海に面して灯台敷地を支える石垣
高松港の北に浮かぶ男木島の北端、備讃瀬戸を望む海岸に、明治28年(1895年)竣工の石造灯台が建つ。その敷地の海側を造成しているのが、緩やかに弧を描いて延びる石垣である。延長はおよそ78メートル。地元の庵治・牟礼で切り出された庵治石を積み上げ、風波にさらされながら一世紀以上にわたって敷地の縁を保ってきた。
令和3年(2021年)10月14日、男木島灯台に関わる複数の構造物とともに登録有形文化財となった。
擁壁が文化財として評価された理由
擁壁が単独で文化財に登録される例は多くない。そこがこの石垣の面白いところでもある。評価の核にあるのは施工の質だ。石垣は谷積とされ、略方形に加工した庵治石を勾配をつけて積む。目地はあえて整えず不整のまま通し、要所には水抜穴を設けて、その一つひとつも庵治石で成形している。衝撃を正面から受け止めるのではなく受け流す、海辺の擁壁にかなった手法である。
灯台そのものは、日本人技師の山本哉三郎が外国人の指導を仰がず設計したもので、初期の灯台の多くが外国人技師の手によった時代にあって特筆される。令和8年(2026年)1月には男木島灯台とその関連施設が国の重要文化財に指定され、この石垣もその一群に含まれる。幾度もの荒天に耐えてきた堅実な施工と、海側の景観を灯台とともに構成する役割が評価されている。
見どころ
石垣の裾に立ち、弧を目で追ってほしい。線はまっすぐではなく海岸線に沿って湾曲する。型に流し込むように積むことができず、石を一つずつ据えていった理由がここにある。目地に注目すると、整然と段をなさず不整に通っているのがわかる。荷重を一様に伝えないこの粗さが、かえって石垣を長もちさせている。
面に穿たれた水抜穴も探したい。石垣の背後にたまる雨水や浸潤水を逃がすための開口で、いずれも庵治石で他の部分と揃うように仕上げてある。すぐ先にそびえる無塗装の白い灯台と合わせて眺めると、石垣は境界というより、この情景全体を載せる土台に見えてくる。
Q&A
- 男木島灯台石垣とはどのようなものですか。
- 男木島北端の灯台敷地の海側を造成する、延長約78メートルの庵治石の石垣です。敷地を支え、令和3年に登録有形文化財となりました。
- 庵治石とは何ですか。
- 高松市の庵治・牟礼一帯で採れる良質な花崗岩で、石材として古くから重んじられてきました。灯台本体にも同じ石が用いられています。
- 石垣は間近で見られますか。
- 島の北端にある灯台敷地は歩いて巡ることができ、石垣は海側の縁に沿って続きます。男木島へは高松港からフェリーで渡ります。
- 谷積とはどんな積み方ですか。
- 石を斜めに据えて目地がV字に交わるように積む方法で、力を受け流す働きがあります。水や土圧のかかる擁壁によく用いられます。
基本情報
| 名称 | 男木島灯台石垣(おぎしまとうだいいしがき) |
|---|---|
| 所在地 | 香川県高松市男木町字洲鼻1062-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録年月日:令和3年(2021年)10月14日 |
| 構造・規模 | 石造、延長約78メートル、1基 |
| 建設 | 明治28年(1895年) |
| 所有 | 第六管区海上保安本部 |
| アクセス | 高松港からフェリーで男木島へ。島の北端に位置 |
参考文献
- 文化庁 近代の文化遺産の保存と活用 男木島灯台石垣
- https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/045/index.html
- 文化庁 近代の文化遺産の保存と活用 男木島灯台
- https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/041/index.html
最終更新日: 2026.07.10