坂田家住宅堆肥舎

登録有形文化財のすべてが、寺の堂や立派な座敷であるわけではない。坂田家の敷地の北西隅には、働くことだけを目的とした建物が建つ。堆肥舎(たいひしゃ)は、堆肥や藁を蓄え、家畜を飼うための小屋である。堆肥のための小屋が国の登録に載っていること自体、少し立ち止まって考えたい。坂田家の屋敷が、立派な主屋だけでなく、裕福な農家の働く姿の全体として評価されたことを、それが示しているからだ。

小屋は木造二階建で、蔵より一回り大きい。桁行はおよそ七・三メートル、梁間六・四メートル。東西棟の切妻屋根を桟瓦で葺き、南面を長く葺き降ろす。この屋根の形は、水や風雨を働く面から遠ざける実用の工夫である。

飾らない、働くための造り

家の蔵が漆喰で塗り込められ、黒く縁取られていたのに対し、堆肥舎はその骨組みを見せる。外壁は荒壁の真壁造で、柱を隠さず現し、土の壁は細かく仕上げず荒いままとする。妻面には小屋組そのものも見せている。ここには取り繕ったところが一つもない。建物はただ、自らがどう造られているかを述べる。その飾りのなさが、そのまま性格になっている。

あらゆる選択を用途が導いている。堆肥や藁には乾いた保管が要り、家畜には雨風をしのぐ場が要る。ゆったりとした奥行き、南へ葺き降ろす屋根、息をする荒い壁は、いずれもその求めに直接応えている。造りの細やかな新倉、二棟の土蔵と並べて見ると、堆肥舎は屋敷の幅を締めくくる。家財を守る建物から、土地の日々の労働を担う建物までを、そこに揃えているのである。

慎ましい建物が登録された理由

堆肥舎は平成二三年(二〇一一年)一月、坂田家の五棟の一つとして国の登録有形文化財に登録された。登録番号は一五―〇三二九、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。登録は、これを豪農の屋敷構えを構成する一要素と記す。その捉え方が要である。小屋は単独よりも、完全な形で残る屋敷の一部として意味をもつ。

訪ねる者にとって堆肥舎は、農村の暮らしのうち真っ先に失われがちな側面を眺める機会になる。立派な家は残されても、その周りの働く小屋はめったに残らない。北西隅に立ち、現された骨組みと荒い壁を読むと、屋敷のほかのすべてを支えた労働が見えてくる。公開は外観のみであるから、主屋に注ぐのと同じまなざしをこの小屋にも向けてほしい。そうすれば、屋敷が一つのまとまりとして立ちあがってくる。

Q&A

Q堆肥舎は何に使われましたか。
A堆肥や藁を蓄え、家畜を飼うために使われました。家の日々の農業を支える働く建物です。
Qなぜ堆肥舎が文化財になるのですか。
A完全な形で残る豪農の屋敷の一部だからです。登録はこれを屋敷を構成する一要素と記します。こうした働く建物は残りにくく、揃って残っていることに価値があります。
Q「荒壁の真壁造」とはどういう意味ですか。
A柱を隠さず現し(真壁)、土壁を細かく仕上げず荒いままとする(荒壁)造りです。妻面では小屋組まで見せています。
Q敷地の蔵とはどう違いますか。
A蔵は防護と見映えのために仕上げられていますが、堆肥舎は荒い壁と現した骨組みの、飾らない実用の建物です。屋敷の日常の働く側面にあたります。
Q中に入れますか。
A入れません。坂田家住宅のほかの建物と同じく、公開は外観のみで、常時見学できます。

基本情報

名称坂田家住宅堆肥舎(さかたけじゅうたくたいひしゃ)
所在地新潟県五泉市土堀字上ノ代295
指定区分登録有形文化財(平成23年〈2011年〉1月26日登録/登録番号15-0329)
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
年代昭和前期(1926〜1945年)
構造木造2階建、桟瓦葺、桁行7.3m・梁間6.4m、建築面積47㎡
員数1棟
公開状況外観は常時見学可/内部は非公開

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 坂田家住宅堆肥舎
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008435
文化遺産オンライン — 坂田家住宅堆肥舎
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/171111
五泉市公式ホームページ — 坂田家住宅
https://www.city.gosen.lg.jp/organization/21/7/1/1/1869.html

最終更新日: 2026.07.07