旧菊池家住宅とは 伝承園に建つ南部の曲り家

旧菊池家住宅(旧所在 岩手県遠野市小友町)は、岩手県遠野市土淵町の伝承園に移築された18世紀中頃までの建築とみられる茅葺の曲り家で、昭和51年(1976年)に国の重要文化財に指定された。読みは「きゅうきくちけじゅうたく」である。

曲り家は、人の住む主屋に馬屋をL字形につなげた民家で、旧盛岡藩(南部藩)の領内に広く見られる。旧菊池家住宅はもともと遠野市小友町13地割に建っていた。遠野市の資料によると、菊池家の所有になったのは大正13年(1924年)で、それ以前は高橋氏、大沢氏、山蔭氏と持ち主が移ったと伝わるが、詳しいことはわかっていない。

重要文化財に指定された翌年の昭和52年(1977年)に遠野市が公有化し、昭和53年(1978年)に土淵町の伝承園へ解体移築した。建物は主屋部分が桁行20.3メートル、梁間9.1メートル、南へ突き出した曲り部分が桁行8.6メートル、梁間7.6メートルで、屋根はいずれも寄棟造の茅葺である。

旧菊池家住宅が重要文化財に指定された理由

文化庁の解説は、旧菊池家住宅を、曲り家がどのようにして生まれたかを建物から読み取れる貴重な遺構と評価している。この家は、はじめから曲り家として建てられたのではない。

昭和54年(1979年)刊行の保存修理工事報告書をもとに遠野市が公開している解説によれば、当初の旧菊池家住宅は桁行9間(17.6メートル)の直家(すごや)、つまり棟が1本でまっすぐ通る民家だった。のちに土間を1間半(2.9メートル)広げ、そこに曲り部分をつくったと推定されている。曲り家になったのはかなり早い時期とみられ、もとの直家の骨組みを残したまま形を変えた経過が、建物そのものから読み取れる。

構造にも古い手法が残る。もとの直家の東北と西北の隅では、火打梁を架けて上屋の隅柱を省いている。報告書はこの火打梁の使い方を類例の少ないものとしている。小屋組は叉首(さす)で組み、棟束を立てない。部材は釿(ちょうな)や斧(よき)で仕上げられている。

建築年代を直接示す資料はない。他の民家と形式・手法を比べた結果、18世紀中頃を降らないものと判断されている。

旧菊池家住宅の見どころ 閉じた外観と曲り部分の土間

外から眺めると、壁が多く窓の少ない構えに気づく。報告書は、曲り家になった時点の姿として、正面以外の外まわりがすべて大壁で、正面も「おもてざしき」の東寄り1間だけが引違いの開口だったと復原している。閉鎖性の強い外観は、旧菊池家住宅の古さを示す手がかりの一つである。

間取りは旧盛岡藩域南部の曲り家に一般的なものだ。最も上手に前後2室の座敷が続き、その下手に寝室2室と「とおりのま」が並ぶ。さらに裏寄りの広い「じょうい」と表寄りの「ちゃのま」があり、「じょうい」の下手では「だいどころ」が土間に張り出す。曲り部分は土間で、その一部が馬屋になっている。家の出入口である大戸口は、曲り部分の内側に付く。

大戸口から入ると、土間の片側に馬屋が、もう一方に家族の居場所が向き合う配置がわかる。人と馬が同じ屋根の下で暮らした遠野の農家の姿を、建物の中で確かめられる。伝承園によれば、屋内には往時の農家の調度品や民具が置かれている。

屋根にも注目したい。平成26年(2014年)7月から11月にかけて、移築以来36年ぶりに茅葺屋根の全面葺替えが行われた。茅の大部分は遠野市内で生産されたもので、棟に土と草をのせる芝棟の芝も貼り替えられた。主屋部分の礎石上端から大棟の頂上までは約7.7メートルある。

旧菊池家住宅の見学方法とアクセス

旧菊池家住宅は、遠野市の施設である伝承園の園内にあり、入園すれば外観と内部を見学できる。伝承園の案内では、曲り家の奥の細い廊下は千体のオシラサマをまつる御蚕神堂(オシラ堂)へ通じており、オシラ堂へは旧菊池家住宅の中を通って入る。

入園料は一般450円、高校生以下350円で、未就学児は無料である。開園時間は3月から11月が午前9時から午後5時(入園受付は午後4時30分まで)、12月から2月が午前9時から午後4時(入園受付は午後3時30分まで)。年末年始と、1月・2月の毎週火曜日は休みになる。

JR釜石線の遠野駅からは約4.9キロ離れている。バスを使う場合は土淵線で「伝承園」停留所を利用する。車なら釜石自動車道の遠野インターチェンジから約12.1キロ、17分ほどで、無料駐車場(乗用車100台、バス8台)がある。

伝承園では、旧菊池家住宅の囲炉裏を囲んで語り部の昔話を聞く催しを予約制で行っている。撮影の可否については公式の案内に記載がないので、受付で確かめてから撮るとよい。

Q&A

Q旧菊池家住宅はいつ建てられたものですか?
A建築年代を直接示す資料はありませんが、他の民家との比較から18世紀中頃を降らないものとされています。当初は直家で、建てて間もない時期に曲り部分が加えられたと推定されています。
Q旧菊池家住宅はどこにありますか?小友町では見られないのですか?
A旧菊池家住宅は遠野市小友町から昭和53年(1978年)に移築され、現在は遠野市土淵町の伝承園の中に建っています。
Q旧菊池家住宅の見学料金と開園時間は?
A伝承園の入園料は一般450円、高校生以下350円です。開園は3月から11月が午前9時から午後5時、12月から2月が午前9時から午後4時で、年末年始と1月・2月の火曜日は休みです。
Q旧菊池家住宅が曲り家の歴史で貴重とされるのはなぜですか?
Aはじめ直家として建てられ、のちに土間を広げて馬屋の曲り部分を加えた経過が建物に残っているためです。文化庁は、曲り家の発生過程をうかがえる遺構として評価しています。
Q旧菊池家住宅の中には入れますか?オシラ堂との関係は?
A旧菊池家住宅は内部まで見学できます。オシラ堂(御蚕神堂)へは、曲り家の奥の廊下を抜けて入る順路になっています。

基本情報

名称旧菊池家住宅(旧所在 岩手県遠野市小友町)
所在地岩手県遠野市土淵町第6地割5番地3号(伝承園内)
指定区分重要文化財
指定年昭和51年(1976年)
員数1棟
寸法桁行20.3m、梁間9.1m、南面突出部 桁行8.6m、梁間7.6m
所有者遠野市
公開状況公開(伝承園内、入園料一般450円)

参考文献

国指定文化財等データベース 旧菊池家住宅(旧所在 岩手県遠野市小友町)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/104
文化遺産オンライン 旧菊池家住宅(旧所在 岩手県遠野市小友町)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/120914
遠野市 重要文化財旧菊池家住宅(伝承園内)について
https://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/48,30610,303,html
遠野時間(遠野市観光情報サイト) 伝承園
https://tonojikan.jp/tourism/denshoen/
遠野伝承園 園内
https://www.densyoen.jp/park
遠野伝承園 伝承園について
https://www.densyoen.jp/about

最終更新日: 2026.10.05