灯台を支える実務の建物
灯台は塔だけで成り立つものではない。十九世紀の末から二十世紀にかけて光を灯し続けるには、灯油や道具、予備の部品と、それらを収める場所が要った。男木島では、その役目を担ったのが庵治石の灯塔のすぐ南に北面して建つ低い煉瓦造の建物である。明治28年(1895年)に灯台とともに竣工し、光を保つための日々の仕事をこなしてきた。
令和3年(2021年)10月14日、登録有形文化財に登録された。
煉瓦とトラスと二つの部屋
建物は煉瓦造平屋建で、寄棟造桟瓦葺、建築面積はおよそ36平方メートル。内部は桁行を二分し、東を休憩室、西を倉庫として使い分ける。外壁はモルタル塗で、石目地を刻んで隣の灯台の石造の意匠に呼応させている。屋根を受けるのはキングポストトラスで、明治期に西洋の建築技術とともに伝わった小屋組である。
どちらの部屋かは扉が教えてくれる。休憩室には採光のための片開きガラス扉が二所、倉庫には荷を通せる両開きの扉がつく。こうした小さな違いに、見せるためではなく、稼働する施設の日々の段取りに合わせて設計された建物であることが読み取れる。
見どころ
まず外壁のモルタルの目地に目を向けたい。石積みを思わせる線が刻まれ、この質素な煉瓦の小屋を、仕えるべき庵治石の灯塔と視覚的に結びつけている。次に屋根の形に注目する。四方に葺きおろす寄棟で、桟瓦を葺き、島の風雨を偏りなく受け流す。
昭和62年(1987年)に灯台は無人化され、この部屋が担っていた仕事も移っていった。建物は灯台施設群の一部として、古い官署の実務の側面をよく残す点で評価されている。すぐ近くには旧官舎を改めた小さな資料館があり、二つを一度の訪問で見て回れる。
Q&A
- この建物は何に使われていましたか。
- 灯台施設の一部で、休憩室と倉庫に分かれていました。光を灯し続けるための物資や作業の場を備えた建物です。
- キングポストトラスとは何ですか。
- 中央に垂直の束を立てる洋式の小屋組で、明治期に西洋建築とともに伝わりました。室内に柱を立てずに屋根を架けられます。
- なぜ煉瓦に線が刻まれているのですか。
- モルタル仕上げに石の目地を模した線を刻んだもので、隣に建つ庵治石の灯台と調和させています。
- 内部に入れますか。
- 倉庫は島北端の灯台敷地内にあります。近くの旧官舎は資料館として公開されており、見学可能な範囲は現地の案内で確認してください。
基本情報
| 名称 | 男木島灯台旧倉庫(おぎしまとうだいきゅうそうこ) |
|---|---|
| 所在地 | 香川県高松市男木町字洲鼻1062-3 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録年月日:令和3年(2021年)10月14日 |
| 構造・規模 | 煉瓦造平屋建、建築面積約36平方メートル、1棟 |
| 建設 | 明治28年(1895年) |
| 所有 | 高松市 |
| アクセス | 高松港からフェリーで男木島へ。島の北端に位置 |
参考文献
- 文化庁 近代の文化遺産の保存と活用 男木島灯台旧倉庫
- https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/043/index.html
- 文化庁 近代の文化遺産の保存と活用 男木島灯台
- https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/041/index.html
最終更新日: 2026.07.10