初瀬街道に北面する平入の町家

旧細川家住宅主屋は、三重県名張市新町136にある明治時代前期の町家建築で、平成21年(2009年)1月8日に国の登録有形文化財に登録された。奈良県大宇陀の薬商細川家が名張に構えた家の母屋にあたり、初瀬街道に北面して建っている。

文化庁のデータベースによれば、旧細川家住宅主屋は間口9.7メートル、奥行13メートルの木造2階建で、屋根は切妻造の桟瓦葺である。棟を街道と平行に通して軒先を道に向ける平入の形をとり、建築面積は119平方メートルある。名張市の資料では、2階部分も含めた延床面積を167.42平方メートルとしている。

建てられた時期について、文化庁は明治前期、名張市は江戸時代末期から明治初年と記す。平成20年(2008年)に名張市が改修を行い、観光交流施設「やなせ宿」の中心の建物として使われてきた。

登録の理由

旧細川家住宅主屋は、登録基準のうち「造形の規範となっているもの」に当たるとして登録された。登録番号は24-0074で、同じ屋敷の4件のうち最初の番号を持つ。

文化庁の解説は、旧細川家住宅主屋を宿場町の雰囲気をとどめる平入の町家と位置づけている。評価の手がかりになっているのは、街道に向けた正面の構成である。1階に格子を並べ、2階を土で塗り込めて虫籠窓を開き、両端に卯建を立てる。名張市はこれに低い2階のつし二階を加え、典型的な町家の要素がそろった建物だと説明している。

同じ日に登録された門も造形の規範を理由とする一方、中蔵と川蔵は景観への寄与が理由になっている。屋敷の顔として街道に向き合う旧細川家住宅主屋は、意匠そのものが評価された側に入る。

正面の格子と虫籠窓、袖の卯建

旧細川家住宅主屋の前に立ったら、まず1階の格子を左右に見比べたい。文化庁の解説は、正面の格子を意匠の異なるもので構成していると記している。格子の太さや間隔、上下の切り替えの位置が場所ごとに違い、同じ正面のなかで表情が変わる。

視線を上げると、2階は壁を土で塗り籠めた塗籠の造りで、縦格子状の小さな開口である虫籠窓が並ぶ。つし二階は、一般に物置や使用人の寝間に充てられた天井の低い2階をいい、街道から見上げると2階の背の低さがよく分かる。

正面の両端には卯建が付く。卯建は隣家との境に立てる防火の袖壁で、家の格を示す飾りの意味もあったとされる。北向きの正面は直射日光を受けにくいので、格子や卯建の陰影は時間帯による差が小さく、いつ訪ねても輪郭を追いやすい。

通り土間に沿って並ぶ3室

旧細川家住宅主屋の内部は、表から裏へ抜ける通り庭に沿って3室が一列に並ぶ。名張市の改修資料では、この3室は表から店の間・中の間・奥の間と呼ばれ、中の間には式台、奥の間の先には広縁がある。

店の間で客を迎え、中の間を経て奥の間へ進む並びは、街道に面した商家の典型的な間取りである。主屋の裏には中庭が広がり、その南側に中蔵が建つ。表の商いの場と奥の蔵とが、土間と庭を介してつながる配置である。

見学方法

旧細川家住宅主屋は、令和8年(2026年)4月1日から施設の改修のため最長1年の予定で休館しており、内部には入れない。休館前は店の間から奥の間までを貸館や飲食の場として使っていたが、再開後にどこまで公開されるかは新しい運営者の方針による。

外観は休館中でも見られる。正面は初瀬街道に面しているため、道の向かい側から眺めると格子・虫籠窓・両袖の卯建がひと目で収まる。写真は公道から撮り、車や歩行者の通行を妨げないようにしたい。再開後の内部での撮影の可否は、現地の案内で確かめるのがよい。

Q&A

Q旧細川家住宅主屋はいま中に入れますか?
A入れない。令和8年(2026年)4月1日から改修のため最長1年の予定で休館している。再開の時期は名張市のホームページなどで案内される。
Q旧細川家住宅主屋の外観は休館中でも見られますか?
A見られる。正面が初瀬街道に面しているので、道路から1階の格子、2階の虫籠窓、両袖の卯建を眺めることができる。
Q旧細川家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A文化庁は明治前期、名張市は江戸時代末期から明治初年の建築とする。平成21年(2009年)1月8日に登録された。登録番号は24-0074。
Q旧細川家住宅主屋の見どころはどこですか?
A意匠の異なる格子を組み合わせた1階正面、塗籠の2階に開く大きな虫籠窓、両端の袖卯建である。内部は通り土間に沿って店の間・中の間・奥の間が並ぶ。
Q旧細川家住宅主屋の大きさはどのくらいですか?
A間口9.7メートル、奥行13メートルの木造2階建で、建築面積は119平方メートル。屋根は切妻造の桟瓦葺である。

基本情報

名称旧細川家住宅主屋
所在地三重県名張市新町136
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成21年(2009年)1月8日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積119平方メートル(間口9.7メートル、奥行13メートル)
所有者名張市
公開状況改修のため休館中(2026年から最長1年)。外観は初瀬街道から見学可

参考文献

国指定文化財等データベース 旧細川家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007505
名張市旧細川邸やなせ宿【国登録有形文化財(建築物)】(名張市)
https://www.city.nabari.lg.jp/s044/010/050/10/070/090/270/20150401085353.html
「名張市旧細川邸やなせ宿」施設利活用に係る事業提案事業者の募集と審査結果(名張市)
https://www.city.nabari.lg.jp/s044/010/050/10/20250521154708.html
【別紙2】提案事業により実施する工事の考え方(名張市、PDF)
https://www.city.nabari.lg.jp/s044/010/050/10/bessi-2.kouji.pdf
旧細川邸やなせ宿の運営見直しに伴う一時休館について(名張市)
https://www.city.nabari.lg.jp/s044/010/050/10/070/090/20191011144419.html

最終更新日: 2026.09.29