最上流部に残る原形

甚之助谷上流第一六号砂防堰堤は、石川県白山市白峰の甚之助谷最上流部にある昭和8年(1933年)築造の砂防堰堤で、平成24年(2012年)2月23日に登録有形文化財として登録された。堤長25.0メートル、堤高4.0メートル。中流部の階段状堰堤群より上、谷の源頭に近い位置に立つ。

この堰堤の価値は、その残り方にある。山崩れが頻繁に起きる急峻な地形にありながら、建設当初の姿をほぼ完全に留めている。金沢河川国道事務所も、手取川大出水(昭和9年)以前の施設で竣工当時の原形を最もよく保持していると説明する。甚之助谷上流第一六号砂防堰堤は、昭和初期の砂防堰堤がどう造られたかを、補修の手が入る前の状態で見せる一基である。

登録の理由

白山の砂防が国の直轄事業となったのは昭和2年(1927年)で、この堰堤はその6年後にあたる。翌昭和9年(1934年)、手取川流域は死者97名を出す大水害に見舞われたが、砂防工事の入っていた甚之助谷と柳谷の筋では崩壊が起きなかった。その水害を経てなお原形をとどめている点で、甚之助谷上流第一六号砂防堰堤は昭和初期の施工計画と施工技術を伝える資料になっている。

登録有形文化財は届出制の緩やかな保護措置で、許可制の指定制度とは別の仕組みである。この堰堤は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。同じ日に登録された白山の砂防施設は15基で、そのうち13基が甚之助谷にある。

庇を突き出した水通し

堤体は現地の石を積んで目地にモルタルを入れた練積である。中央の水通しは上に開く逆台形で、その縁の笠石を庇状に前へ突き出させている。この水通庇は、白山の直轄砂防でも初期にしか見られない特徴で、後年の堰堤には現れない。下流の堰堤では失われたり摩耗したりしている部分が、ここでは形を保っている。

堤長25.0メートル、堤高4.0メートル。中流部の堰堤と比べると小ぶりだが、源頭に近いぶん谷幅も狭い。標高が上がるほど資材の運搬は難しくなる。人力で石と骨材を担ぎ上げた条件を思えば、この寸法は控えめではなく相応である。

見学方法

甚之助谷上流第一六号砂防堰堤は山中の現役施設で、堤体に立ち入ることはできない。堰堤のそばに見学設備や解説板は置かれていない。中流部の階段状堰堤群よりさらに上流にあり、別当出合から続く登山道の砂防新道を甚之助避難小屋の方向へ登った先の高さにあたる。

撮影を禁じる掲示は確認できない。一帯は日本最大級と呼ばれる地すべり地で、改築や補修の工事が続いている。工事中の区域には近づかないこと。谷への行き方、マイカー規制、登山届の義務、白山砂防科学館の案内は甚之助谷砂防施設群のページにまとめてある。

Q&A

Q甚之助谷上流第一六号砂防堰堤はいつ造られましたか。
A昭和8年(1933年)です。翌昭和9年(1934年)の手取川大水害の前年にあたります。
Q甚之助谷上流第一六号砂防堰堤はなぜ価値が高いとされるのですか。
A山崩れが頻繁に起きる急峻な地形にありながら、建設当初の姿をほぼ完全に留めているためです。昭和9年の大出水以前の施設で原形を最もよく保持しているとされています。
Q甚之助谷上流第一六号砂防堰堤の大きさは。
A堤長25.0メートル、堤高4.0メートルです。中流部の堰堤と比べると小ぶりですが、谷幅も狭い位置にあります。
Q甚之助谷上流第一六号砂防堰堤は見学できますか。
A山中の現役施設で拝観料も開館時間もなく、堤体には立ち入れません。別当出合からの登山道を歩いて遠望することになります。
Q甚之助谷上流第一六号砂防堰堤の見どころはどこですか。
A水通し部の笠石が庇状に大きく突き出している点です。白山の直轄砂防でも初期にしか見られない特徴が、ここでは形を保っています。

基本情報

名称甚之助谷上流第一六号砂防堰堤
所在地石川県白山市白峰
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成24年(2012年)2月23日登録
員数1基
寸法堤長25.0メートル、堤高4.0メートル
所有者石川県
公開状況屋外の現役施設。登山道からの遠望のみ

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 甚之助谷上流第一六号砂防堰堤
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009146
国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 15施設が国の登録有形文化財に登録
https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/hakusansabo/03history/touroku.html
国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 白山砂防事業の歴史
https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/hakusansabo/03history/history01.html
国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 甚之助谷砂防堰堤群が土木遺産に認証
https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/hakusansabo/03history/isan01.html
石川県 白山登山ピーク時の交通規制について
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/hakusan/tozaninf/peak2.html
石川県 白山の登山届の提出の義務化について
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/bousai/bousai_g/hakusan_kazan/jorei.html

最終更新日: 2026.09.17