標高2,100メートルの空積み

甚之助谷第二号谷止工は、石川県白山市白峰の甚之助谷、標高2,100メートルの高所にある大正4年(1915年)築造の谷止工で、平成24年(2012年)2月23日に登録有形文化財として登録された。堤長13.3メートル、堤高5.5メートルの石造で、モルタルを使わない空積とする。

同じ日に登録された甚之助谷の13基のうち、大正期のものはこれだけである。他の12基は昭和7年(1932年)から昭和13年(1938年)にかけての築造だから、17年以上の開きがある。白山の砂防が国の直轄事業になる前、石川県が自ら施工していた最初期の施設が甚之助谷第二号谷止工にあたる。

白山砂防の出発点として

白山の砂防は、明治43年(1910年)に石川県知事が柳谷の荒れた斜面を見たことに始まり、大正元年(1912年)から甚之助谷と柳谷で工事が始まった。その3年後の施設がこの谷止工である。大正3年(1914年)と大正8年(1919年)の集中豪雨でそれまでの工事はほとんど破壊されたから、初期の施工物で今も残るものは多くない。

金沢河川国道事務所は、これが白山砂防で最初に造られた谷止工のひとつであり、標高2,000メートルを超える高地の施設として当時の日本で最も高い場所にある砂防施設だったとしている。登録有形文化財は届出制の緩やかな保護措置で、許可制の指定制度とは別の仕組みである。甚之助谷第二号谷止工は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。

モルタルを使わない石積み

堤体は石造で、現地で採取し加工した石を精緻に積み上げている。目地にモルタルを入れる練積の堰堤とは異なり、ここでは石と石を噛み合わせるだけの空積が採られた。標高2,100メートルという場所柄、セメントを担ぎ上げるより、足元の石を割って積むほうが理にかなっていたのだろう。

下流側の法面は、流路の形に合わせて両翼部より凹ませてある。水を中央へ集めて落とすための形で、堤長13.3メートル、堤高5.5メートルという寸法に対して、横幅より高さが勝る縦長の姿になっている。昭和期の堰堤が横に長い壁であるのと、見た目からして違う。

見学方法

甚之助谷第二号谷止工は山中の現役施設で、堤体に立ち入ることはできない。堰堤のそばに見学設備や解説板は置かれていない。13基の中でもっとも高い標高2,100メートル付近にあり、別当出合から砂防新道を甚之助避難小屋まで登り、そこから南竜ヶ馬場へ向かう南竜道に入った先の高さにあたる。中流部の堰堤群を見るより、さらに時間と体力を要する。

撮影を禁じる掲示は確認できない。高山帯にあたるため天候の変化が速く、残雪の時期には近づけない。谷への行き方、マイカー規制、登山届の義務、白山砂防科学館の案内は甚之助谷砂防施設群のページにまとめてある。

Q&A

Q甚之助谷第二号谷止工はいつ造られましたか。
A大正4年(1915年)です。甚之助谷に13基ある登録有形文化財の中で唯一の大正期の施設で、他の12基より17年以上古いものです。
Q甚之助谷第二号谷止工の空積とは何ですか。
Aモルタルやセメントを使わず、石を噛み合わせて積む工法です。標高2,100メートルの現場で採取し加工した石が用いられています。
Q甚之助谷第二号谷止工の大きさは。
A堤長13.3メートル、堤高5.5メートルです。横幅より高さが勝る縦長の姿で、昭和期の横長の堰堤とは形が異なります。
Q甚之助谷第二号谷止工は見学できますか。
A山中の現役施設で拝観料も開館時間もなく、堤体には立ち入れません。標高2,100メートル付近にあり、別当出合から甚之助避難小屋を経て南竜道に入った先の高さにあたります。
Q甚之助谷第二号谷止工と砂防堰堤は何が違うのですか。
A谷止工は谷の縦の侵食を止めるために設けられる施設で、この一基は石造の空積です。同じ谷の砂防堰堤は昭和期のコンクリート造で、練積の堤体をもちます。

基本情報

名称甚之助谷第二号谷止工
所在地石川県白山市白峰
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成24年(2012年)2月23日登録
員数1基
寸法堤長13.3メートル、堤高5.5メートル
所有者石川県
公開状況屋外の現役施設。登山道からの遠望のみ

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 甚之助谷第二号谷止工
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009145
国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 15施設が国の登録有形文化財に登録
https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/hakusansabo/03history/touroku.html
国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 白山砂防事業の歴史
https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/hakusansabo/03history/history01.html
国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 甚之助谷砂防堰堤群が土木遺産に認証
https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/hakusansabo/03history/isan01.html
石川県 白山登山ピーク時の交通規制について
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/hakusan/tozaninf/peak2.html
石川県 白山の登山届の提出の義務化について
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/bousai/bousai_g/hakusan_kazan/jorei.html

最終更新日: 2026.09.17