参拝が始まる、昭和18年の手水舎

網野神社の南の参道を入ってすぐ、道の脇に、石の水盤を覆う小さな吹き放ちの建物がある。手水舎である。参拝者が神前へ進む前に手と口をすすぐ場所だ。面積はおよそ6.1平方メートルと小ぶりだが、確かな信念をもって建てられており、社が平成21年(2009年)に文化財として登録した8棟の一つでもある。

この手水舎は昭和18年(1943年)の建築で、この年は社にとって節目だった。同年、網野神社は府社に昇格し、それを記念して新たな建物が建てられた。この手水舎もその一つである。記録によれば、設計は京都府の技手・風間利之、施工は京都市出身の大工・奥谷熊之輔が担った。

小さくとも、力強いつくり

2009年の登録は、網野神社を単体の記念物ではなく、まとまりのある一群として認めた。手水舎がその群に加わる資格は、その木工の確かさにある。桁行一間・梁間一間、四方を吹き放ち、どの方向からも水盤に手が届く。屋根は南北棟の切妻造で、銅板で葺かれている。

意匠には、意図された重厚さがある。方柱は大きく面を取り、切石の礎石の上に据えられ、内法貫で固められる。柱の上に舟肘木を置いて桁や梁を支え、頭上には一軒疎垂木を化粧屋根裏としてあらわす。妻には蟇股を置く。これほど小さな建物にしては、その効果は繊細というより、頑丈で地に足のついたものだ。

参拝で使うには

手水舎は、ただ眺めるためのものではない。使うためのものだ。着いたら柄杓を取り、左手をすすぎ、次に右手を、手に受けた水で口を清め、最後に柄杓の柄に水を伝わせてから戻す。どの神社でも変わらぬ清めの手順である。昭和18年に架けられた銅板の屋根の下でこれを行えば、ささやかな日々の作法が、登録文化財という一片の遺産と結びつく。

境内は誰にでも無料で開かれ、決まった時間もない。社に参れるときはいつでも水盤に手が届く。ここから道は、北の社殿の前を通って続いていく。

Q&A

Q手水舎とは何ですか。
A水盤を納めた建物で、参拝者が祈る前に手と口を清める場所です。ここのように、参道の近くに置かれるのが通例です。
Qいつ、なぜ建てられたのですか。
A昭和18年(1943年)、網野神社が府社に昇格した際に建てられました。この手水舎を含む新たな建物が、その節目を記念しています。
Q誰が設計したのですか。
A京都府の技手・風間利之が設計し、京都市出身の大工・奥谷熊之輔が施工しました。
Q水盤は使えますか。
Aはい。ここで手と口を清めるのが参拝を始める習わしです。境内は無料で自由に参拝できます。

基本情報

名称網野神社手水舎(あみのじんじゃてみずしゃ)
所在地京都府京丹後市網野町網野789-1他
指定区分登録有形文化財(平成21年8月25日登録、登録番号26-0340)
員数1棟
構造及び形式木造、桁行一間梁間一間・四方吹放ち、切妻造銅板葺、面積約6.1平方メートル
年代昭和18年(1943年)/平成4年改修
所有者宗教法人網野神社
参拝境内自由・無料。網野駅から徒歩約30分

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 網野神社手水舎
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007761
京丹後歴史文化めぐりマップ — 網野神社
https://kyotango-rekishibunka.jp/spot/165
京丹後市 文化財保護 — 網野神社
https://www.city.kyotango.lg.jp/top/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/3/1/2/3309.html

最終更新日: 2026.07.03