目に入るのがこの段差です。増築を重ねた建物のようにも、そう見えるよう仕組んだ建物のようにも読めます。
上は漆喰、下は板
外壁は白い漆喰で仕上げられていますが、それは腰から上だけです。腰より下は簓子下見板張、下見板張の一種で、板を押さえる縦の桟に刻み(簓子)を入れて板の重なりに合わせたものです。平らな桟より手間はかかりますが、仕事はよくします。地面からの跳ね返りが漆喰を傷めるのを、板が受けて防ぐ。この規模の建物では腰板が正面いっぱいに走り、板と漆喰の境界の線が、そのまま外観の横方向の性格を決めています。
桁行9間という大きさ
平面は桁行9間、梁間6間で、西半分は梁間が8間に広がります。おおよそ16メートルに11メートル。1間は約1.8メートル、畳の長辺に由来する伝統的な寸法の単位です。9間の間口は、真壁のどこと比べても大きい部類の土蔵造店舗になります。門の前に立ったとき、比較の対象になるのは周囲の通りに並ぶ2間3間の店構えです。
見学方法とアクセス
真壁の登録建造物の多くと違い、村井醸造店舗はそのまま入れる建物です。営業中の店舗なので、営業時間の午前9時から午後5時、月曜から土曜のあいだは誰でも立ち入れます。日曜と祝日は休みです。予約も入場料も要りません。入口近くには試飲コーナーがあり、基本的に全商品を無料で試せます。購入の支払いは現金とPayPayのみです。何も買わないとしても、明治期の土蔵造の小屋組の下に立てる機会としては、この地区でいちばん手軽です。
店の土間から先を見たい場合は、事前予約の酒蔵見学があります。申し込みは電話か公式サイトの問い合わせフォームから。仕込み中は電話に出られないことが多いため、蔵はフォームでの予約をすすめています。所要は30分ほどで、家の歴史の説明、公開できる範囲の蔵内の案内、そして試飲という流れです。一度に案内できるのは10人程度まで、それ以上は班に分かれます。麹室は見学できません。10月から3月は仕込みのため蔵内の案内が休止されますが、村井醸造店舗そのものはこの期間も開いています。
上宿通りからの外観撮影に制限はありません。店内や敷地で写真を撮る場合の扱いは公表されていません。カウンターで一声かけておくと確実です。駐車できるのは乗用車3台ほどとマイクロバス・小型バスまで。中型・大型バスは敷地に入れないため、徒歩圏の真壁高上町駐車場(真壁町真壁279-1、普通車65台)を使ってください。
鉄道の最寄りはJR水戸線岩瀬駅で、タクシーで約20分です。南から来る場合、つくば駅発のつくば市バスに約50分乗って筑波山口まで行き、そこで桜川市バス「ヤマザクラGO」に乗り継ぎます。さらに約20分、降りるのは上宿バス停です。自動車なら北関東自動車道の桜川筑西インターチェンジから約20分ほど。訪ねるなら2月4日から3月3日の「真壁のひなまつり」の時期が最も面白い。期間中、村井醸造は店舗奥の倉庫で地元作家の日本画展を開き、所蔵の雛人形を並べます。商いのためではなく人を迎えるために内部が設えられる、年に一度の時期です。
Q&A
- 村井醸造店舗の中に入ることはできますか。
- できます。営業中の酒販店ですので、月曜から土曜の午前9時から午後5時の営業時間中は誰でも入れます。予約も入場券も料金も不要です。日曜と祝日は休みです。店の奥の仕込み蔵まで見たい場合は、事前に蔵へ見学を申し込んでください。
- 村井醸造店舗の規模と構造を教えてください。
- 建築面積231平方メートル、平面は桁行9間・梁間6間で西半分は8間、2階建です。工法は土蔵造、屋根は切妻造の桟瓦葺で、東西棟の東半分を落屋根としています。外壁は腰まで簓子下見板張、その上を白漆喰で仕上げています。
- 村井醸造店舗はいつ登録されましたか。登録有形文化財とはどのような制度ですか。
- 登録は平成16年(2004年)11月8日、番号は第08-0155号です。基準として挙げられたのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」でした。登録有形文化財の制度では、外観を大きく変える工事の前に届け出れば足り、あとは指導と助言を受ける形になります。この建物が保存の対象でありながら今も酒を売る店として動いているのは、そのためです。
- 村井醸造店舗で試飲や購入はできますか。
- できます。入口近くの試飲コーナーで基本的に全商品を無料で試すことができ、その場で購入も可能です。支払いは現金とPayPayのみですので、現金を用意しておくと確実です。銘柄は「公明」「真壁」「真上」があります。
- 村井醸造店舗の周辺で他に見られる文化財はありますか。
- 同じ敷地に登録物件が3件あります。数歩の距離に高さ22メートルの鉄筋コンクリート造の煙突と脇蔵が立ち、大正期の石蔵もあります。門を出れば真壁の保存地区内におよそ100棟の登録建造物があるので、この店舗は町歩きの起点として使うのが向いています。
基本情報
| 名称 | 村井醸造店舗(むらいじょうぞうてんぽ) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県桜川市真壁町真壁72 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号第08-0155号 |
| 指定年 | 2004年(平成16年)11月8日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積231平方メートル、桁行9間・梁間6間(西半分は8間)、2階建、土蔵造・瓦葺 |
| 所有者 | 文化庁の国指定文化財等データベースでは非公表。建物は村井醸造株式会社が使用・管理 |
| 公開状況 | 店舗として開放、午前9時から午後5時、月曜から土曜、無料。蔵内は事前予約制 |
参考文献
- 村井醸造店舗/国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004325
- 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区/桜川市
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
- 真壁の町並み/桜川市
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/learn/page000455.html
- 酒蔵案内(会社概要と沿革)/村井醸造株式会社
- https://www.komei.co.jp/murai.html
- 酒蔵見学のご案内/村井醸造株式会社
- https://www.komei.co.jp/brew-factory2.html
最終更新日: 2026.09.08