すがや化粧品店店舗兼住宅:石岡が誇る看板建築の名品

茨城県石岡市の中町通りに堂々と佇む「すがや化粧品店店舗兼住宅」は、昭和初期の看板建築を代表する建造物です。2005年(平成17年)に国の登録有形文化財に登録されたこの木造2階建ての建物は、昭和4年の石岡大火からの復興の歴史を今に伝えるとともに、西洋古典様式の装飾を巧みに取り入れた美しい外観で、訪れる人々を魅了し続けています。

歴史的背景:昭和4年の石岡大火

1929年(昭和4年)3月14日、石岡の市街地を大火が襲いました。風速15メートルの強風にあおられた火は瞬く間に広がり、わずか20分ほどで市街地は火の海と化しました。中町をはじめ金丸町、守木町、守横町、富田町、貝地にかけて606戸、約1,700棟が全焼し、市街地の約4分の1が失われるという壊滅的な被害を受けました。

しかし、石岡の人々は力強く復興に立ち上がりました。大正12年の関東大震災後に東京で腕を振るっていた職人たちが石岡にやって来て、防火性に優れた看板建築の手法で次々と新しい店舗を建てていきました。すがや化粧品店店舗兼住宅は、昭和5年(1930年)頃に建築されたこれらの復興建築のひとつです。

文化財としての価値

すがや化粧品店店舗兼住宅は、2005年(平成17年)11月10日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。市の繁華街である中町通りに面して建つ、間口7.2メートル、奥行20メートル規模の典型的な看板建築です。

特に評価されているのは、正面2階に施された西洋古典様式の装飾です。両端にはコリント式の柱頭を意識した柱形、その内側にはイオニア式の柱頭を模した柱形が配されています。さらに、デンティル(歯飾り)付きのコーニス(軒蛇腹)、そして三角形のペディメント(破風)があしらわれており、木造の商家でありながら重厚かつ格調高い外観を呈しています。

建築の見どころ

すがや化粧品店の最大の魅力は、その精巧なファサード(正面外壁)にあります。看板建築の特徴である平坦な正面壁は、モルタル仕上げの上にヨーロッパの新古典主義建築を思わせる細やかな装飾が施されています。

2階の窓を挟んで左右に配された柱形は、コリント式とイオニア式という古代ギリシャ・ローマ建築の二つの様式を組み合わせた意匠で、地方の商家建築としては類を見ない凝った造りです。かつてはペディメント部分に右読みで「すがや」の屋号が掲げられていたといい、戦前の商店建築の風情を偲ぶことができます。

木造2階建て、瓦葺き、建築面積約142平方メートルの構造は、奥に長い町家形式を踏襲しており、伝統的な日本の商家と西洋建築の装飾が見事に融合した姿を見せています。

石岡の看板建築群

すがや化粧品店は、中町通りに点在する看板建築群の一角を成しています。この地区では11棟もの建物が国の登録有形文化財に登録されており、日本有数の看板建築の集積地として知られています。

近隣には、大火後にこの地区で最初に再建された看板建築の先駆け「十七屋履物店」、コンクリート壁の重厚な蔵造り風の「福島屋砂糖店」、戦前は銅板張りだった「久松商店」など、それぞれに個性的な装飾を持つ建物が並びます。また、大火を免れた唯一の商家建築である江戸末期の「丁子屋」(現・まち蔵藍)も必見です。

2000年代以降、アーケードの撤去と電線の地中化が行われ、看板建築の美しいファサードを遮るものなく鑑賞できるようになりました。

アクセス・周辺情報

すがや化粧品店店舗兼住宅は、JR常磐線石岡駅から西へ徒歩約10分、中町通り(国道355号線の一部)沿いにあります。建物の外観は通りからいつでも見学できます。石岡駅前の観光案内所で「まちなかの登録文化財散策まっぷ」を入手すると、効率よく看板建築を巡ることができます。

散策の途中には、昭和7年頃の建築で数寄屋風の佇まいが美しい「きそば東京庵」での食事がおすすめです。手打ちの蕎麦と天ぷらを味わいながら、昭和の雰囲気に浸ることができます。

周辺の見どころ

石岡市は看板建築以外にも見どころが豊富です。毎年9月中旬に開催される「石岡のおまつり」(常陸國總社宮例大祭)は関東有数の祭礼で、豪華な獅子頭の山車が歴史ある街並みを練り歩く勇壮な光景は圧巻です。

また、石岡はかつて常陸国の国府が置かれた歴史ある土地であり、常陸國總社宮をはじめとする由緒ある神社仏閣が点在しています。少し足を延ばせば、筑波山麓の豊かな自然の中でハイキングや季節の風景を楽しむこともできます。

Q&A

Q看板建築とは何ですか?
A看板建築は、大正末期から昭和初期にかけて流行した建築様式です。建物の正面を看板のように平坦に仕上げ、モルタルや銅板、タイルなどの耐火素材で覆い、西洋風の装飾を施したのが特徴です。関東大震災後の東京の復興期に広まり、石岡では昭和4年の大火後の復興で多く建てられました。
Qすがや化粧品店の建物の中に入れますか?
A建物は民間の商業施設として使用されているため、内部の見学は営業状況によります。ただし、最大の見どころである精巧なファサードは通りからいつでもご覧いただけます。
Q石岡へのアクセス方法は?
AJR常磐線の石岡駅が最寄り駅です。東京の上野駅から約70分で到着します。看板建築が並ぶ中町通りへは、駅から西へ徒歩約10分です。
Q周辺に他の登録有形文化財はありますか?
Aはい、中町通り周辺だけでも十七屋履物店、平松理容店、福島屋砂糖店、丁子屋など11棟が国の登録有形文化財に登録されています。石岡駅前の観光案内所で散策マップを入手できます。
Qおすすめの訪問時期はいつですか?
A看板建築の街並みは一年を通じて楽しめます。最も華やかな時期は、毎年9月中旬に開催される「石岡のおまつり」の期間です。春や秋は気候も穏やかで、街歩きに最適です。

基本情報

名称 すがや化粧品店店舗兼住宅
所在地 茨城県石岡市国府3-5-1
建築年 昭和5年(1930年)頃
構造 木造2階建、瓦葺、建築面積約142㎡
文化財区分 国登録有形文化財(建造物)
登録年月日 2005年(平成17年)11月10日
アクセス JR常磐線石岡駅より徒歩約10分

参考文献

文化遺産オンライン — すがや化粧品店店舗兼住宅
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/195909
茨城県教育委員会 — すがや化粧品店店舗兼住宅
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6235/
石岡市観光協会 — 看板建築
https://www.ishioka-kankou.com/sightseeing/machinami/machinaka-toroku/page000025.html
石岡市 — 街並み修景ガイドライン
https://www.city.ishioka.lg.jp/data/doc/1493193375_doc_103_1.pdf

最終更新日: 2026.04.11