堂内に建つ小さな建築

大法寺観音堂厨子及び須弥壇は、長野県小県郡青木村当郷の大法寺観音堂に安置される室町時代前期の厨子と須弥壇で、昭和27年(1952年)7月19日に国の重要文化財に指定された。指定番号01172、員数は1具。文化庁のデータベースでは棟名欄に「須弥檀」の表記も併用されている。

二つの器物がひとつの指定を分け合っている。厨子は仏像を納める容器だが、箱ではなく建築の縮尺模型として造られる。須弥壇はその厨子を載せる壇であり、名は仏教世界観の中心にそびえる須弥山に由来する。

構造及び形式等の記載は簡潔である。厨子は「一間厨子、入母屋造、本瓦形板葺」。柱間ひとつ分の規模に、切妻より格の高い入母屋の屋根を架け、屋根は板を本瓦の形に削り出して葺く。平瓦と丸瓦が交互に走る本葺きの起伏を、木工が板から彫り出したということである。須弥壇は「唐様須弥壇、高欄付」。年代は1333年から1392年の間とされる。

純和様の塔、唐様の壇

大法寺の名を知られたものにしているのは、観音堂より一段高い斜面に立つ三重塔である。正慶二年(1333年)の建立、俗に「見返りの塔」と呼ばれる。明治32年(1899年)に古社寺保存法下で保護を受け、昭和28年(1953年)3月31日に国宝へ指定された。厨子及び須弥壇が重要文化財となった翌年にあたる。

文化庁の詳細解説は、この塔の手法を「純和様」と記す。奈良・平安以来の系譜を引く様式である。ところが同じ解説は続けて、塔内中央の仏壇が唐様を混用し、格狹間と擬宝珠に特色があると述べる。唐様は鎌倉時代に禅宗とともに流入した中国系の様式で、部材を細く取り、組物を密にし、装飾を締める点で和様と対をなす。

観音堂の須弥壇が「唐様須弥壇」と明記されているのは、この文脈に置くと意味を持つ。堂宇そのものは和様の系譜にありながら、仏を囲う造作の部分でのみ舶来の語彙が用いられる。塔の仏壇と観音堂の須弥壇という二つの独立した造作に、同じ選択が現れている。十四世紀のこの谷で、和様と唐様は対立する流派としてではなく、用途に応じて使い分けられる技法として扱われていた。

寺の来歴も古い。大法寺は天台宗、山号を一乗山とし、寺の公式の説明では大宝年間(701年から704年)に東山道浦野駅の駅寺として創建されたとする。都から北へ延びる古代の官道に付属した寺だったことになる。

屋根に食いつく現存最古の鯱

厨子の屋根の棟端に目を移したい。二匹の鯱が瓦をつかんでいる。

鯱は獣の頭に魚の体を持つ想像上の生き物で、後世には名古屋城の金鯱が広く知られる。大法寺はこの一対を鎌倉時代末期から室町時代初期の製作とし、現存する鯱として国内最古と説明している。昭和27年の指定では、厨子及び須弥壇一具の一部として保護対象に含まれた。

左右は同形ではない。向かって右の一匹は牙が大きく雄とされ、左が雌とされる。どちらも屋根に乗っているのではなく、顎を屋根の縁にかけて食いついている。後代の城郭装飾が左右対称と引き換えに手放した動きが、ここにはまだ残っている。鯱は腹に大量の水を蓄えるとされ、火災に際してその水で鎮火を図ると信じられた。防火と厄除の像として屋根に据えられる理由である。

拝観には二段階がある。通常の拝観料は大人300円、障がい者手帳所有者200円、小中学生100円。開門は夏期(4月から10月)が午前9時から午後5時まで、冬期(11月から3月)が午前9時から午後4時まで。寺の案内によれば、晴れた日の日中であれば観音堂の外からでも厨子を見ることができる。屋根の鯱も、この条件なら通常拝観の範囲で確かめられる。

堂内に入る場合は特別拝観となり700円。日本最古の鯱に加え、厨子の背後に立つ木造十一面観音立像と木造普賢菩薩立像を間近に拝観できる。この二軀は厨子の裏にあたるため、特別拝観以外では見ることができない。堂内での撮影については制限があるので、寺務所の案内に従いたい。

上田駅から千曲バス青木線で約25分、「当郷」バス停下車、徒歩約15分。住所は青木村当郷2052。参道脇の青木村郷土美術館には、剥落の進んだ三重塔内部壁画の復元模写が展示されており、喫茶室も併設されている。

Q&A

Q大法寺観音堂厨子及び須弥壇とはどのようなものですか。
A青木村の大法寺観音堂に安置される、仏像を納める厨子と、それを載せる須弥壇の一具です。厨子は柱間ひとつ分の一間厨子で入母屋造、屋根は板を本瓦の形に削り出して葺いています。須弥壇は高欄を付した唐様須弥壇。文化庁は室町時代前期、1333年から1392年の間の製作としています。
Q大法寺観音堂厨子及び須弥壇は特別拝観をしないと見られませんか。
A部分的には通常拝観でも見られます。寺の案内では、晴れた日の日中であれば観音堂の外からでも厨子を確認できるとされ、大人300円の通常拝観料で厨子と屋根の鯱の姿を捉えられます。堂内へ入るには700円の特別拝観が必要で、厨子の背後に立つ十一面観音立像と普賢菩薩立像もこの拝観に含まれます。
Q大法寺の厨子に載る鯱はなぜ注目されるのですか。
A大法寺は、この一対を鎌倉時代末期から室町時代初期の製作とし、現存する鯱として国内最古と説明しています。向かって右は牙が大きく雄、左が雌とされ、いずれも屋根に乗るのではなく縁に食いついている点が特徴です。昭和27年の指定では厨子及び須弥壇一具の一部として保護されました。
Q大法寺の拝観時間と拝観料を教えてください。
A夏期(4月から10月)は午前9時から午後5時まで、冬期(11月から3月)は午前9時から午後4時までです。拝観料は大人300円、障がい者手帳所有者200円、小中学生100円、特別拝観700円。御朱印は300円、ご祈祷は要予約となっています。
Q大法寺へはどのように行きますか。国宝三重塔も同時に見られますか。
A上田駅から千曲バス青木線で約25分、「当郷」バス停で下車し徒歩約15分です。国宝の三重塔は観音堂より一段高い位置に立ち、同じ境内で拝観できます。別所温泉や鹿教湯温泉にも近く、国宝の安楽寺八角三重塔と併せて巡ることができます。

基本情報

名称大法寺観音堂厨子及び須弥壇(だいほうじかんのんどうずしおよびしゅみだん)
所在地長野県小県郡青木村大字当郷(大法寺・当郷2052)
指定区分重要文化財(指定番号01172)
指定年昭和27年(1952年)7月19日
員数1具
時代室町時代前期(1333年〜1392年)
構造及び形式等厨子:一間厨子、入母屋造、本瓦形板葺/須弥壇:唐様須弥壇、高欄付
所有者大法寺(天台宗)
公開状況晴天日中は観音堂外部からも厨子を視認可(通常拝観 大人300円)。堂内は特別拝観700円。開門 夏期9時〜17時/冬期9時〜16時

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 大法寺観音堂厨子及び須弥壇
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/980
文化遺産オンライン — 大法寺観音堂厨子及び須弥壇
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/193640
文化遺産オンライン — 大法寺三重塔(国宝)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/199909
大法寺 公式サイト — 日本最古の鯱
https://www.daihoujitemple.com/日本最古の鯱/
大法寺 公式サイト — 参拝案内・問合せ
https://www.daihoujitemple.com/参拝案内-問合せ/

最終更新日: 2026.08.20