釈尊院五輪塔とは

釈尊院五輪塔(しゃくそんいんごりんとう)は、岩手県西磐井郡平泉町平泉の中尊寺山内、釈尊院の墓地に立つ平安時代後期の石造五輪塔で、仁安4年(1169年)の銘をもち、昭和29年(1954年)9月17日に国の重要文化財に指定された。

所有者の釈尊院は、天台宗の中尊寺を構成する山内の院のひとつである。文化庁のデータベースでは管理団体を宗教法人中尊寺としており、五輪塔の保護は中尊寺が担っている。員数は1基。中尊寺のなかでも金色堂より奥、参拝路から少し外れた小さな墓地に置かれている。

五輪塔は、下から地輪・水輪・火輪・風輪・空輪の5つの石を積み、方形・円形・三角形・半月形・宝珠形で地・水・火・風・空の五大を表す供養塔である。平安時代後期に密教の思想とともに広まり、のちには墓標として全国に数多く建てられた。釈尊院五輪塔は、その形式が日本に定着しはじめたころの姿を年紀とともに伝える点で特別な存在になっている。

釈尊院五輪塔が重要文化財である理由

文化庁のデータベースは、釈尊院五輪塔の構造を「石造五輪塔」とし、台座に「仁安四年□丑四月二十三日」の刻銘があると記す。干支の上の1字は判読できないが、仁安4年の干支は己丑にあたる。造立の日付がここまで具体的に読める五輪塔はきわめて少ない。

平泉町は、釈尊院五輪塔と願成就院宝塔の2基をともに奥州藤原氏の全盛期に造られた石塔とし、同じ時代の遺例は全国でも珍しいと紹介している。そのうえで釈尊院五輪塔を、年号の刻まれた五輪塔のなかで最古のものと位置づけている。仁安4年は、長治2年(1105年)に藤原清衡が中尊寺の造営を始めてからおよそ60年後で、三代秀衡が平泉を治めていた時期にあたる。

石造の五輪塔は鎌倉時代以降に急速に数を増やし、現存するものの大半は13世紀より後の作である。平安時代の年紀をもつ1基が平泉に残っていることは、五輪塔という形が都から遠い奥州にも早くから届いていたことを示す手がかりと見ることができる。

釈尊院五輪塔の見どころ

岩手県の文化財解説によれば、釈尊院五輪塔は台座と五輪からなり、台石の下端から空輪の頂までの総高は149.0cmある。5つの輪のうち風輪は失われており、現在は火輪の上に空輪が載る形になっている。人の胸から肩ほどの高さで、写真で想像するより小ぶりに感じるはずだ。

まず目を向けたいのは台座の側面である。同じ解説は、刻銘が台座の側面にあるとしている。塔の本体ではなく台座に年紀を刻んだ点も、この塔を見るときの要所になる。風雨で摩耗した石の面に、仁安の2文字を探しながら見ていくとよい。

岩手県の解説は、地輪・水輪・火輪・空輪のそれぞれ四方に梵字を刻むと記す。五輪塔では一般に、輪ごとに地・水・火・風・空を表す梵字(種子)を配するので、塔の周りを歩くと、同じ文字が四面に繰り返され、輪が変わると字が変わる構成が読み取れる。850年あまり屋外に立ってきた石なので、文字は光の向きによって見え方が変わる。

釈尊院五輪塔の見学方法

釈尊院五輪塔のある釈尊院の墓地は、通常の参拝路から外れた立入禁止の区域にある。中尊寺の公式サイトに見学の案内は載っていないが、見学を希望する場合は事前に中尊寺へ問い合わせて許可を受ける必要があるとされる。足元の悪い場所もあるとみられるので、歩きやすい靴で訪れたい。撮影の可否も、許可を受ける際にあわせて確かめておくと安心である。

釈尊院五輪塔は、月見坂を上って本堂と金色堂を過ぎた、さらに奥の釈尊院の墓地にある。許可を得て訪ねる場合も、中尊寺の参拝時間内を前提に連絡したい。参拝時間や境内への行き方は中尊寺のページにまとめてある。

Q&A

Q釈尊院五輪塔はいつ造られ、いつ重要文化財に指定されましたか?
A台座に仁安4年(1169年)4月23日の銘があり、平安時代後期の造立です。昭和29年(1954年)9月17日に国の重要文化財に指定されました。
Q釈尊院五輪塔が「最古の五輪塔」といわれるのはなぜですか?
A平泉町は釈尊院五輪塔を、年号の刻まれた五輪塔のなかで最古のものとしています。年紀のない五輪塔には年代の推定が分かれるものがあるため、「年号のある五輪塔として最古」と理解するのが正確です。
Q釈尊院五輪塔は自由に見学できますか?
A五輪塔のある釈尊院の墓地は立入禁止の区域にあり、自由には入れません。見学を希望する場合は、事前に中尊寺へ問い合わせて許可を受ける必要があるとされます。撮影の可否もその際に確認してください。
Q釈尊院五輪塔は中尊寺のどこにありますか?
A月見坂の参道を上り、金色堂を過ぎたさらに奥の、参拝路から外れた釈尊院の墓地にあります。
Q釈尊院五輪塔はどのくらいの大きさで、どこが欠けていますか?
A岩手県の文化財解説によると総高は149.0cmです。5つの輪のうち風輪が失われており、台座と地輪・水輪・火輪・空輪が残っています。

基本情報

名称釈尊院五輪塔
所在地岩手県西磐井郡平泉町平泉(中尊寺山内 釈尊院墓地)
指定区分重要文化財
指定年昭和29年(1954年)
員数1基
寸法総高149.0cm(岩手県の文化財解説による。風輪は欠失)
所有者釈尊院(管理団体:宗教法人中尊寺)
公開状況立入禁止区域内。見学には中尊寺への事前の問い合わせと許可が必要とされる

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):釈尊院五輪塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/113
文化遺産オンライン:釈尊院五輪塔
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/187953
平泉町世界遺産推進室:平泉の文化財 建造物
https://www.town.hiraizumi.iwate.jp/heritage/property/kenzou.html
関山 中尊寺:参拝のご案内
https://www.chusonji.or.jp/worship/index.html
関山 中尊寺:中尊寺の歴史
https://www.chusonji.or.jp/know/history.html

最終更新日: 2026.10.05