旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の成り立ち

旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)は、宮城県登米市登米町の寺池金谷にある醤油醸造場の建物群で、明治42年(1909年)に建った事務所と、南蔵・醸造蔵の土蔵2棟の計3件が、令和4年(2022年)6月29日に国の登録有形文化財に登録された。

宮城県の資料によると、櫻井醸造は明治10年(1877年)以降に創業した醸造元で、戦後、敷地と建物の所有が合資会社鈴彦商店に移った。県はこの移転先を「現ヤマカノ醸造」と注記している。

ヤマカノ醸造の沿革をたどると、事情はもう少し込み入っている。鈴彦商店は昭和23年(1948年)に設立された医薬品の卸小売の会社で、昭和30年(1955年)と昭和34年(1959年)の2度にわたって町内の醸造工場を買い取り、同年9月に醸造部門をヤマカノ醸造株式会社として切り離した。鈴彦商店そのものは医薬品の卸売に専念し、のちに株式会社バイタルネットと社名を改めている。

文化庁のデータベースでも、事務所と南蔵の所有者はヤマカノ醸造株式会社、醸造蔵の所有者は株式会社バイタルネットと分かれて記録されている。宮城県が公開している事業者情報では、ヤマカノ醸造は寺池金谷15を工場の所在地の一つに挙げており、旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の敷地はいまも味噌・醤油づくりの現場として使われている。

交差点の三つの角に建つ旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)

旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の3件は、城下町登米の南の外れ、寺池金谷の交差点に面して建つ。文化庁の解説を重ねると、並びは次のようになる。

  • 事務所:角地に北を向いて建つ木造2階建の町家。ほかの2件の位置はこの建物を基準に説明されている
  • 南蔵:事務所から通りを挟んだ西の角地に建つ平屋の土蔵。建築面積174平方メートルは3件のうちでもっとも大きい
  • 醸造蔵:事務所から見て通りを挟んだ北西の角地に建つ平屋の土蔵。屋根に越屋根を2か所載せる

3件はいずれも角地にあり、交差点の角をひとつずつ受け持つ形になっている。事務所の正面に立って北を向くと、左手の通りの向こうに南蔵、左斜め前の角に醸造蔵が見える。事務所から南蔵、醸造蔵へと交差点を時計回りに渡っていけば、3件を順に外から見て回れる。

通りに顔を向けた町家の事務所があり、その向かいに醸造の蔵が2棟並ぶ。醤油屋の表と裏が、一つの敷地の中ではなく交差点をはさんで向き合っている。

旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の3件の登録

旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の3件は、令和4年(2022年)3月18日の文化審議会の答申を経て、同年6月29日に登録有形文化財となった。登録番号は04-0211から04-0213までの連番で、登録基準は3件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

  • 事務所(04-0211):明治42年(1909年)建築、昭和前期改修。木造2階建、瓦葺、建築面積58平方メートル
  • 南蔵(04-0212):明治45年(1912年)建築。土蔵造平屋建、鉄板葺、建築面積174平方メートル
  • 醸造蔵(04-0213):明治後期建築、昭和前期改修。土蔵造平屋建、鉄板葺、建築面積125平方メートル

答申の解説は、事務所を醸造業の「主屋」とし、通りを挟んで建つ2棟の醸造蔵と一体のものとして説明している。宮城県は、交差点に建つこれら明治後期の建物がそれぞれ街路の景観の一角をなしているうえ、いずれも時代の特徴をもつ近代和風建築であり、この地方の商家と土蔵の構造や意匠がどう進んできたかを知ることができると評価している。

登米(とよま)の町とヤマカノ醸造のふたつの敷地

所在地の登米町は「とよままち」と読み、市の名の「とめ」とは読みが分かれる。登米伊達家が13代、およそ300年にわたって治めた城下町で、明治に入ると北上川の舟運による米の集散地として栄えた。

ヤマカノ醸造の本社と工場は、ここから北東へ歩いて500メートルほどの寺池九日町にある。豪商山田家の本家の屋敷を受け継いだ敷地で、令和3年(2021年)に商蔵など6件が旧山田本店(ヤマカノ醸造)として登録されている。宮城県は旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の3件を、それに続くヤマカノ醸造の登録と紹介している。同じ会社が町の中の離れた2か所で、それぞれ別の家から受け継いだ醸造の建物を使い続けていることになる。

旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)への行き方と見学の条件

公共交通なら、仙台市の「県庁市役所前」か「仙台駅(旧さくら野前32番)」から東日本急行の高速バス「仙台・とよま線」に乗り、「とよま明治村」で降りる。下りは毎日3便で、県庁市役所前を午前10時に出る便はとよま明治村に午前11時35分に着く。運賃は現金払いのみで、予約は要らない(2026年10月確認)。同じ会社の「登米市役所前」行きは迫町へ向かう別の路線なので、乗り違えないようにしたい。

とよま明治村のバス停から旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の事務所までは、町の中を南西へ約550メートル、歩いて8分ほどである。車の場合は三陸自動車道の登米ICが最寄りで、とよま振興公社の案内では登米ICから町の中心部まで約4分とされる。

旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)の3件には、内部公開や見学受け入れの案内が見当たらない。3件とも交差点に面しているため、外観は公道から眺められる。敷地に入ったり、工場の出入りの妨げになる場所に車を止めたりするのは避けたい。見学について尋ねたいことがあれば、事前にヤマカノ醸造(電話0220-52-2511)に問い合わせるとよい。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)事務所
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014225
文化庁 国指定文化財等データベース 旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)南蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014226
文化庁 国指定文化財等データベース 旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)醸造蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014227
文化庁 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)について(令和4年3月18日、PDF)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/93681601_01.pdf
宮城県 登録有形文化財(建造物)の登録が答申されました
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/bunkazai/touroku220318.html
宮城県 今回登録される建造物の概要(PDF)
https://www.pref.miyagi.jp/documents/38178/20220318touroku_gaiyou.pdf
宮城県 つながる みやぎのOEMサイト ヤマカノ醸造株式会社
https://www.pref.miyagi.jp/site/miyagi_oem/jigyosha/detail50.html
登米市 教育委員会・文化財一覧
https://www.city.tome.miyagi.jp/bunkazai/kurashi/kosodate/kyoikuinkai/shakaikyoiku/bunkazai.html
ヤマカノ醸造株式会社 ヤマカノについて(会社概要・沿革)
https://www.yamakano.co.jp/about.html
とよま振興公社 みやぎの明治村「登米町(とよままち)」とは
https://toyoma.co.jp/about/
東日本急行株式会社 仙台・とよま線
https://higashinippon.co.jp/toyoma/

最終更新日: 2026.10.03

基本情報

名称旧櫻井醸造(ヤマカノ醸造)
所在地宮城県登米市登米町登米字寺池金谷15
所有者ヤマカノ醸造株式会社
指定登録有形文化財 3件
座標38.65101, 141.27916