河井寬次郎記念館の成り立ち

河井寬次郎記念館は、京都市東山区五条坂にある陶工河井寬次郎(1890〜1966年)の旧住居兼工房で、大正9年(1920年)に構えた窯場に昭和12年(1937年)建築の主屋などが並び、主屋・陶房・小間・素焼窯・登り窯の5件が平成12年(2000年)に登録有形文化財に登録された。

読みは「かわいかんじろうきねんかん」。登録名称は「河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)」に棟名を続けた形をとり、館は英語名を Kawai Kanjiro's House としている。人名は「河井寛次郎」と新字で書かれることも多い。寬次郎はこの窯を「鐘溪窯(しょうけいよう)」と名付けた。

島根県安来町の大工棟梁の家に生まれた寬次郎は、東京高等工業学校の窯業科を出て京都市の陶磁器試験場に入り、釉薬の研究を重ねた。大正9年(1920年)、五代清水六兵衞が五条坂鐘鋳町に持っていた窯を自らのものとして独立する。文化庁の人物解説によれば、住居と陶房も同じ地所に構え、窯は他の陶家も使う共同窯であった。

いま見る主屋は、室戸台風で当初の住まいが傷んだことを受けて建て直したものである。設計は寬次郎自身、施工は郷里安来の大工である兄の河井善左衛門と京都市は紹介している。寬次郎の没後、昭和48年(1973年)から河井寬次郎記念館として公開されている。

河井寬次郎記念館の屋敷の配置

敷地は東西に細長い。西の路地に面して主屋が建ち、奥へ進むと中庭、その先に工房の建物が続く。文化庁の解説によれば、登り窯は屋敷地の東端にあり、素焼窯は陶房の東に接する木造平屋の土間の中に築かれている。

河井寬次郎記念館の見学の順路は、仕事の順番をそのままたどる形になる。通りの主屋から入って吹き抜けの広間を見たあと中庭へ出ると、二畳の小間がある。さらに奥へ進むと、轆轤を挽いた陶房、成形した器を最初に焼く素焼窯、本焼きの登り窯が順に現れる。

京都市は平成28年(2016年)、河井寬次郎記念館を景観重要建造物と歴史的風致形成建造物に選んでいる。市の紹介記事は、五条坂一帯の清水焼の歴史と結びつく「文化・芸術のまち京都」の建物の一つとして記念館を挙げる。

河井寬次郎記念館の登録5件

5件は平成12年(2000年)4月28日にそろって登録有形文化財に登録された。登録番号は26-0061から26-0065までの連番である。住まいにあたる主屋・陶房・小間は「造形の規範となっているもの」、素焼窯と登り窯は「再現することが容易でないもの」が登録基準になっている。

  • 河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)主屋:昭和12年(1937年)、木造2階建、瓦葺、建築面積148㎡
  • 河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)小間:昭和12年(1937年)、木造平屋建、瓦葺、建築面積11㎡
  • 河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)陶房:昭和4年(1929年)頃、木造平屋建、瓦葺、建築面積54㎡
  • 河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)素焼窯:昭和初期、煉瓦造、奥行1.8m、幅1.6m
  • 河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)登り窯:明治期、煉瓦造、奥行15m、幅4.8m

もっとも古いのは登り窯で、寬次郎が譲り受ける前から五条坂にあった。陶房は主屋の新築に先立って建てられたと伝わり、主屋と小間は昭和12年に続く。窯の2件だけが煉瓦造で、ほかの3件は瓦屋根の木造である。

河井寬次郎記念館の見学と行き方

河井寬次郎記念館は午前10時から午後5時まで開館し、入館の受付は午後4時30分までである。休館日は月曜日で、祝日にあたるときは開館して翌日が休みになる。夏期と冬期にもまとまった休館期間がある。入館料は大人1,000円、高校生・大学生500円、小学生・中学生300円である(2026年10月時点の公式案内による)。

小規模な民間の施設のため、団体での来館は基本的に受け付けていない。平日に限り、7〜10名までのグループは事前の電話予約で相談できる。駐車場はないので公共交通で訪ねたい。

最寄り駅は京阪電車の清水五条駅で、2号出口の階段から東へ向かい、徒歩約10分。京都駅からは市バス206系統、四条河原町からは207系統で「馬町」に降りると徒歩1分ほどである。馬町の交差点から西へ向かい、一筋目の路地を北へ入る。

見学は主屋から登り窯まで敷地全体に及び、各棟の様子と見どころはそれぞれのページにまとめた。館内での撮影の可否は公式には案内されていないため、受付で尋ねてほしい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001715
国指定文化財等データベース(文化庁)河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)陶房
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001716
国指定文化財等データベース(文化庁)河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)小間
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001717
国指定文化財等データベース(文化庁)河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)登り窯
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001718
国指定文化財等データベース(文化庁)河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)素焼窯
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001719
文化遺産オンライン 河井寬次郎記念館(旧河井寬次郎邸)主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/148325
アートプラットフォームジャパン(文化庁)日本アーティスト事典 河井寬次郎
https://artplatform.go.jp/ja/artists/A1263
京都市 歴史的建造物の魅力を御紹介します
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000305675.html
京都市 京都市の歴史的建造物 河井寬次郎記念館(PDF)
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000305/305675/b03kanjiro.pdf
まっぷるトラベルガイド 清水寺周辺で人気のおすすめスポット
https://www.mapple.net/article/37816/

最終更新日: 2026.10.15

基本情報

名称河井寬次郎記念館
所在地京都府京都市東山区馬町通大和大路東入鐘鋳町569他
指定登録有形文化財 5件
座標34.99347, 135.77451