屋敷地北西隅に建つ土佐の土蔵

まず目に入るのは、壁を二段に廻る瓦の列である。水切瓦と呼ばれるこの瓦は、雨を下の漆喰から離して落とすためのもので、この建物が土佐の産であることを一目で示す。にわか雨や台風の多い四国のこの地では、そうした気候が建て方を決めてきた。寺村徳夫家住宅蔵は屋敷地の北西隅部に位置し、切石積の基礎の上に南北棟で建つ。

桁行三間・梁間二間の二階建土蔵で、切妻造に桟瓦を葺き、平入に戸口を開く。東面には下屋を差し掛けて戸口を設ける。外部は腰を縦板張とし、上部は軒裏まで土佐漆喰で塗り上げる。厚い石灰の塗り壁が、この地の土蔵に白く固い肌を与えている。

登録の理由

蔵が国の登録有形文化財となったのは平成17年(2005)7月12日、登録番号は39-0185で、同じ敷地の五棟がこの年に一括登録された。登録の基準は他の四棟とわずかに異なり、文化庁はこれを景観への寄与ではなく「造形の規範となっているもの」とする。この地方の土蔵の典型をよく体現していることへの評価である。

土蔵は何よりも火に対する金庫であった。厚い土壁を漆喰で塗り固めることで、木造家屋の続く一画を走る炎に耐え、家財や蓄えはその奥に納められた。二段の水切瓦は装飾だけではなく、多雨のもとでその漆喰が削られるのを防ぐ。明治後期の建築で、蔵は仕えた主屋と同じ普請の一環に属する。

見どころ

このような土蔵は、五藤家の家臣たちの屋敷が並んだ土居廓中を特徴づける要素のひとつである。五藤家は土佐藩の家老を務めた家柄で、地区が平成24年(2012)に国の重要伝統的建造物群保存地区となった際、各敷地の隅に納まるこうした土蔵も、残すべき要素のひとつに数えられた。

前に立ったら、まず二段の水切瓦がどのように建物を巻くかを追ってみたい。次に、腰の板張と上の滑らかな漆喰とを見比べる。実用から生まれたこの塗り分けは、道からもはっきり読み取れる。蔵は個人住宅の一部で内部には入れないが、外観こそがすべてで、土佐の土蔵たる要点はすべて外に現れている。

Q&A

Q壁の瓦の帯は何ですか。
A水切瓦です。雨を漆喰から離して落とすために二段に設けられており、土佐地方の土蔵を特徴づける造りです。
Q蔵は何のためのものですか。
A土蔵として家財や貴重品を守るためのもので、とりわけ木造家屋の続く地区で広がりやすい火から守る役割がありました。
Q内部は見られますか。
A見られません。個人住宅の一部のため外観のみです。地区内では野村家住宅が無料で公開されています。
Q大きさはどのくらいですか。
A建築面積約22平方メートル、桁行三間・梁間二間の小ぶりな二階建土蔵で、切妻の瓦屋根を載せます。
Q地区へはどう行きますか。
Aごめん・なはり線の安芸駅からレンタサイクルで約15分、または安芸元気バスで野良時計前下車すぐです。高知龍馬空港からは車で約40分です。

基本情報

名称寺村徳夫家住宅蔵(てらむらのりおけじゅうたくくら)
所在地高知県安芸市土居993-1
区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 39-0185
登録年月日平成17年(2005)7月12日(告示 8月2日)
員数1棟
構造土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約22㎡、木戸門付
年代明治後期(1868〜1911)
アクセスごめん・なはり線安芸駅からレンタサイクル約15分。土居廓中伝統的建造物群保存地区内
備考個人住居のため外観のみ

References

国指定文化財等データベース — 寺村徳夫家住宅蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004839
安芸市 — 安芸市土居廓中伝統的建造物群保存地区
https://www.city.aki.kochi.jp/life/dtl.php?hdnKey=1381
こうち旅ネット — 土居廓中
https://kochi-tabi.jp/search_spot_sightseeing.html?id=802

最終更新日: 2026.07.05